一つの銘柄に資金を集中させるリスク
以前のコラムでも話題にしたことがありますが、個人投資家が避けるべき点の一つとして「一つの銘柄に資金を集中させる」というものがあります。
一つの銘柄に資金を集中させることは誤りではなく、もしその銘柄の株価が大きく上昇したら、非常に大きな利益を獲得することができるというメリットがあります。この点を重視し、「個人投資家は分散ではなく集中投資をすべし」と説く専門家もいます。
しかし、自身が選んだ銘柄の株価が必ず大きく上昇するかといえば、それは分かりません。逆に持ち続ければ続けるほど株価が値下がりし、買値の5分の1、10分の1まで下落してしまうケースも珍しくありません。
そうなれば、致命的な損失を被ってしまいます。これまで順風満帆であっても、突然の悪材料発覚により、株価が急落し、個人投資家が大きな損失を抱えてしまうのを、筆者も何度も見てきました。
ですから、一つの銘柄に資金を集中させるのは、大成功するかもしれないし大失敗するかもしれない行為です。そして大失敗する可能性が低くないのであれば、できるだけ避けるべきというのが筆者の考えです。
もし注目の半導体関連銘柄を買うとしたら?
一方、個人投資家が株式投資で売買する際の最低単位は通常100株です。例えば、現在国を挙げて後押ししている半導体関連の銘柄が今後も注目に値するとして、半導体関連銘柄への投資を考えたとしましょう。
主な半導体関連銘柄の、5月17日の終値は以下の通りです。
- 東京エレクトロン(8035):3万6,090円
- SCREENホールディングス(7735):1万5,650円
- ディスコ(6146):5万6,060円
- レーザーテック(6920):4万3,170円
- ローツェ(6323):3万3,250円
もしこの5銘柄を最低単位である100株ずつ買うとすると、いくら必要になるでしょうか。
なんと、1,842万円もの金額が必要なのです。さすがにこれでは多くの投資家にとってハードルが高いというか、そもそもそんなに投資資金を持ってない、という方が大部分なのではないでしょうか。
かといって、上記のうち1銘柄だけ買うと、投資資金の大部分がその1銘柄だけになってしまい、リスクが格段に高くなってしまいます。
もともと半導体関連株はボラティリティが高いため、株価が短期間に半値以下になることもよくありますし、リーマン・ショック時には株価が10分の1になった銘柄もあります。
ですから、一つの銘柄に資金を集中させることがリスクだと分かっていても、そもそも投資できる資金の総量がそれほど多くない方は、特に株価が高い株を買ってしまうと、結果的に一つの銘柄に資金を集中させることになってしまうのです。
ETFなら少額で銘柄分散が可能に
こんな時に役に立つのがETF(上場投資信託)です。ETFが出始めた当初は、日経平均株価連動型とか、TOPIX(東証株価指数)連動型といったような、いわゆる株価指数(インデックス)への連動型しかありませんでした。しかし今では非常にバリュエーションに富んだラインアップとなっています。
例えば半導体関連のETFであれば、「FactSet Japan Semiconductor Index」という指数に連動することを目指す「グローバルX 半導体関連-日本株式ETF(2644)」があります。こちらの5月17日の終値は4,780円ですが、なんと1口から買えます。
そして、上記の5銘柄も当然ながら組み入れ銘柄に入っていますので、複数の銘柄に投資資金を分散させ、かつ少額の資金で投資することができるのです。
これ以外にも、フィラデルフィア半導体指数に連動する値動きを目指す「グローバルX 半導体 ETF(2243)」であれば、海外の半導体関連銘柄に少額から分散投資できますし、変わり種としては「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ解消推進ETF(2080)」といったものもあります。
その名の通り、PBR1倍割れ銘柄を投資対象とし、それらの銘柄が経営改善などで株価を上昇させ、PBR1倍割れを解消することを期待するものです。
その他にも、例えば今後米国の金利低下を見込むのであれば「iシェアーズ 米国債20年超(2621)」など、米国債の価格に連動したETFを買ったり、原油価格の上昇を見込むのであれば「WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格連動型上場投信(1671)」に投資するという選択肢があります。
さまざまなETFがありますから、ぜひETFについていろいろと調べてみてください。
ETFに投資する際の注意点
非常に魅力的なものも多々あるETFですが、注意したい点がいくつかあります。
まず一つ目は、「流動性」です。これは個別銘柄にも言える話なのですが、流動性が低いものは、現在ついている価格に近い価格で売買することが困難になってしまいます。
特に保有しているETFをすぐ売りたい、といったときに流動性が低いと、最悪のケースでは買い注文がほとんど入っていないため売ること自体ができない、という可能性もあります。
ですから、日々の売買高を確認して、流動性が高く、ある程度売買が活発にされているものを選ぶことをお勧めします。
また、投資対象が海外のものについては、為替レート変動の影響を受ける点にも注意してください。
もし、米国で上場しているETFを買えば、それは米ドルベースでの価格推移となります。しかし、日本の取引所に上場しているETFは、全て円建てで評価されることになるので、現地通貨ベースでの値動きの他、為替の影響を受けた価格形成になります。現地通貨ベースでは値上がりしていても、円高が進行すれば円ベースでは逆に値下がりする、という可能性もあります。
最後に、特に特定業種のETFについては、「銘柄」分散はできているものの「業種」分散ができていないので、リスクはかなり高い状態にとどまっているという点です。
例えば半導体であれば、市況が悪化すれば半導体関連株は軒並み大きく下がるはずです。そんな時に、たとえETFで銘柄分散ができていたとしても、そのETFの組み入れ銘柄が半導体関連株ばかりであれば、ETFの価格は大きく下がってしまいます。
銘柄を分散させる際は、銘柄のみでなく、業種もあまり偏りすぎないように気を付けるようにしてください。
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