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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
円安は終わり?円高反転4つの理由。どうなる日経平均?

日経平均急落、円高を嫌気

 先週(営業日7月16~19日)の日経平均株価は、1週間で1,126円下落し、4万0,063円となりました。7月11日には一時、4万2,426円まで上昇しましたが、そこから5営業日で2,363円の急落となりました。一時「4万円の壁」をきれいに抜けたように見えましたが、「長い上ひげ」と「長い陰線」による急落で打ち消された形です。

 今年の3月に2回、4万円超えを試しましたが、直後の急落で打ち消されました。7月に3度目のトライできれいに上抜けたように見えたのですが、またしても打ち返された形です。

日経平均株価の週足:2024年1月4日~7月19日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

 二つの株高要因(円安・米国株高)に変調を来したことが、日経平均急落の引き金となりました。

【1】円安→円高

 一時1ドル162円台まで円安が進み、外国人投資家による日本株買いを招きました。ところが、7月11日以降、円高が進み、外国人投資家の売りを誘発した可能性があります。

 円高反転の理由として以下四つがあります。

(1)景気鈍化を示す指標が増え9月利下げが確実視されるようになったこと。
(2)年内に日本銀行が利上する可能性があること。
(3)7月11日に政府・日銀による為替介入と見られる動きがあったこと。
(4)「ドル高は問題」と考えるトランプ氏が米大統領選で優位となったこと。

ドル/円為替レートの週次推移:2024年1月2日~7月19日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

【2】米国株高(生成AIラリー継続)→高値から少し調整

 米景気・米インフレ鈍化を示す景気指標が増えたことにより、ドル安(円高)が進みましたが、米国株高は、あまり揺らいでいません。米景気鈍化により、9月にも米利下げが見込まれるようになったことが、米国株をさらに押し上げる要因となっています。

 トランプ前大統領への銃撃で、トランプ氏再選の可能性が高まったとして、先週は一時、トランプ・ラリー(トランプ関連株、エネルギー・軍需株などの上昇)があり、米国株が活気づきました。ところが、先週末にかけて、さすがに米国株の過熱感が意識されて利益確定売りが増え、米国株は反落しました。

ナスダック総合指数の週足:2024年1月2日~7月19日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

 以下の通り、生成AI関連の主力株には、利益確定売りが増えています。生成AIラリーはいったん休止と思われます。

エヌビディア(NVDA)株日足:2024年5月1日~7月19日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

マイクロソフト(MSFT)株日足:2024年5月1日~7月19日

出所:楽天証券MSIIより楽天証券経済研究所が作成

円安は終わり?

 7月11日以降、急激に円高が進んだ理由として、四つあります。

【1】6月の米CPI(消費者物価指数)が想定以上に鈍化。9月利下げが確実視される
【2】年内に日銀が利上げする可能性があること。
【3】政府・日銀による為替介入(正式発表はないが、実施されたのはほぼ確実)
【4】「ドル高は問題」と考えるトランプ氏が大統領選で優位に

 短期的な材料として注目が高まっているのが【4】です。トランプ氏はかつて、円安を厳しく批判していました。現在、為替への言及は少ないですが、根っこの考え方は変わっていません。トランプ氏が円安批判を再開すれば、円高転換を招く可能性もあります。

 トランプ氏は2018年に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げを厳しく批判していました。大統領在任中は、恒常的に利下げを要求していました。現在、FRBの金融政策への言及は少ないものの、大統領に再選すれば、利下げ要求を再開する可能性があります。利下げを通じて、円高を誘発する可能性もあります。

 ドル/円を動かすファンダメンタルズとしてもっとも重要なのは【1】です。米利下げが実施されると、日米金利差の縮小を通じて、円高への転換につながります。

 最近、米景気鈍化を示す指標の発表が増えたことを受けて、米長期金利は低下していましたが、米金利低下に関係なく、円安が進んでいました。米景気鈍化がよりはっきりして、米利下げが実施されると、円高が進む可能性があります。

ドル/円為替レートと米2年・10年金利推移:2022年7月1日~2024年7月19日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 以下、米景気・インフレ鈍化を示した景気指標を掲げます。

米国インフレ率(CPI総合指数・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2024年6月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 総合インフレ率、つまりCPI総合指数の前年同月比上昇率は3%まで低下しました。さらに特筆すべきは、同指数が前月比マイナス0.1%と減少に転じたことです。インフレ収束が鮮明になってきたと解釈されます。

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比)

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

米雇用統計:完全失業率

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 非農業部門の雇用者増加数が徐々に減少、一時期に比べ雇用の勢いは低下していると解釈されます。6月の完全失業率は4.1%で、上昇しつつあります。

ISM製造業・非製造業景況指数:2020年1月~2024年6月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 ISM(米サプライマネジメント協会)景況指数は、製造業・非製造業とも、6月は景況の分かれ目である50を割り込みました。

 以上、まとめると、米景気の鈍化がはっきりしてきたことが、円高になった背景として大きいと言えます。米国は長引くインフレによって、生活必需品の価格が高騰しており、インフレにより消費が失速するリスクはあります。今後の米消費動向に注意が必要です。

日本株の投資戦略

 ここから日経平均がさらに売り込まれるか、あるいは反発に向かうか、鍵を握っているのはドル/円為替レートだと思います。

 円安となれば、外国人投資家が日本株を買い、日経平均が反発する可能性が高まります。さらに円高が進めば、外国人投資家の売りが増えて、日経平均がさらに下がる可能性が高まります。

 日本株の投資戦略について、結論はいつもお話ししていることと同じです。日本株は割安で、長期的に上昇余地が大きいとの見方は変わりません。とはいえ、最近、米国株も日本株も上昇ピッチがやや速すぎると感じています。

 また、年内に米利下げが見込まれる中、一時的に円高が進む可能性もあると考えています。さらなる円高があれば、夏場に日経平均がスピード調整する可能性があると考えています。

 最後に「株トレ」新刊出版のお知らせです。ダイヤモンド社より8月1日ごろ私の新刊が出版されます。

「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ ファンダメンタルズ編」

 一問一答形式で、株式投資のファンダメンタルズ分析を学ぶ内容です。

 2021年12月に出版した前作「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書」の続編です。前作で、テクニカル分析(チャートの読み方)を学び、今回出版する続編でファンダメンタルズ分析(決算書の読み方など)を学びます。

 株式投資で個別株投資にチャレンジしたい方、決算書くらい読めるようになりたい方に役立つ内容です。

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