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著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「積立投資家は「価格暴落」がお好き?」
積立投資、価格が暴落したらどうなる?
仮に、以下の価格推移を演じる商品があったとします。暴騰パターンと暴落パターン、50年後にどちらの収益が大きくなるでしょうか。条件は、「積み立て」で取引すること(毎月1万円)、手数料は買付時に1.65%(税込)、分配金・配当なし、再投資せず、です。
図:積み立てシミュレーション(2パターンの価格推移)単位:円/グラム
暴騰パターンは、20年かけて5,000円上昇して1.5倍になり、次の20年はこの高値水準を維持。そして最後の10年間で3,000円上昇し、1万8,000円という100年前(1974年4月)の10倍以上の価格で取引を終えるパターンです。
暴落パターンは、20年かけて半値まで暴落します。次の20年はその安値水準で低迷し、最後の10年間で3,000円上昇するも、積み立て開始時よりも2,000円も安くなって取引を終えるパターンです。積み立て開始時の価格を一度も上回りません。
さて、どちらのパターンの収益が大きくなるのでしょうか。条件は、「積み立て」で取引をすることです。
「暴落」が運用を好転させる場合あり
以下は、二つのパターンそれぞれの累積資産額の推移です。
図:積み立てシミュレーション(2パターンの累積資産額)単位:100万円
最終的な累積資産額(保有数量×価格)は、暴騰パターンがおよそ750万円、暴落パターンがおよそ780万円でした。冒頭の問い「暴騰パターンと暴落パターン、50年後にどちらの収益が大きくなるでしょうか」の答えは、暴落パターンでした。
1万円を600カ月(50年間)、投資し続けるため、投資金の合計は600万円です。このため投資金に対する最終的な資産の額は、暴騰パターンが1.26倍、暴落パターンが1.31倍でした。
この結果を「大差ない」と考えるか、「暴落が暴騰に勝った」と考えるか、さまざまだと思います。こうした相対的な評価も重要ですが、一度も取引開始時点の価格を上回らなかった暴落パターンで利益が出た、という暴落パターン自体の絶対評価にも注目する必要があります。
なぜこのような結果が出たのでしょうか。なぜ投資において、価格が下落しても利益が出ることがあるのでしょうか。
「保有数量」は価格推移と同じくらい重要
暴落パターンの資産の額が暴騰パターンの資産の額を(わずかながら)上回ったことと、価格が下落しても利益が出たことの理由は同じです。この取引が「積み立て」だからです。
多くの場合、大まかな収益の計算は「保有数量×価格」で行います。積み立ての場合、毎月一定額を購入に充てるため、価格が変動すると購入する数量が変動します。
図:積み立てシミュレーション(2パターンの累積保有数量)単位:グラム
上の図は、暴騰パターンと暴落パターンの累積保有数量の推移です。最終的な保有数量は、暴騰パターンが421グラム(貴金属の積み立てを想定しているため、数量の単位はグラム)、暴落パターンが983グラムでした。暴落パターンは暴騰パターンの2倍以上になりました。
暴落パターンの価格が長期で低迷した期間(2044年3月から2064年2月)、保有数量の増加のスピードが、他の期間に比べて速かったことが分かります。まさにこれは、月々の投資額が変わらない積み立てだからこそ起きていることです。
価格下落は月々の購入数量を増やす好機
以下は暴騰パターンと暴落パターンの月々の購入数量の推移です。暴落パターンは、最後の10年間、価格が上昇したため月々の購入数量は減少しました。それでも、価格が長期で低迷した期間の月々の購入数量は、高止まりしました。
図:積み立てシミュレーション(2パターンの月々の購入数量)単位:グラム
一方、価格が一度も下落することがなかった暴騰パターンの月々の購入数量は、一度も増加することはありませんでした。月々の投資額は一定であるため、価格上昇が優先されると月々の購入数量は減ります。積立投資においては、「価格高騰は月々の購入数量を減らすこと」でもあるのです。
さらに言えば、価格が「ゼロ円」に近づけば近づくほど、月々の購入数量は増加しやすくなります。仮に月々の投資額が9,835円(1万円の投資金で購入時の手数料1.65%を考慮)だったとして、価格が8,500円から6,500円に下がると、購入できる月々の数量は0.3グラム増えます。
図:積み立てシミュレーション(価格がゼロ円に接近した場合の月々の購入数量)
価格が6,500円から4,500円に下がると(同じく2,000円下落)、同0.6グラム増えます。4,500円が2,500円に下がると1.7グラム増、2,500円が500円に下がると15.7グラム増加します。暴落パターンの月々の購入数量が価格急落時に曲線的に増加したのはこのためです。
積み立て効率化のコツ「暴落は利用するもの」
積立投資においては、「価格が安い(ゼロ付近での低迷ならなお良い)=保有数量が増えやすい」といえるでしょう。保有数量が効率的に増えれば、それだけ資産の額(保有数量×価格)を大きくしやすくなります。
だからこそ、価格が取引開始時の水準まで戻らなくても利益が出るのです。さらには当該シミュレーションのように、暴騰パターンよりも大きな利益が出る場合さえあります。
図:積立投資の収益イメージと効率化させるための二つの条件
本レポートで述べたシミュレーションを基に考えれば、積立投資に適した銘柄の特徴は、「しばしば急落すること」だといえます。そして、暴騰パターンのような史上最高値を維持・更新し続ける銘柄は、積立投資には向いていないといえます。
株価が暴落すると不安になる方は多いと思います。ですが、積立投資をしているのであれば、目の前で起きている暴落は保有数量を普段以上に増やす好機だといえます。暴落している時こそ、積立投資の本質に立ち返ることが重要だと筆者は思います。
積立投資を効率化させるには、いかに価格下落を利用するか、です。このため筆者は、積立投資家にとって「暴落は利用するもの」だと考えています。積立投資の本質を意識することは、急落がもたらす不安を小さくしてくれると筆者は考えます。
[参考]積み立てができる貴金属関連の投資商品例
純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠対応)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)
関連ETF(上場投資信託)(NISA成長投資枠対応。かぶツミを利用することで積み立てが可能)
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
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