「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第30回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
今日は、世界不況に強い業種を選別するクイズを出題します。
景気はいつか必ず悪化する
私は2024年、米国景気は持ち直し、世界景気は堅調に推移すると考えています。
それでは2025年はどうでしょう? それは、分かりません。世界景気の緩やかな拡大が継続すると思っています。ただ、何らかの理由で、米景気が悪化して世界不況になる可能性もないとはいえません。
景気は循環します。好景気がいつまでも続くことはありません。いつか必ず、循環的に世界景気が悪化する局面が来ます。それが2025年なのか、2026年なのか、2027年なのか、予測することは困難です。
今日のクイズ:不況に抵抗力がある業種はどれ?
今日は、三つクイズを出します。世界不況に対して、相対的に抵抗力がある業種を選ぶクイズです。
第1問はA・B、第2問はC・D、第3問はE・Fを比較し、世界不況に対して抵抗力がある業種が含まれている方を選んでください。世界不況の影響をまったく受けない業種はありません。あくまで、相対比較の問題です。相対的に不況に強い方を選んでください。
【第1問】A:電機・機械 B:医薬品・食品
【第2問】C:コンビニ・食品スーパー D:百貨店・宝飾品店
【第3問】E:商社・鉄鋼・非鉄・海運 F:情報通信・電鉄
景気悪化に備えた「業種ローテーション戦略」
いつか分かりませんが、景気は悪化します。それに備えて、日本株のポートフォリオをどう変化させたらよいでしょうか?
「景気が悪くなるなら、株を売って、キャッシュ(現預金)にする」と考える人が多いかもしれません。それも一案です。景気がいつ悪化するか、正確に予測できるならば、うまくいくかもしれません。
ところが、現実には、景気予測は当たりません。景気が悪くなると決めつけて株を全部売ってしまったのに、いつまでも景気拡大が続くこともあります。そうなると、日経平均株価がどんどん上がっても株高の恩恵を受けられなくなってしまいます。
「景気はいつか悪くなる、でも、いつ悪くなるか分からない」としたら、景気悪化に備えて何をしたらよいのでしょうか? 私が日本株のファンドマネジャーだった時は、景気悪化を予測しても、株を売ってキャッシュにするということはありませんでした。
でも、何もしなかったわけではありません。好景気が続く中、いつか来る景気悪化に備えて、株式ポートフォリオの中で、「業種ローテーション」をしていました。不況の影響を受けやすい景気敏感株を減らして、景気に中立的なディフェンシブ(防衛)株を増やすローテーションを少しずつ、していきました。
それを続けて、いつか景気が本当に悪くなったときに、ディフェンシブ株をたくさん持っていれば、日経平均株価よりも少ない下落率で済むことができます。
そして、景気が悪化した後、次の景気回復を待つ場面では、逆のことをします。値下がりが小さいディフェンシブ株を売って、値下がりが大きい景気敏感株を買います。そうして、景気敏感株を増やしながら、次の景気回復に備えます。
クイズの正解:景気悪化に比較的強いのは生活に欠かせない業種
クイズの正解は、第1問はB(医薬品・食品)、第2問はC(コンビニ・食品スーパー)、第3問はF(情報通信・電鉄)です。
【第1問】 製造業と非製造業を比べると、非製造業の方が、相対的に不況抵抗力があります。製造業は、設備を保有していて固定費負担が重いので、売上が減少し、減産や操業停止が始まると、一気に収益が悪化します。電機、機械、自動車などの産業は、景気の影響を受けやすい景気敏感株が多くなっています。
一方、同じ製造業でも、医薬品・食品は、景気の影響を受けにくいディフェンシブ株がたくさんあります。医薬品・食品は、景気の良しあしにかかわらず、人間が生きていくために必要なものですから、景気悪化局面でも需要の減少が少なくて済みます。
医薬品は、特許に守られている期間、過当競争になりにくいことも収益の安定に寄与します。世界的な医療費削減の流れから医薬品産業の成長性が徐々になくなってきているのは事実ですが、それでも景気悪化局面の安定性については、高く評価できます。
【第2問】 答えは、Cです。小売業は、業態によって景気悪化の影響が異なります。コンビニや食品スーパーは、景気の影響を受けにくいディフェンシブな業態です。コンビニの売上高の約8割は食品ですので、「食べ物は不況に強い」ということです。
一方、百貨店や宝飾品店など、高額品で、必ずしも生活必需品ではない商品の取り扱いが多い小売業は、景気の影響を受けやすい景気敏感株となります。
【第3問】 答えは、Fです。情報通信・電鉄は、景気悪化の影響を受けにくい産業といえます。例外は、2020年コロナショックの景気悪化局面です。外出する人が一時的にいなくなった影響で、電鉄の収益が著しく悪化しました。
ただし、2020年を除けば、電鉄は、生活に必須の公共サービスを提供している産業なので、景気悪化の影響を受けにくいディフェンシブ株です。情報通信産業も、相対的に景気悪化の影響が小さい産業です。その代表はNTT(9432)です。国民生活に必須の通信サービスを提供していることから、景気悪化の影響を受けにくくなっています。
最後にご参考までに、業種別の景気敏感度を比較したものが、以下の表です。表の上にいくほど、景気敏感株が多い産業になります。下にいくほど、ディフェンシブ株が多い産業となります。
<業種別の景気敏感度>
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