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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「決算レポート:ディスコ(生成AI向け、メモリ向けを軸に業績好調)、メタ・プラットフォームズ(今1Qは業績好調。会社側は今期設備投資見通しを上方修正した)」
毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:ディスコ(東証プライム、6146)、メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)
ディスコ
1.2024年3月期4Qは、32.0%増収、47.4%営業増益
ディスコの2024年3月期4Q(2024年1-3月期、以下前4Q)は、売上高1,042.99億円(前年比32.0%増)、営業利益461.27億円(同47.4%増)となりました。検収が順調に進んだため会社予想である売上高845億円、営業利益332億円を大きく上回る結果となりました。前3Q比でも大幅増収増益となりました。
ディスコの業績の勢いを示す連結出荷額を見ると、前2Q793.62億円、前3Q773.41億円から前4Q949.87億円と勢い良く伸びました。
前3Qから前4Qにかけての製品別出荷額の動きを見ると、ダイサ(回路を描き込んだシリコンウェハを四角いチップに切り出す)は生成AI向け(HBM向け)とメモリ向けが増加しました。パワー半導体向け(特に最新型のSiCパワー半導体)も増加しました。グラインダ(シリコンウェハの底面を薄く削る)は、生成AI向け(HBM向け)が増加したほか、メモリ向け、パワー半導体向け(SiC系、シリコン系)が増加しました。
精密加工ツール(ブレード(消耗品))も順調に増加しました。
地域別売上高を見ると、アジア向けが前3Q505.81億円から前4Q677.13億円へ大幅に増加しました。HBM向け、DRAM向け、NAND向け、パワー半導体向けが増加しました。
この結果、2024年3月期は売上高3,075.54億円(同8.2%増)、営業利益1,214.90億円(同10.0%増)となりました。過去最高業績を更新しました。
表1 ディスコの業績
表2 ディスコ:連結受注高、売上高、出荷額
グラフ1 ディスコ:売上高、受注高、出荷額(連結ベース)
グラフ2 ディスコ:地域別売上高
2.2025年3月期1Qも業績好調が続こう
会社側の2025年3月期1Q予想は、売上高753億円(前年比39.5%増)、営業利益271億円(同59.7%増)です(ディスコは通期業績予想を開示せず、翌四半期予想のみを開示)。検収が進んだ前4Qに比べると減収減益になる見込みですが、前年比では引き続き大幅増収増益が予想されます。出荷ベースで見ると、グラインダの生成AI向けが前4Q比小幅減少する見込みですが、ダイサの生成AI向け、パワー半導体向け、ダイサ、グラインダのロジック向けの出荷が増加すると会社側は見ています。
連結出荷額は今1Q949.87億円に対して今2Q会社予想は935億円ですが、今2Qの前提レートは1ドル=145円です。1ドル1円の円安で営業利益に対して約13億円の円安メリットがあるため、売上高に対してはこれ以上のメリットが出ると思われます。そのため、今の1ドル=156円が続けば、今2Q連結出荷額は今1Q比若干増加すると思われます。今2Qも連結出荷額は堅調と予想されます。
2024年3月期までの実績と今1Qの会社予想を参考にして、楽天証券では今期2025年3月期業績を売上高4,200億円(同36.6%増)、営業利益1,850億円(同52.3%増)と予想します。また、好業績は来期も続くと予想されるため、来期2026年3月期を売上高5,100億円(同21.4%増)、営業利益2,360億円(同27.6%増)と予想します。
会社側によれば、2025年3月期も生成AI向けは順調な出荷が続くと予想されます。また、今年後半に出荷開始される予定のエヌビディアの新型AI半導体「Blackwell」に搭載されるHBMの容量が拡大し続けると思われること、AIサーバー、AIパソコン、AIスマートフォンに搭載されるメインメモリ(DRAMの最新規格「DDR5」)とSSDの容量が増加していることから、今年後半から来年にかけて、HBM、DRAM、NANDの大型増産投資が予想されます。そのため、2026年3月期の生成AI向けも順調が予想されます。
2026年3月期はこれらに加えて、今のところ緩やかな回復に止まっている先端ロジック向けがある程度本格的に回復すると予想されます。
一方でリスクもあり、2024年または2025年に中国の半導体設備投資が減少する可能性があること、今期に入って表面化していることですが、AI半導体以外に大きく成長する分野が見当たらないことなどの問題が来期にも引き継がれる可能性があります。
グラフ3 ディスコの製品別出荷額
3.今後6~12カ月間の目標株価は前回の7万1,000円を維持する
