浪費家だった学生時代からは一変、超ブラック企業に就職して初日に「懲役40年」を悟った絶対仕事辞めるマンさん。ついに目標の1億円を達成しましたが、それまでには数々の試練や苦労がありました。後編の今回は、絶対仕事辞めるマンさんが行ってきた投資や、FIREを達成して感じることなどについて伺いました。
投資をしていなければもっと1億円達成は遅かった?
トウシル:書籍には、最初の目標は1億円ではなく「5,000万円貯めて辞表を出す」こととありましたが、当初の目標を5,000万円に設定した理由をお聞かせください。
絶対仕事辞めるマンさん:当時の給料が20万円弱で、利回り5%と考えた際、「20万円×12カ月÷5%≒5,000万円」なので、何歳であっても毎月20万円を確保できれば生活できると考えたからです。
なので1万円札は「毎年500円を生産する機械」だと捉えていました。「この1万円を使うと未来永劫(えいごう)500円を生産できなくなる」と考えたら、節約しようという気持ちを保てます。
5,000万円を目指す過程で利回り5%を維持するのが難しいと分かって利回りを落としたり、金利生活型から資産取り崩し型の計算方法に移行したりしたことで、最終的な目標は1億円になりました。
絶対仕事辞めるマンさんの「逃げ切りグラフ」
5,000万円目前でまさかの大損失!?
トウシル:書籍には、最初の目標である5,000万円目前の時には800万円ほど、FXで損失を出したと書いてあり、こっちのほうが青ざめました(笑)。爪に火をともすような節約で貯めた虎の子ですよね? 相当なショックを受けたと思うのですが…。
絶対仕事辞めるマンさん:もう地獄でした…(泣)。毎月の給料以上のお金がガンガン目減りしていくので、まるで給料を市場に捨てていたようなものです。今までの努力や苦労はなんのためだったのかと。
しかし、「市場に食い殺されるくらいなら使ってしまえ!」とやけになってはいけないと気を引き締めました。投資を続けている以上、山があれば谷も必ずあります。無謀な投資でない限り、ぐっとこらえて続けるということが大事だと思います。
トウシル:当時はFX以外にどのような投資をされていたのでしょうか。
絶対仕事辞めるマンさん:個別株を保有していました。中国株が若干と日本株が500万円ほど。日本株は武田薬品工業(4502)やコマツ(6301)のような、景気に左右されすぎない、大型のディフェンシブ株を選んでいました。
ポートフォリオで言うと、10%ちょいが日本株の個別株で、資産のうち1,000万円ぐらいがFXの証拠金だったと記憶しています。また、FXとは別に8万米ドルくらいを外貨預金で持っていました(後ほど処分しました)。あとは日本円の預金です。
トウシル:銘柄を選ぶときの基準はあったのでしょうか。
絶対仕事辞めるマンさん:はい。事業内容はしっかり調べて選んでいます。また『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』という著書を読み、それにPER(株価収益率)よりもROE(自己資本利益率)が大事だ、と書いてあったので、それを参考にして銘柄を見ていましたね。
当時の日本株だとROE15%に継続的に達している銘柄はほとんどなかったと思いますが、その中でも、ROEが安定して高い銘柄を買っていました。
トウシル:そしてついに資産1億円を達成しましたよね。もし投資をしていなかったらもっと1億円への道のりは遠かったと思いますか。
絶対仕事辞めるマンさん:そうですね、コツコツ貯金しても、20年間で1億円はほぼ不可能だったと思います。株など給料以外の収益は何千万円かあるので、投資をしていなければ、資産1億円到達は、もっと遅れていたと思います。
トウシル:節約+投資に加えて、ポイ活も並行してがんばっていらっしゃる様子が書籍に書いてありました。本当にプラスになるコトは全て採用されていたんですね。
絶対仕事辞めるマンさん:X(旧Twitter)を見ていたら、ポイ活の神様みたいな人のツイートを見つけて開眼したんです。こうすればポイントが貯まるよ、という具体的な指南が書いてあり、まずはその人の言うことをまるまるマネして実践してみたら、「本当にポイントが貯まるじゃん!」と感動しました。
私は節約生活も兼ねて、ウエル活(ウエルシアの毎月20日のお客さま感謝デーに、通常よりも高い倍率で買い物にポイントを使用すること)を徹底しています。ポイ活などで貯めたポイントの効率的な出口として、ウエルシアで生活必需品をまとめ買いしているんです。これは1億円を達成した今も続けています。
トウシル:しかし…最近、絶対仕事辞めるマンさんのXを見たところ、メキシコペソを買って損失を出されていたのですが大丈夫でしょうか…
絶対仕事辞めるマンさん:はい(泣)。ですがこれにもきちんと理由があるんです。最近のインフレと円安は洒落にならないと感じて、外貨建て資産の割合を増やそうと思ったのが理由なんです。もともと米ドルはFXでポジションを持っていたので、米ドルをさらに買って、ついでにメキシコペソも少し買ったらこんなことになってしまいました。
トウシル:1億円が減っちゃったらどうするんですか!?
