【特別インタビュー】
ファンズ株式会社 代表取締役
藤田雄一郎さん

【前編】国債以上、配当株未満?「あ、この感じの利回り投資はアリかも」という話
【後編】「優待+利回り」だけど、株じゃない?預貯金とインデックス投資の「間」かも

※この記事は2022年10月18日に配信した記事を再公開しています。

 2021年末に初めて2,000兆円を突破した日本の個人資産。その50%以上の1,092兆円は現預金で保有されています。しかし今、この現預金の使い方が難しい局面に来ています。その原因が年率2%を超える物価上昇。

 普通預金で年率0.001%、1年物定期預金でも0.002%――。ほとんど利息がつかない現預金の価値は、物価上昇で逆に年率2%近く目減りしていることになるからです。

 では、みんなが株式や投資信託などのリスク商品にシフトできるか?といえば、高いハードルに感じる人も多いはず。預貯金からの堅実なステップアップということなら、個人向け国債が思い当たりますが、現在の利回りは固定5年で年率0.05%、10年変動で0.16%とよい水準とは言いにくい。

 改めて、株の世界を見てみると、日経平均株価に採用された225社の今期予想配当利回りは2.5%前後なので、預貯金から株の間がポコっと抜けているのがわかります。

 そう、「1~2%の利回りでこつこつ資産形成できて、インフレに対抗できる金融商品はないか?」というのが、一般消費者にとっての大きな問いです。

 それに対する、一つの答えになりうるかもしれないのが、「Funds」という新しい金融商品です。知名度があって信頼も置ける上場企業にお金を貸すことで、年率1~2%の利回りを得られる、という仕組み。

 実は、じわじわと人気化していて、2019年1月のサービス開始から、240本以上の募集を行い、累積投資総額は252億円超(2022年10月12日現在)。9月20日からは楽天証券のWebサイト経由でも利用できるようになっています。

 ファンズ株式会社代表取締役を務める藤田雄一郎さんに「Fundsの魅力、商品特性、資産運用における活用法」などについて話を聞きました。

社債に近い商品性なのに、手軽に少額資金で安定した利回り!

――楽天証券経由でも投資できるようになった「Funds」はどんな商品ですか?

 個人の方が上場企業などに間接的にお金を貸すことで、分配金収入をもらってお金を増やせる資産運用サービスです。特徴は値動きがなく、年率1~2%程度で募集時にあらかじめ利回りが定められているという点です。

 投資するファンドには、あらかじめ決められた利回りと最長で数年程度の運用期間が設定されており、ファンドによって、四半期ごとなどのタイミングで分配金収入を得ることができます。

 運用期間中に価格や利回りが変動することはないので、忙しい会社員の方や子育て中の方でもハラハラせず、1円から1円単位で投資できます。

――企業にお金を貸すというと、従来は「社債を購入する」という方法が一般的でした。社債との違いはどこにあるのでしょうか?

 社債は市場で取引され価格や実質利回りが変動しますが、「Funds」には値動きがないのが大きな特徴ですね。これまで日本では、個人投資家向けの社債市場はあまり普及してきませんでした。

 その理由は上場企業でも「投資適格」という格付けを取得しないと個人投資家に対する社債の販売が難しいことや、目論見書の作成、社債管理者の設置などに煩雑な事務手続きや管理コストがかかるため、かなり大きなお金を調達しないとコスト割れを起こしてしまうからです。しかも個人向けとはいえ、最低の購入金額は数万~100万円単位という案件が多数を占めます。

 ただ、実際にはわざわざ公募社債を発行するほどではないものの、数億円から十数億円ぐらい借りたい、といったニーズは上場企業の中にもたくさんあります。

 消費者サイドにも、「預貯金では利回りが低すぎる、かといって株式投資では損失が怖い」ということで、少額資金から投資できて、安定した利回りが得られる金融商品の潜在ニーズは高いと考えています。これを合致させたのが、「Funds」です。

――平均利回りが1~2%程度というと、個人向け国債より高く、高配当株の利回りよりは低い、といったところですね?

