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著者の白石 定之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「製造業で決算発表の先陣を切った安川電機、今後の日経平均どう読み解く?」
2月決算銘柄の安川電機から見る日経平均の動向
日経平均株価(225種)は4万円あたりの強い動きを続けていますが、今後の動向を見る上で、今月下旬から続々と発表される3月決算銘柄の決算に注目している方も多いと思います。
日経平均の寄与度の高い銘柄の中には、グローバルに展開する製造業が多く、日経平均は「世界の景気敏感株」とも言われたりしているので、構成する225銘柄の中でもグローバルに展開する製造業がどのような決算になるのかについては、特に注目が集まるところかと思います。
そういった企業の決算内容を推測する上で参考になるのが、2月決算銘柄で、工作機械に使われるサーボモーターやロボットを扱っている電気機器メーカーである安川電機(6506)の決算です。
2月決算銘柄である安川電機の決算は、3月決算銘柄よりも半月から1カ月程度早く発表されるので、私は毎四半期、注目していますが、今回、4月5日に2024年2月期通期決算が発表されたので、その内容について見ていきたいと思います。
見ていくポイントは次の5点です。
- 2024年2月期の売上高、営業利益の達成率は?
- 足元の受注額の前期比、前年比は?
- 所在地別で見たときの受注額の動向は?
- 今期の会社見通し、今期、来期、再来期のコンセンサス予想は?
- 決算発表後の株価の動きは?
では、一つ一つ見ていきましょう。
(1)売上高、営業利益の達成率は?
安川電機の通期決算における売上高、営業利益の達成率は次の通りです。
(表1)安川電機の売上高・営業利益の達成率
会社予想に対し、売上高は99.3%、営業利益は94.6%と、ともに未達での着地となった一方、コンセンサス予想に対しては、売上高で100.4%、営業利益で101%と予想を若干上回る着地となっています。
(2)受注額の前期比、前年比は?
(表2)受注動向
受注額は直近の第4四半期だけを取り出すと1,101億円で、前期比でマイナス14.2%、前年比でマイナス13%と減少しています。
値上げをし、円安というプラス要因もありながら、ここ3年の中で最低額となっているので、足元の受注動向は厳しい状態であると推測されます。
(3)所在地別の受注額は?
(表3)所在地別の受注動向
所在地別の受注額を見てみると、第4四半期においては日米欧で前年比マイナス、中国では低水準の横ばいとなっています。
米国株が堅調に推移する中、一般には米国経済は強いと言われていますが、その米国を含む米州において、前年比でマイナス22.5%と大幅な減少となっています。
(4)今後の業績の会社見通しとコンセンサス予想は?
(表4)安川電機の業績見通し
今期の会社見通しは、若干ながら増収増益見通しとなっています。
コンセンサス予想は会社見通しよりも強気となっていて、来期、再来期はさらに売上高、営業利益も伸びていく予想となっていますが、4月5日に決算発表されたばかりなので、今後、コンセンサス予想は変化してくるものと思います。
また、別の観点から見ると、直近の第4四半期の受注額は1,101億円なので、単純にこの値を4倍して年換算すると、4,404億円となります。
これに対し、会社見通しは5,800億円、コンセンサス予想で5,931億円となっているので、足元の受注状況のままでは厳しく、今後の製造業の設備投資の回復見込みや、受注残をまだ多く抱えているであろうことを考えても、ここから受注をかなり盛り返していかないと達成できない水準だと考えています。
(5)決算発表後の株価の動きは?
決算発表前後の株価の動きは次の通りです。
(表5)安川電機の株価の動き
決算発表日は前日比215円安と大きく下げましたが、日経平均も781円安と大幅安となった日なので、全体の動きに沿ったものと思いますが、決算発表翌営業日の4月8日は、日経平均は354円高となった一方で、安川電機の引け値は50円安となっています。
8日は朝方、買い気配から始まっていて、これは、決算の着地がコンセンサス予想を上回っていたことと、今期の会社見通しが増収増益見通しであったことが効いていると思いますが、その後、受注額の低さが見られ、結果的にネガティブに捉えられて下落したものと考えています。
以上をまとめると、次のようになります。
- 2024年2月期決算は、会社見通し未達も、ほぼコンセンサス予想通りの着地
- 直近の第4四半期の受注額は前年比2桁減。この3年で最低額であり、厳しい状態
- 所在地別の受注額は日米欧で前年比マイナス。経済が堅調と言われている米国を含む米州においても2桁減と厳しい状態
- 今期の会社見通しは増収増益見通し。コンセンサス予想は会社見通しより強気で、来期、再来期も増収増益見通しも、足元の受注額からすると、今後、かなりの受注増が必要
- 株価は決算発表翌営業日に下落し、ネガティブな反応
今回の安川電機の決算においては受注額が大きく減っていて、今後、製造業における設備投資の回復があっても、受注がかなり増えないと会社見通しの達成は難しいと思えることから、先々、下方修正もあり得ると考えています。
また、工作機械の受注動向は、設備投資の動向をいち早く表すものともいわれているので、足元の受注状況からは、世界的な設備投資の動きはまだ強くないと言えます。
一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の後、業界によって置かれている状況は異なっていて、半導体製造装置業界においては今後の見通しは明るく、半導体不足が解消されてきた日本の自動車業界の企業業績は好調といった状況もあります。
このため、これから発表される3月決算銘柄の中で、今回の安川電機の決算内容と同じような形になっていると推測できる企業は、安川電機に近いビジネスをしている企業に限られるかと思いますが、少なくとも、今後について強気に見ることができる内容ではなかったので、製造業について、ひいては、日経平均を見る上でも「慎重さは必要」ということになると私は考えています。
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