5月の物価統計:CPIとPPIが前月比で回復傾向、さらに上向きに推移か

 中国の2024年5月の物価統計では、消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同期比0.3%と、4月と同水準を維持し、市場予想を上回った。変動幅の大きいエネルギー価格と食品価格を除くコアCPIの上昇率は、4月の同0.7%から0.6%に減速。半面、サービス業のCPIは3月から5月まで、0.8%の上昇率を維持した。1-5月の累計では、CPI上昇率は前年同期比0.1%、コアCPIの上昇率は0.7%と、いずれも1-4月と同水準だった。

 前月比では、5月のCPIは0.1%下落したが、これは主に季節要因。2010-19年、2020-23年のデータを見ると、5月のCPIは4月比で平均0.2%低下しており、この5月の下落率は相対的に小幅だった。これまで重しとなってきた豚肉価格が回復傾向に転じ、食品価格全体が前月並みで推移したことが、CPI全体を下支えした(2020-23年5月の食品価格は前月比で1.1%低下)。

 一方、非食品のCPIは低調で、5月に前月比0.2%下落。2010年以降の0.1%を超える下げだった。例年は5月に上向く輸送用燃料価格が、国際原油相場の下落を背景に前月比0.8%下げたことや、耐久消費財価格の一段の低下、サービス価格の回復ペースの鈍さなどが響いた。若年層の就職難や不動産不況がサービス価格を圧迫しているもよう。耐久消費財では、家電、通信機器、輸送機器(主に自動車)価格が5月にそれぞれ前月比1.1%、0.4%、0.9%下落し、4月比で下げ幅が拡大した。

 今後のCPIについて、BOCIは緩やかな上昇傾向を見込む。◇供給減に伴う豚肉価格の回復見通し、◇政府の積極財政策や消費財の買い替え促進策が消費を下支えする見通し、◇夏休みシーズンのサービス価格の回復見通し――などが理由。2024年下期の段階的な上昇を見込み、年末には前年同期比約1%まで持ち直すと予想。通年のCPI上昇率は前年比0.5%程度になるとみている。

 一方のPPI(生産者物価指数)は5月に前年同月比1.4%下落したが、4月の2.5%から下げ幅が縮小した。原材料PPI(PPIRM)の下落率も1.7%と、4月の3%から縮小。前月比ではPPI、PPIRMともに、0.2%、0.3%の上昇に転じた。生産財の価格指数も、5月には前月比で0.4%上昇している(4月は0.2%下落)。業種別では特に、石炭採掘、非鉄金属採掘の価格回復傾向が目立った。完成品では、汎用設備、自動車、通信設備が前月比で0.1%、0.3%、0.2%低下。4月からやや改善しつつもマイナス圏で推移した。

 BOCIは低炭素化に向けた政府の取り組みがこの先、高エネルギー消費産業の供給ひっ迫感につながると予想。結果的に関連価格が堅調に推移するとみている。また、政府当局によるインフラ投資向けの資金調達が、川上の原材料需要の押し上げにつながるとの見方。前年実績の低さもあり、PPIの下落率は今後さらに縮小すると予想し、10-12月期にはプラスへの転換もあり得るとしている。