 これまで日本の金融商品といえば、すごく手堅いものの、利回りが0.0数パーセントしかない個人向け国債のようなものか、大きく資産を増やせる可能性はあるものの元本が減ってしまうリスクのある株式や投資信託しかなく、「その間」がありませんでした。

 実際、金融商品の期待利回りを調べてみると、期待利回り1~3%というところがスポッと抜け落ちています。海外を見渡すと社債が発達しているので、個人投資家も「フィクストインカム(Fixed Income:確定した利回り収入)」を得るという手段を選べ、ポートフォリオの中での資産分散がしやすいんです。

日本では希少な期待リターン1~2%。「Funds」は資産運用の橋渡し役になる!

――「投資家のニーズはあるけれど、供給が足りていない」部分を埋める金融商品が「Funds」というわけでしょうか?

 実際、時折発行される社債は売り出しとともに売り切れることが多く、この利回り水準の金融商品へのニーズの高さが伺えます。

 何より投資や資産運用がまだまだ大衆化していない日本においては、「損をしたくない」「リスクを取りたくない」というのが、生活者の感覚。「貯蓄から投資」と言われても、預貯金の次の手段が事実上、投資信託や株式投資というのは、ステップとしては急なんだと思います。その階段をなめらかにできるのが、「Funds」であればいいな、という思いが強くあります。

 現預金とリスク商品の架け橋になり、日本人が現預金一辺倒から、資産運用の世界に視野を広げ、納得感のある資産づくりをしていただくための、一助になればと思っています。

――「Funds」に投資するリスクについても教えてください。

 2019年1月にサービスを開始して、この3年半で運用が終了したファンドは113案件(2022年10月12日現在)。元本が棄損した例はゼロ。とはいえ、上場企業やその子会社に絞ってお金を貸すとはいうものの、借り手企業が倒産するリスクを完全に消し去ることはできません。

 また、数カ月から数年の運用期間中は、投資したお金を換金したくても、換金できないリスクもあります。企業サイドがそのお金を利用した事業などを早期に達成して、資金ニーズがなくなったことで早期償還されるファンドも3年半で四つありました。当然、早期償還でも元本は全額返済されますが、予定していた期間の分配金収入が得られない可能性はあるということです。

――藤田さんがファンズの代表として、この商品を作ろうとした理由は何でしょうか? 

 もともと、私はウェブマーケティングの領域で起業して事業を売却した連続起業家です。次は成長領域で仕事をしたいという思いもあって、クラウドファンディングの業界に入りました。イベントなどで、投資家さんとお話をさせてもらうと「融資型のクラウドファンディングって、ハイリスク・ハイリターンだよね」とよく言われました。

「利回りはそんなに高くなくていいけど、もっと安心感のある企業の案件はないのか」と指摘されたことが、「Funds」というサービスを始めるきっかけでした。「ハイリスク・ハイリターンだと資産運用のメインストリームにはならない。逆に利回りは相対的に低いものの、安心感のある企業への貸し出しならニーズがあるのではないか」と。

 日本にも、しっかりしたフィクスドインカムの金融商品を作り、貯蓄から資産形成の道筋に貢献するというのが私たち「Funds」のミッションだと思っています。

「Funds」に投資したお金は、日本の企業が新しいビジネスを始めたり、海外に進出したり、その会社の成長のために使われます。日本の現預金の中に眠っているお金を、これから成長していく日本企業に橋渡しすることで日本の未来を明るくしたいというのも、私たちの願いです。

【特別インタビュー】
ファンズ株式会社 代表取締役
藤田雄一郎さん

【前編】国債以上、配当株未満?「あ、この感じの利回り投資はアリかも」という話
【後編】「優待+利回り」だけど、株じゃない?預貯金とインデックス投資の「間」かも

藤田雄一郎さん
ファンズ株式会社
代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。2007年にマーケティング支援事業を行う企業を創業し、2012年上場企業に売却。2013年に大手ソーシャルレンディングサービスの立ち上げに経営メンバーとして参画。2016年11月に株式会社クラウドポート(現ファンズ株式会社)を創業。2019年1月から貸付投資サービス「Funds」を立ち上げる。「Funds」の累計募集金額は2022年10月現在、250億円まで急拡大中。およそ1.5兆円といわれる個人向け社債の市場規模以上のマーケット開拓を狙う。

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