「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第37回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

 今日は、J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)の特性を学び、その活用を考えるクイズを出します。

今日のクイズ:J-REIT価格が上昇する要因、下落する要因はどれ?

 J-REITは、個別企業の株式によく似たものです。東京証券取引所に上場し、証券コードが付いていて、株式と同じように取引所が開いている時間に売買できます。7月9日時点で平均分配金利回りが4.7%と高いことが魅力です。利回りを重視する投資家にとって、分散投資する価値が高いと思います。

 それでは、まずクイズを解いてください。

【クイズ】選択肢【A】~【D】のうち、J-REITの価格上昇につながる要因を二つ、価格下落につながる要因を二つ、それぞれ選んでください。

【A】日本の長期金利(新発10年もの国債利回り)上昇
【B】日本の長期金利低下
【C】オフィスビルや賃貸マンションなどの賃料上昇
【D】オフィスビルや賃貸マンションなどの賃料下落

不動産への小口投資を可能にしたREIT

 REIT(リート:上場不動産投資信託)とは何かご存じない方もいらっしゃると思いますので、基礎的なことから説明します。リートは、不動産への小口投資を可能にした「上場投資信託」です。

 個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、かなり大きな金額が必要です。資金規模の制約から、個人投資家が直接投資できる対象は限られます。

 リートを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。

<図A>REITを通じて大型物件に投資

注・筆者作成

 一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力がないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。

 ところが、リートが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。リートの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、リートを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。

 リートは東証に上場しており、一般の株式と同じように売り買いすることができます。最低売買単位での投資額は、10万円以下から100万円超までいろいろあります。リートは日本にも海外にもあります。東証に上場しているリートをJ-REITと呼んでいます。

J-REITの市場概況

 J-REITの銘柄数は7月9日時点で58銘柄です。時価総額は合計約14.7兆円です。

 J-REITの市場全体の動きを表す指数として、東証REIT指数と配当込み東証REIT指数があります。2010年1月末を100とした指数に作り替えて2010年以降の動きを比較した以下のグラフをご覧ください。

<東証REIT指数と、配当込み東証REIT指数の月次推移:2010年1月~2024年7月(9日)>

出所:2010年1月末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【1】配当込み東証REIT指数

 東証REIT市場全体に分散投資した場合の、トータルリターン(受け取った配当金+価格変動)を示しているのが、配当込み東証REIT指数の動きです。2010年1月に100投資したら、2024年4月に353(約3.5倍)になっています。

 ただし、2020年1月以降を見ると、ほぼ横ばいです。コロナショックの急落をほぼ取り返していますが、リターンが出ていません。

【2】東証REIT指数

 東証REIT市場全体に分散投資した場合の、価格変動だけを表しているのが東証REIT指数の動きです。受け取った分配金は、リターンに含まれていません。

 2020年1月以降は下落トレンドが続いてきました。分配金を受け取っても、その分、値下がりによってトータルリターンがほとんど出ていない状況です。

平均分配金利回りが4.7%に上昇、4%を上回る時は「割安」

 東証REITの平均分配金利回りは、7月9日時点で4.7%まで上昇しました。2021年8月には3.3%まで低下していましたが、その後J-REITの価格下落が続いたため、利回りは4.7%まで上昇しました。

<配当込み東証REIT指数と平均分配金利回りの推移:2019年末~2024年7月9日>

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 J-REIT全体の平均利回りは、4%が妥当と私は判断しています。利回りが4%を下回っている時、J-REITは「割高」、4%を上回っている時は「割安」と判断します。現在、利回りが4.7%まで上がっており、「割安」と判断しています。

クイズの正解:長期金利低下や賃料上昇はJ-REIT価格上昇の要因に

 J-REITの価格上昇につながる変化は、

【B】日本の長期金利(新発10年もの国債利回り)低下
【C】オフィスビルや賃貸マンションなどの賃料上昇

 J-REITの価格下落につながる変化は、

【A】日本の長期金利(新発10年もの国債利回り)上昇
【D】オフィスビルや賃貸マンションなどの賃料下落

 賃料上昇がJ-REITの上昇要因となり、賃料下落がJ-REITの下落要因となることは、自明と思います。長期金利の上昇下降について、以下、説明します。

 長期金利が上昇すると、J-REITの価格には、下落圧力がかかります。二つの理由があります。

【1】J-REITには、資本金とは別に銀行からの借入金があります。長期金利が上昇すると、J-REITの支払金利が増加するので、J-REITの価格に下落圧力がかかります。

【2】J-REITの分配金利回りが長期金利(10年国債利回り)よりどれだけ高いかによって、投資家から見たJ-REITの投資魅力が決まります。長期金利が上昇すると、J-REITとの利回り差が縮小するので、J-REITの魅力が低下し、価格に下落圧力がかかります。

 長期金利が低下すると、その逆です。

  1. J-REITの支払金利が減少するので、価格に上昇圧力がかかります。
  2. 長期金利とJ-REITの分配金利回りを比較したスプレッドが拡大するので、J-REITの投資魅力が高まります。

 J-REITには、さまざまな種類があります。もともとは、オフィスビルや住宅・マンションに投資するファンドがほとんどでしたが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。代表的な銘柄は、以下です。

<J-REIT代表銘柄(投資の参考銘柄):分配金利回りは7月9日時点予想>

コード 銘柄名 主な投資対象 分配金利回り
(年率:会社予想)
最低投資額
(円)
8951 日本ビルファンド投資法人 オフィスビル 4.4% 568,000
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 オフィスビル 4.7% 513,000
3234 森ヒルズリート投資法人 オフィスビル 5.0% 131,900
3269 アドバンス・レジデンス投資法人 住宅・マンション 3.7% 322,000
3281 GLP投資法人 物流施設 4.4% 130,600
3283 日本プロロジスリート投資法人 物流施設 4.1% 249,900
3292 イオンリート投資法人 商業施設 5.0% 132,300
出所:分配金利回りは7月9日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算

 上記に挙げたように、J-REITにはいろいろな種類があります。

【1】オフィス・リート(主にオフィスビルに投資)
【2】レジデンシャル・リート(主に住宅・マンションに投資)
【3】物流リート(主に物流施設に投資)
【4】リテール・リート(主に商業施設に投資)
【5】ホテル・リート(主にホテル・リゾート施設に投資)

 ただし、一つの種類だけに投資しているリートは必ずしも多くありません。実際にはひとつではなく、複数の種類のアセットに投資している「総合型」リートが多くなっています。上の表の「主な投資対象」では、コア・アセットとして投資しているものだけを示しています。

 J-REITに投資したいと思うものの、どの銘柄を選んでよいか分からない方は、最初は、投資信託で「東証REIT指数インデックスファンド」に投資するのもよいと思います。小口資金で、さまざまなJ-REITに分散投資できます。東証リート市場全体の平均値に投資することになります。