「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第25回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
今日は、J-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)の仕組みを学ぶためのクイズを出します。
今日のクイズ:J-REITの投資対象はどれ?
J-REITは、株式の一種です。東京証券取引所に上場していて、株と同じように取引所が開いている時間に売買できます。4月16日時点で分配金利回りが4.5%と高いことが魅力です。利回りを重視する投資家にとって、分散投資する価値が高いと思います。
それでは、まずクイズを解いてください。
【クイズ】以下【A】~【G】のうち、J-REITの投資対象に入るものは、どれでしょう? 該当するものを、全て選んでください。
【A】東証に上場している不動産株
【B】オフィスビル
【C】賃貸住宅・マンション
【D】物流施設(倉庫)
【E】商業施設
【F】ホテル・リゾート施設
【G】ヘルスケア施設(有料老人ホーム)
J-REITの市場概況
J-REITの銘柄数は4月16日時点で58銘柄です。時価総額は合計約15.2兆円です。
J-REITの市場全体の動きを表す指数として、東証REIT指数と配当込み東証REIT指数があります。2010年1月末を100とした指数に作り替えて2010年以降の動きを比較した以下のグラフをご覧ください。
<東証REIT指数と、配当込みREIT指数の月次推移:2010年1月~2024年4月(16日)>
【1】配当込み東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、トータルリターン(受け取った配当金+価格変動)を示しているのが、配当込みREIT指数の動きです。2010年1月に100投資したら、2024年4月に約350(約3.5倍)になっていることが分かります。
ただし、2020年1月以降だけを見ると、ほぼ横ばいです。コロナショックの急落をほぼ取り返していますが、リターンが出ていません。
【2】東証REIT指数
東証REIT市場全体に分散投資した場合の、価格変動だけを表しているのが東証REIT指数の動きです。受け取った分配金は、リターンに含まれていません。
2020年1月以降は下落トレンドが続いてきました。分配金を受け取っても、その分、値下がりによってトータルリターンがほとんど出ていない状況です。
平均分配金利回りが4.5%まで上昇
東証REITの平均分配金利回りは、4月16日時点で4.5%まで上昇しました。2021年8月には3.3%まで低下していました。ところがその後、J-REITの価格下落が続いたため、利回りは4.5%まで上昇しました。
<配当込み東証REIT指数と平均分配金利回りの推移:2019年末~2024年4月16日>
J-REIT全体の平均利回りは、4%が妥当と私は判断しています。利回りが4%を下回っているとき、J-REITは「割高」、4%を上回っているときは「割安」と私は判断します。現在、4.5%まで利回りが上がっており、「割安」と判断しています。
クイズの正解:組み入れ対象となるのは【A】の不動産株以外
【B】、【C】、【D】、【E】、【F】、【G】は、REITに組み入れることが可能です。
組み入れ対象でないのは、【A】不動産株だけです。
【B】オフィスビル
【C】賃貸住宅・マンション
【D】物流施設(倉庫)
【E】商業施設
【F】ホテル・リゾート施設
【G】ヘルスケア施設(有料老人ホーム)
J-REITには、さまざまな種類があります。もともとは、オフィスビルや住宅・マンションに投資するファンドがほとんどでしたが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。代表的な銘柄を以下の表にまとめました。
<J-REIT代表銘柄(投資の参考銘柄):分配金利回りは4月16日時点予想>
コード | 銘柄名 | 主な投資対象 | 分配金利回り (年率:会社予想) |
最低投資額 (円) |
---|---|---|---|---|
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | オフィスビル | 4.2% | 600,000 |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | オフィスビル | 4.4% | 531,000 |
3234 | 森ヒルズリート投資法人 | オフィスビル | 4.6% | 134,200 |
3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 住宅・マンション | 3.6% | 332,500 |
3281 | GLP投資法人 | 物流施設 | 4.5% | 126,900 |
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 物流施設 | 3.9% | 260,100 |
3292 | イオンリート投資法人 | 商業施設 | 4.9% | 136,100 |
8963 | インヴィンシブル投資法人 | ホテル・リゾート施設 | 5.1% | 69,000 |
出所:分配金利回りは4月16日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算 |
上記に挙げたように、J-REITにはいろいろな種類があります。
【1】オフィス・リート(主にオフィスビルに投資)
【2】レジデンシャル・リート(主に住宅・マンションに投資)
【3】物流リート(主に物流施設に投資)
【4】リテール・リート(主に商業施設に投資)
【5】ホテル・リート(主にホテル・リゾート施設に投資)
ただし、1つの種類だけに投資しているREITは必ずしも多くありません。実際には1つではなく、複数の種類のアセットに投資している「総合型」REITが多くなっています。上の表の「主な投資対象」では、コア・アセットとして投資しているものだけを示しています。
J-REITに投資したいと思うものの、どの銘柄を選んだらよいか分からない方は、最初は、投資信託で「東証REIT指数インデックスファンド」に投資するのも良いと思います。小口資金で、さまざまなJ-REITに分散投資できます。東証REIT市場全体の平均値に投資することになります。
【参考】不動産への小口投資を可能にしたREIT
REITとは何かご存じない方もいらっしゃると思いますので、基礎的なことから説明します。REITは、不動産への小口投資を可能にした「上場投資信託」です。
個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、かなり大きな金額が必要です。資金規模の制約から、個人投資家が直接投資できる対象は限られます。
REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。
<図A>REITを通じて大型物件に投資
一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著に見られる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。
ところが、REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。REITの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、REITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。
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