J-REITの投資価値を見直す
J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)は、円建てで平均分配金利回りが4.9%(8月6日時点)と、利回り投資商品として魅力的です。長期(10年)国債の利回りが0.9%程度しかない時に、魅力的な利回りです。国内債券の代替として、投資したいと思う人もいるでしょう。
ただし、注意が必要です。REIT(リート:上場不動産投資信託)は確定利回り商品ではありません。業績が悪化すれば分配金が引き下げられ、利回りが下がるだけでなく価格も下がるリスクがあります。その意味では「株」に近い商品です。
リスク管理上、J-REITは、「日本株」と「国内債券」の中間的運用商品として扱う必要があります。
不動産への小口投資を可能にしたREIT
REITとは何かご存じない方のために、基礎的なことから説明します。REITは、不動産への小口投資を可能にした「上場投資信託」です。
個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、かなり大きな金額が必要です。資金規模の制約から、個人投資家が直接投資できる対象は限られます。
REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。
<図A>REITを通じて大型物件に投資
一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。
ところが、REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。REITの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、REITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。
REITは証券取引所に上場されていて、一般の株式と同じように売り買いすることができます。最低売買単位での投資額は、10万円以下から100万円超までいろいろあります。REITは日本にも海外にもあります。東京証券取引所に上場しているREITをJ-REITと呼んでいます。
REITには、さまざまな種類がある。代表銘柄を紹介
REITには、さまざまな種類があります。もともとは、オフィスビルや住宅・マンションに投資するファンドがほとんどでしたが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。純粋な不動産投資と言えないものも増えています。代表的な銘柄は、以下です。
J-REIT、投資の参考銘柄:2024年8月6日時点
コード | 銘柄名 | 主な 投資対象 |
分配金 利回り (年率: 会社予想) |
最低投資額 (円) |
---|---|---|---|---|
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | オフィスビル | 4.3% | 580,000 |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | オフィスビル | 4.7% | 515,000 |
3234 | 森ヒルズリート投資法人 | オフィスビル | 5.3% | 124,700 |
3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 住宅・マンション | 3.7% | 318,000 |
3281 | GLP投資法人 | 物流施設 | 4.8% | 130,200 |
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 物流施設 | 4.1% | 248,400 |
3292 | イオンリート投資法人 | 商業施設 | 5.2% | 127,400 |
出所:分配金利回りは8月6日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算 |
上記に挙げたように、REITには、いろいろな種類があります。オフィス、レジデンシャル(住居)、物流、リテール(商業施設)、インフラ、ホテルなどに投資するものがあります。
J-REITに投資したいと思うものの、どの銘柄を選んでよいか分からない方は、最初は、投資信託で「東証REIT指数インデックスファンド」に投資したらよいと思います。小口資金で、さまざまなREITに分散投資することができます。東証REIT市場全体の平均値に投資できます。
J-REITの市場概況:2020年以降は下降
J-REITの銘柄数は8月6日時点で58銘柄です。時価総額は合計約14.5兆円です。
J-REITの市場全体の動きを表す指数として、東証REIT指数と配当込み東証REIT指数があります。2010年1月末を100とした指数に作り替えて2010年以降の動きを比較した以下のグラフをご覧ください。
東証REIT指数と、配当込み東証REIT指数の月次推移:2010年1月~2024年8月(6日)
【1】配当込み東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、トータルリターン(受け取った配当金+価格変動)を示しているのが、配当込み東証REIT指数の動きです。2010年1月に100投資したら、2024年8月6日に337(3.37倍)になっています。
ただし、2020年1月以降を見ると、やや下がっています。コロナショックの急落をかなり取り返していますが、4年半近くリターンが出ていません。長期金利の上昇が嫌気されています。
【2】東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、価格変動だけを表しているのが東証REIT指数の動きです。受け取った分配金は、リターンに含まれていません。
2020年1月以降は下落トレンドが続いてきました。分配金を受け取っても、その分、値下がりによってトータルリターンが出ていない状況です。
平均分配金利回りが4.9%まで上昇
東証REITの平均分配金利回りは、8月6日時点で4.9%まで上昇しました。2021年8月には3.3%まで低下していましたが、その後J-REITの価格下落が続いたため、利回りは4.9%まで上昇しました。
配当込み東証REIT指数と平均分配金利回りの推移:2019年末~2024年8月6日
J-REIT全体の平均利回りは、4%が妥当と私は判断しています。利回りが4%を下回っている時、J-REITは「割高」、4%を上回っている時は「割安」と私は判断します。現在、4.9%まで利回りが上がっており、「割安」と判断しています。
念のため、4%が妥当と私が考えているのは、J-REIT全体の平均利回りです。個々の銘柄は、それぞれ投資対象の違いにより、妥当と考える利回りが異なります。
▼著者おすすめのバックナンバー
クイズでわかる!資産形成 2024年7月13日:平均利回り4.7%!J-REITの投資価値を見直す
クイズでわかる!資産形成 2024年3月2日:平均利回り4.6%!Jリートの仕組みを学び、投資戦略を考える
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。