絶対仕事辞めるマンさん:そこまでは突っ込まないので大丈夫ですよ(笑)。今は損失を出していますが、損することは逆にうれしい側面もあります。外貨を買って損失が出るのは、基本的に円高に進むことを意味しているので、自分の資産がプラスになっているとも考えられます。私は円の資産が圧倒的に多いので「このくらいの損失ならむしろいいや」くらいの気持ちです。
念願の1億円を達成して見える景色とは…
トウシル:これまでの道のりを振り返って、1,000万円、5,000万円、1億円を達成したときの気持ちをお聞かせください。
絶対仕事辞めるマンさん:まず1,000万円ですが、貯金0円から資産1,000万円に到達するまでの最初のステップが一番しんどかったですし、長く感じましたね。やはり元手がないところからエンジンをかけてお金を増やすのは大変です。
実際に1,000万円を達成したときは、とりあえず「これで死なずにすむ」みたいな感覚でした。1,000万円あれば2〜3年は働かなくて済みますよね。
折り返し地点の5,000万円到達時は、これはもう、めちゃくちゃうれしかったですね! その時はすでに、達成目標を1億円に上方修正していたのですが、「これが今まで目指していたものか…」と感慨深いものがありました。
5,000万円って1万円の札束にすると5キロなんですよ。なので、5キロの水を背負い、5,000万円の重みを感じてみたりもしました。重かったです(笑)。
トウシル:そして、念願の1億円達成ですね!
絶対仕事辞めるマンさん:1億円のときも本当にうれしかったですね! 5,000万円と比べるとどっちだろう…。どっちも同じくらいうれしかったです。その時点で悟りを開いたような感覚で「ブラックなやつらも、みんな許してやろう」という気持ちになりました。
一方で、ここに至るまでものすごく頑張った自分へ申し訳なさもありましたね。ずっと1億円という目標に突き進んできた自分に対するありがたさなのか、かわいそうという感覚なのか、変な気持ちでした。あとは、これからの、人生の後半を楽しみたいと、前向きな気持ちになれたのも大きな変化でしたね。
トウシル:1億円を達成した今のポートフォリオを教えてください。
絶対仕事辞めるマンさん:日本株の個別株が2,000万円程度(両建てで値動きをヘッジしている分含む)、外貨相当(FX口座でレバレッジ約1倍で預金)、米国株とオールカントリーに投資するインデックスファンドが800万円程度、あとはビットコインと、J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)です。
日本株は、武田薬品工業(4502)、コマツ(6301)、JT(日本たばこ産業)(2914)、すかいらーくホールディングス(3197)、吉野家ホールディングス(9861)、ビックカメラ(3048)などなどです。最近はNTT(9432)を少し買いました。
米国株は、バークシャー・ハサウェイ クラスB(BRK.B)、ボーイング(BA)、シェル(SHEL)、ウォルト・ディズニー(DIS)、デルタ航空(DAL)、最近ちょっとアルファベットクラスA(GOOGL)を買いました。
実は「絶対仕事辞めないマン」!?
トウシル:ここで一つ大きな疑問があるのですが、資産1億円を達成されているのに、今現在も…?
絶対仕事辞めるマンさん:はい、変わらずブラック企業で会社員やってます(笑)。
トウシル:なんで辞めないんですか? もう辞められるでしょ?
絶対仕事辞めるマンさん:ええとですね(笑)。会社都合で退職になれば退職金が1,000万円くらい増えるので、今は早期退職を会社が募集するのを待っている状態なんです。
トウシル:1,000万円かぁ…、確かに魅力ですよね。
絶対仕事辞めるマンさん:はい。だからほんとに、早く僕をリストラしてほしいです(笑)。会議で、「40歳以上の社員をリストラしましょう!」って提言したいくらいです。
トウシル:長く勤めているうちに、実は今の会社が居心地よくなってきたということは?
絶対仕事辞めるマンさん:確かに前よりブラック度数は減りました。けど、相変わらずヤバいやつはいます。無給休日出勤もいまだにありますし。
トウシル:絶対仕事辞めるマンさん、実は辞めないんじゃないですか?
絶対仕事辞めるマンさん:いえ、辞めます!(断言)
トウシル:1億円あるという、心の余裕が生まれたのも、今すぐ辞めない理由なんでしょうか?
絶対仕事辞めるマンさん:それはあると思います。自分はもう安全地帯にいて、あとはカードを切るかどうかだけなので、それだけで心の余裕が違いますね。
健全に働いて生活できるのが一番
トウシル:ブラック企業に勤めていて辞めたいと感じている人は多いと思います。同じ気持ちだった絶対仕事辞めるマンさんから、そのような方たちへアドバイスをぜひお願いします。
絶対仕事辞めるマンさん:ここまで来るには数え切れないほどの苦労がありました。1億円を貯めましたが、3億円分くらい苦労したと思うので、差し引きマイナス2億円の半生、という感覚です。そもそもブラック企業なるものがあってはいけません。健全に働いて、健全に生きるのが一番です。
FIREは決して上級国民になることではなく、ヒエラルキー的な労働社会からの「離脱」です。実際にFIREしてSNSで勤労者の気をくじくような発言をする人もいますが、それは間違っています。決して感化されてはいけません。
トウシル:FIREは手段であって、目的ではないということですね。
絶対仕事辞めるマンさん:そうです。人生のどん底から這い上がるためには、ある程度お金が必要な面もあるのは事実です。なので、生活や人生の安定を図るための蓄財は、なるべく早い段階から始めることをおすすめします。そして、健全な生活の中でお金に頼らない幸せを見つけてください。
トウシル:最後に、仕事を辞めたらどのような生活をしたいのかお聞かせください。
絶対仕事辞めるマンさん:国内を車中泊で放浪の旅に出たり、各地をふらふらしながら、ホテルで暮らしたりとかしたいですね!
トウシル:ちなみに、資産2億円は目指さないのでしょうか。
絶対仕事辞めるマンさん:ないですね(笑)。1億円までこんなに大変だったのに、また繰り返すことを考えるとおぞましいです…。今の1億円を大切に守りながら、いつか晴れて会社をリストラされる日を待つつもりです。
トウシル:本日はありがとうございました!
>>前編「モヤシ、豆腐を駆使した極端な「節約飯」がXで話題に。「蓄積型億り人」絶対仕事辞めるマンさんインタビュー[前編]」
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