今日は、想定外の大きな下落が起こった時の損失を一定範囲に抑えるのに役立つ、「逆指値(ぎゃくさしね)売り注文」の使い方を、解説します。

日本株は「買い場」と判断

 私は、日経平均株価は5年以内に5万円まで上昇すると予想しています。従って、日経平均が大きく下がった今は、長期投資で良い買い場と考えています。

 ただし、短期的にはまだ下値リスクもあります。これから米国景気が弱含んでくることを示す指標が増えると思っており、それに伴い、さらなる円高が進むリスクもあります。日経平均はこれからも、急落・急騰を繰り返すと思います。

 従って、リスク管理は大切です。時間分散しながら、少しずつ割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。

 ところで、日本株への投資方法として「日経平均インデックスファンド」を買うのは良い手段と思います。ただし、それだけでなく、個別銘柄への投資にも挑戦してみたら面白いと思います。大型の高配当利回り株や、小型成長株に買ってみたい銘柄がたくさんあります。

 ただし、小型株に投資する場合、思い込みは禁物です。惚れ込んで買った小型成長株でも成長ストーリーが崩壊して暴落することはあります。小型株は、「失敗したと思ったら損切り」することも必要です。

 急騰することも急落することもあるハイリスク・ハイリターンの小型株に投資する場合は、想定外の急落に備えて、「逆指値・成行売り」注文を入れておくことも考えるべきです。

まず、指値・成行注文をきちんと使いこなす

 株式を売買するときの注文の出し方で、まず覚えるべきは「指値(さしね)注文」、次は「成行(なりゆき)注文」です。この2つだけきちんと使いこなせれば、問題ありません。私は25年日本株ファンドマネジャー経験がありますが、自分で出した売買注文の99%が、指値か成行でした。

 もし、「指値」「成行」注文の使い方がよく分からない方がいらっしゃいましたら、このレポートの末尾に添付しているレポートで、しっかり学んでください。

 さて、次に、運用の達人になるために、覚えるべきが、「逆指値(ぎゃくさしね)」注文です。想定外の急落にそなえるには、「逆指値の成行売り注文」をしっかり使いこなすことが、リスク管理上、大切です。

「逆指値」売り注文とは

 一言でいうと、「想定外の株価下落に備える損切り予約」です。

「ここまで株価が下がってしまったら、さらなる下落によって損失がどんどん拡大する可能性がある」と考えられる株価水準を決め、「そこまで下がったら、自動的に売り注文が出る」ように予約しておくのが、「逆指値・売り」注文です。

 逆指値注文には、逆指値の成行売り注文と、逆指値の指値売り注文があります。私は、損切り予約として使うのは「逆指値・成行売り注文」に限るべきと思います。このレポートでは、逆指値・成行売り注文に絞って、説明します。

<逆指値・成行売り注文のイメージ図>

逆指値の成行売り注文を、しっかり使いこなす

 それでは、具体例で説明します。以下のように、指値売り注文と、逆指値の成行売り注文はセットで入れることができます。

<株価1,000円でA社株を100株買った後、1,100円に100株の指値売り注文を入れるとともに、900円に100株の逆指値成行売りをセットで入れる>

 A社株が、1,100円まで上昇し、あなたが入れた指値売り注文にヒットすれば、1,100円で利益確定売りが成立します。一方、A社株が下落し、900円をつけると、損失確定の成行売り注文が出されます。

 その時点で、900円に指値の買い注文が残っていれば、900円で損切り売りが成立します。900円の指値買い注文がない場合は、もっと下で、買い注文の入っているところで売ることになります。

 逆指値の成行売りをしておけば、きっちり損切りできます。株価をずっと見ていると、いろいろ迷って損切りできなくなる人も、損切りできるのがメリットです。

運用の達人は、損切りの達人

 運用の達人になるには、損切りの達人になる必要があります。長期的にすぐれた運用パフォーマンスを出すには、大きく上がる銘柄を見つけることも大切ですが、それ以上に、暴落する銘柄をつかまないことが大切です。

 ただし、長い年月、いろいろな銘柄を売買していれば、暴落する銘柄を買ってしまうこともあります。そんなとき、すばやく損切りして傷口を深めないことが、運用の達人になるための必須条件です。

 運用資産を何倍にも拡大させたファンドマネジャーには、「どうやって株価10倍になる銘柄を見つけたか」と成功例を語る人が多いが、その影では、「いいと思って買った銘柄がダメ銘柄だったが、なんとか暴落する前に売り抜けた」話が、たくさんあるはずです。

 私は、ファンドマネジャー時代には、理由は分からなくても、だらだらと下げ続ける小型株は、サッサと売ることを徹底していました。

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