▼絶対仕事辞めるマン(ぜったいしごとやめるまん)さんプロフィール

46歳。入社初日に、新卒で入った会社の「ブラック企業ぶり」に恐れをなし、「一刻も早く会社を辞める」と決断。支出を極限まで削る、極端な節約生活と資産運用を開始し、20年間で1億円の資産をつくることに成功。X(旧Twitter)で配信していた日々の食事のあまりの質素さが「懲役飯」と話題になり、フォロワーはなんと6万人超え。「いつでも会社を辞められる」状態なのに、今日もブラック企業に出勤する兼業投資家。
X:絶対仕事辞めるマン@MaqwgNaJKDOnxGb
ブログ:血を吐くような蓄財でFIREを目指す、氷河期世代の一生懸命ブログ 氷河期世代がブラック企業でアーリーリタイアに挑む 
書籍:『1億円の貯め方 貯金0円から億り人になった「超」節約生活』 

 血を吐くような蓄財で資産1億円を達成し、いつでもFIREできる状態に到達した「絶対仕事辞めるマン」さん。その原動力は超ブラック企業に就職して出社初日に「懲役40年」を悟ったことから生まれました。今回は前編として、絶対仕事辞めるマンさんの浪費家だった学生時代や超ブラック企業の実態、節約を続けるコツについて伺いました。

学生時代は今と真逆の浪費家だった!?

トウシル:まずは資産1億円の達成おめでとうございます! 今はあらゆる節約や投資を実践されていますが、学生時代からお金に関して詳しかったり、節約生活に慣れていたりしたんでしょうか?

絶対仕事辞めるマンさん:いえ、就職するまでは、お金について教わったことや考えたことはまったくありませんでした。むしろ大学生の頃は、バイトで稼いだお金をバイト帰りの飲み代に使ってしまい、いつもお金がありませんでした。今では考えられませんが、おしゃれな服も買っていたので日本経済をひたすら回していましたね。

 ただ、「お金のために働きたくない!」という思いは幼少の頃からありました。幼稚園に行くと60歳まで働き続けるというレールに乗ってしまうと思い込んでいて、登園初日は絶望したのを覚えています。「幼稚園に行かなければずっと自由に暮らせる…」と考えて必死に抵抗しました(笑)。

トウシル:幼少の頃から、自由への渇望感というか、縛られることへの恐怖心があったのですね。実際に幼稚園に通ってみていかがでしたか。

絶対仕事辞めるマンさん:初日は強制的におんぶされて連れていかれましたが、通ってみると友達がすぐにできて楽しかったですね。そのまま社会にはすぐになじみ、楽しい学生時代を過ごしていたのですが、全ては会社員となった入社初日に一変しました…。

就職したのは想像を絶するブラック企業

トウシル:相当な衝撃を受けたのかと思いますが、入社初日の状況をお聞かせください。

絶対仕事辞めるマンさん:初日の時点で「懲役40年」を悟りました(笑)。職場では怒号が飛び交い、出社は定時より1時間早く出社して全員の机拭きとお茶入れ、なにより長時間のサービス残業が一番の苦痛でした。退社は毎日終電か終電以降です。

 就活のときに「夜は遅いよ」と聞いていて、むしろ「残業代もらえてラッキー!」と思っていたのですが、さすがブラック企業。残業代はほんの少しだけ、定額で出るだけで、ほぼサービス残業です。

トウシル:その状況下だと、まずは転職を考えるのではと思うのですが、転職活動はされなかったんですか?

絶対仕事辞めるマンさん:私が就職した時期は、まさに「就職氷河期」ど真ん中で、転職どころか新卒採用すら非常に厳しく、「働けるだけありがたいと思え」という状況だったんです。そこそこの大学は出ているんですが、それでも、同窓の友人の中には、非正規社員で就職したり、就職先が決まらないまま卒業したりする人もいたくらいです。

 実は転職エージェントに登録したこともあるのですが、紹介されるのは似たような会社ばかりで、もっとブラックな環境になる可能性もあって断念しました…。働き続けても地獄、逃げても最悪ということで気持ちはFIRE一直線でしたね。

トウシル:令和の今でも、ブラックな環境は変わらないのでしょうか。

絶対仕事辞めるマンさん:働き始めて20年以上たつので、少しは役職が上がってきて、早いと19時くらいには帰れるようになりました。上司が帰らないとみんなも帰れないので、私はなるべく早く帰るように意識しています。ただ、依然としてパワハラは多く、社内で怒号が響くこともまだまだある状態です。

節約の結果、自然体で貧困生活を送るように

トウシル:一刻も早く会社を辞める(FIREする)ために血を吐くような節約をされたとのことですが、20年以上も節約して、途中で嫌になりませんでしたか?