今後6~12カ月間のディスコの目標株価は前回の7万1,000円を維持します。楽天証券の2025年3月期予想EPS(1株当たり利益)1,258.0円に、楽天証券の2025年3月期予想営業増益率52.3%に対して、AI半導体製造に不可欠なHBM生産に重要なグラインダを供給していることからプレミアムを付け、想定PER(株価収益率)55~60倍を当てはめました。
株価上昇に時間がかかる可能性はありますが、引き続き中長期で投資妙味を感じます。
メタ・プラットフォームズ
1.2024年12月期1Qは、27.3%増収、91.2%営業増益
メタ・プラットフォームズ(以下メタ)の2024年12月期1Q(2024年1-3月期、以下今1Q)は、売上高364.55億ドル(前年比27.3%増)、営業利益138.18億ドル(同91.2%増)となりました。
セグメント別に見ると、ファミリー・オブ・アプス(フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、ワッツアップに関連する事業で主に広告事業)は、売上高360.15億ドル(同27.2%増)、営業利益176.64億ドル(同57.4%増)となりました。季節性のため、前4Q比では減収減益でしたが、前年比では好調でした。今1Qは特にワッツアップ関連事業の伸びが大きかった模様です。ファミリー・オブ・アプスの営業利益率は前1Q39.6%から今1Q49.0%へ大幅に改善しました。
この中で広告売上高は356.35億ドル(同26.8%増)となり、大きな伸びを実現しました。業種別ではネット通販、ゲーム、エンターテインメント、メディア向けが好調でした。地域別には全地域が好調でしたが、特にその他地域と欧州が好調でした。
リアリティ・ラブス(メタバース関連事業とインフラ構築)は、売上高4.40億ドル(同29.8%増)、営業損失38.46億ドル(前1Qは39.92億ドルの赤字)となりました。広告AI、生成AIとVR機器の「Meta Quest」などのメタバース関連事業を拡大する際に必要になる大規模ネットワーク構築が続いており、そのためこのセグメントでは赤字は続いています。
表3 メタ・プラットフォームズの業績
表4 メタ・プラットフォームズのセグメント別業績(四半期)
グラフ4 メタ・プラットフォームズ:アプリ・ファミリーのDAU、MAU
グラフ5 メタ・プラットフォームズ:アプリ・ファミリーの1人当たり売上高
2.会社側の今1Q業績ガイダンスでは増収率鈍化
会社側の今1Q業績ガイダンスは、365~390億ドル(前年比14.1~21.9%増)です。今1Qに比べると増収率は鈍化する見込みですが、これは前2Qは広告事業が急速に回復した時期であり、特に中国のネット通販業者が積極的な広告出稿を行ったことで伸びが大きくなった時期であり、今2Qにその反動が出ると会社側は見ています。広告事業の基調は好調と見てよいと思われます。ただし、
また、会社側は2024年12月期の総費用(売上原価、研究開発費、販管費の合計)見通しを前回の940~990億ドルから960~990億ドルへ小幅上方修正しました。今1Qに訴訟費用が嵩んだこと、今2Q以降にAI用GPUの需給関係がやや緩和され供給が増加する見込みであることから今2Q以降設備投資を増やすため減価償却費が増加することが織り込まれています。
2024年12月期の設備投資見通しは、前回の300~370億ドルから350~400億ドルへ上方修正されました。広告AI、生成AI等のAI開発と、AIとメタバース関連システムを駆動する大規模ネットワーク(データセンター、AIサーバー、通信システムなど)への投資を増額しました。これはAI用GPUの供給が増加する見込みであることが関連していると思われます。
今1Qまでの実績と今2Q、2024年12月期通期の売上高、費用、設備投資ガイダンスを参考に、楽天証券の2024年12月期業績予想を売上高1,630億ドル(前年比20.8%増)、営業利益640億ドル(同36.9%増)、2025年12月期を売上高2,000億ドル(同22.7%増)、営業利益840億ドル(同31.3%増)と予想します。前回予想からやや下方修正しますが、中長期の高い成長性には変化はないと思われます。
また、今2Qに入って最新型生成AI「Llama 3」を搭載した新バージョンのMeta AIをリリースしました。現在のところユーザーの評価は良好である模様です。
表5 メタ・プラットフォームズのセグメント別業績
グラフ6 メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)の年間設備投資
3.今後6~12カ月間の目標株価は前回の640ドルを維持する
今後6~12カ月間の目標株価は前回の640ドルを維持します。楽天証券の2024年12月期予想EPS20.72ドルに、想定PER30~35倍を当てはめました。中長期的に見ると、今は投資する機会であると考えられます。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:ディスコ(東証プライム、6146)、メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)
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