絶対仕事辞めるマンさん:いや、もう生存本能が働いたとしか思えないです。一般に言うFIREは、リタイア後海外で豪遊するなどキラキラしたイメージがあると思うんですが、私のFIREは、本当に「このままでは死んじゃう」という強迫観念からくるFIREです。

 お金を使えば使うほど、夢のFIREが遠のいてしまうので「1ミリでも前へ」という気持ちで節約に取り組んでいました。ライオンから逃げるシマウマのようなイメージです。「走って逃げると疲れませんか?」と聞かれても、そりゃあ逃げなかったら死ぬんですから、疲れとか関係なく全力で走りますよね(笑)。

 新社会人の頃は友人が給料を使って遊んでいたのを見て、みじめな気持ちもありました。ですが、半年もかからないくらいでその気持ちは消えました。最低ランクの生活が普通になってしまい、「節約が辛そう…」と言われても、正直、ピンとこないんです(笑)。

 例えば、いい服を着て暮らしても、汚してはいけないと気を遣いますよね。ですが安い服を着ていると地べたに座っても気にならないので、その方が気楽だし自由でいいなと思ってしまうんです。

日々の食事をX(旧Twitter)にアップし続け、そのあまりの質素さに「懲役飯?!」とバズったことも。「ビールが付くようになったくらいで、今もたいして変わってませんよ。こうして並べてみると、1億円を貯めた後も、本当に生活は変わってないんだなと実感します」

トウシル:新入社員の頃は昼食のみ、今でもご飯と納豆のような質素な食生活ですが、健康は維持できているのでしょうか。

絶対仕事辞めるマンさん:今まで大きな病気やけがになったことはありません。むしろ余計なものが体に入ってこなくてよかったのかもしれないですね(笑)。

トウシル:友人との外食なども我慢されたのでしょうか。

絶対仕事辞めるマンさん:友人とレストランで外食することはよくありますよ。会社でも「飲み会に来ない奴は死刑」みたいなブラックな雰囲気なので断らないようにしています。会社の中にはかわいがってくれる先輩やかわいがっている後輩もいるんです。こういった人間関係を円滑にするようなお金はなるべく使うようにしていました。

トウシル:しかし、すでに1億円を達成されたんですよね? 書籍に「月30万円使う豪遊生活をしてみた」と書いてあったんですが、具体的に何に散財されたんですか?

絶対仕事辞めるマンさん:貧困生活が普通になりすぎて、逆にお金を使うのが苦痛なだけに終わりました(笑)。10万円超えのオーブンレンジやホットクックなどの家電を買ったのが一番大きな買い物だったんですが、それも使い道が思いつかないから無理やり買った、というのが本音です。

「使うぞ」と決めて臨んだにもかかわらず、少しでも気を抜くと節約をしてしまっていて(笑)。無理にお金を使わなくても、安定して幸せでいられる状態が通常化してるんですよ。

 ちなみに1億円を貯めてからは、自宅の夕食でお刺身や貝柱を食べるようになりました。それが最高のぜいたくですね!

トウシル:他にも生活が変わったところを教えてください!

絶対仕事辞めるマンさん:あとは…歯磨き粉が100均のものからG・U・M(ガム)になりました。

トウシル:え…。それがぜいたくなんですか?(笑)

絶対仕事辞めるマンさん:ええそりゃもう。味がまったく違います(笑)。

挫折せずに節約を続ける秘けつは「強い目的意識」

トウシル:節約を苦痛とせず、楽しみながらお金を貯めて心豊かな生活を送るコツを教えてください。

絶対仕事辞めるマンさん:「節約=苦痛」というのがすでにステレオタイプな概念です。これは、お金を使うことに、自分の幸せを丸投げしているともいえます。価格と価値は異なるので、コスパのいい買い物に、楽しさを感じられると、反対にお金を使うことが苦痛になってきます。

 ちなみに、私は小さい頃から合理性を突き詰めるのが好きなタイプで、ゲームを最大限極めたり、一点突破で一つのことばかりやったりする性格でした。この性格が節約を突き詰めることに生かされたのかなとも思っています。

トウシル:節約すること自体に楽しさや合理性を見いだせると、無理せず続けられそうですね。

絶対仕事辞めるマンさん:加えて強い目的意識も大切です。私は「目標の5,000万円や1億円に1円でも達しなかったらゼロと同じ!」くらいの気持ちで節約していました。目標を達成するまでは「自分はゴミ以下だ、ゴミがぜいたくできるわけない」という自己評価の低さが強みになっていたのかもしれません(笑)。

 1億円までの道のりではリーマンショックもあり、給料をどんどん捨てているような時期もありました。ですが「ここで辞めたら会社から逃げられなくなる!」という思いで続けられました。

トウシル:モチベーションを維持するためにやっていたことはありますか? 

絶対仕事辞めるマンさん:100×100マスのエクセルに1,000円貯金したら黒く塗りつぶす「貯金塗り絵」をしたり、段ボールで1,000万円の偽札束のブロックを作って「これを本物に変えるんだ!」と思い続けたりする工夫もしていました。

 当時はSNSもなかったので同じ志を持った仲間が見つからず、進捗(しんちょく)を語れる人もいなかったので、自分自身でモチベーションを保つ工夫をしていましたね。

(左)1,000円貯まるたび1マス塗りつぶし、ドット絵を描いて目標を再確認する「貯金塗り絵」や、(右)1,000万円の大きさを段ボールで再現して1億円を可視化するなどして日々のモチベーションを維持してきた20年間。

トウシル:後編では、絶対仕事辞めるマンさんが、資産1億円を達成するために挑戦してきた投資などについても伺います!

後編「投資も後押しした資産1億円の形成術 絶対仕事辞めるマンさんインタビュー[後編]」へ続く>>