3月末、日経平均を動かす需給イベント

 3月末を迎え、3月期や9月期決算企業の配当金、優待などの権利取りも終えて、いよいよ4月の新年度相場が迫ってきました。3月最終取引週となった今週の日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)はともにやや方向感に乏しい展開となりました。

 要因としては、テクニカル(一定の株式市場のルールにのっとった売買)な需給イベントがあちらこちらで発生したことが挙げられます。

 例年、期末には機関投資家が受け取る予定の配当金に相当する額を株価指数先物などに先回りして投資する「配当再投資」でまとまった金額の買い需要が発生します。株価指数への連動を目指して運用する場合、配当権利落ち分が指数に反映されると運用指標との間にずれが生じるためです。

 また、3月4日には日経平均構成銘柄の定期入れ替えに関する発表もあり、関連銘柄の取引がありました。

 3月全体を見渡しますと、年金のリバランス売りも幅広く入っていたと推測されます。

 例えば、日本最大の公的年金制度における年金積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、決められた割合で国内株や国内債券、海外株、海外債券を運用していますが、日本株の上昇を受けて国内株の割合が決められた割合を上回ったため、売りを出さざるを得ない状況でした。

 こうした売買は、東京証券取引所が毎週発表している「投資部門別売買状況」のデータを見ると一目瞭然です。年金に関連した売買を指す「信託」経由の現物売買は、1月第1週から3月第2週までで3兆5,920億円の売り越しと圧倒的な売りでした。日経平均が大きく上昇し始めた1月第2週からは、10週連続で売り越しと日本株の大きな売り主体となっていたわけです。

 まぁ、こうしたリバランスに関連した売りは、決められたルール通りに行うしかありませんので3月末で一巡すると思われます。つまり4月の新年度入りはこうした売り需要が無くなる可能性がありますので、東京市場全体の需給面は改善するとの見込みです。

4月相場の話題:日経、半導体関連株の新指数を始動

 では、需給面が改善する可能性がある4月相場で何に投資していけばいいでしょうか?

 NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を通じての投資を前提として考えますが、ここは出遅れ半導体銘柄を狙いたいと考えます。理由は、日本経済新聞が3月25日、「日経半導体株指数」の算出・公表を開始したからです。

 日経半導体株指数は、東京証券取引所に上場する半導体関連30銘柄で構成される時価総額ウエート方式の指数です。1日一回終値ベースで計算されており、基準日である2011年11月30日を1,000と設定しています。3月27日終値は1万1,708.29と基準日からは12倍ほどで推移しています。

 同じ時期で比較しますと、TOPIXは4倍弱、東証グロース市場250指数(旧マザーズ指数)は2倍弱にとどまっていますので、半導体関連銘柄の上昇は際立っています。

 東京エレクトロン<8035>アドバンテスト<6857>など日経平均構成ウエートが高い値がさ半導体関連銘柄が、日経平均のけん引役となっていたのは言うまでもない事実です。そして、2024年の半導体市況は、周期的に好不況を繰り返す「シリコンサイクル」が底入れし、好転が期待されています。

 つまり、これだけ話題になっていた半導体市況が、実は「ようやく不況から脱しそうだ。だから、まだまだ期待できる」というわけです。生成AI(人工知能)向け半導体で一躍世界のトップメーカーとなった米エヌビディアなど半導体関連銘柄への関心が高まっている今、この日経半導体株指数が今後、東京市場でも話題になると考えます。

 この指数に採用されているから「今すぐ買いだ!!」…というわけではありません。この指数で構成する金融商品はまだ存在しませんので、指数採用に絡んだ買い需要はまだ発生しません。

 ただ、米国のフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)に関連したインデックスファンドが存在するように、半導体関連は金融機関および投資家の関心が非常に高いことから、いずれ日経半導体株指数に関連したインデックスファンドが組成する可能性はあるでしょう。金融商品が誕生した場合、指数に組み入れられている銘柄には需給イベントが発生するとの公算です。

田代くんの気になる5銘柄はコレ!:日本の半導体関連・出遅れ株

 先々どう成長するか分かりませんが、成長著しい半導体株ですので、NISAの成長投資枠で前もって購入していくというのは手かと思います。今回ご紹介する5銘柄は、日経半導体株価指数に採用されている銘柄ですが、東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業<4063>SUMCO<3436>レーザーテック<6920>…といったメジャーな半導体銘柄ではありません。

 時価総額が大きく外国人投資家が積極的に売買している銘柄は、ある意味出来上がっている銘柄ですが、ここから中長期投資を考えるのであれば、「これって、半導体関連?」というようなニッチな銘柄の方が将来性はあると考えます。

 こうした銘柄は、東京エレクトロンなどと違って時価総額は小さく知名度はそこまで高くない「出遅れ半導体関連銘柄」と言えます。

 今回の5銘柄の選定ポイントは下記の二つです。

まだ間に合う!日本の半導体関連・出遅れ株5選【選定ポイント】
・日経半導体株指数の採用銘柄
・「これって、半導体関連?」というニッチな銘柄

銘柄名 証券コード 株価(円)
(3月27日終値)
ポイント
日本化薬 4272 1,341 半導体市場の改善期待でファインケミカルズ事業も回復か
トリケミカル
研究所
4369 4,945 半導体向け絶縁膜関係用材料に復調の兆し
ADEKA 4401 3,253 2025年3月期は先端用半導体材料の拡大が業績のけん引役に
太陽HD 4626 3,405 半導体パッケージ基板用のソルダーレジストが業績のけん引役に
フェローテック 6890 2,966 2026年3月期には営業利益増益の可能性も

日本化薬(4272)

 医薬関連銘柄のイメージが強いですが、ファインケミカルズ事業では、主力のエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂の総称)が基板・封止材向けで半導体関連部材に使用されています。

 半導体関連部材の市況回復は遅れていましたが、半導体市場の縮小には底打ちの兆しが見られ、2024年後半から市況が改善するとの見通しですので、2024年3月期はさえなかったファインケミカルズ事業も今後回復する可能性はあります。

トリケミカル研究所(4369)

 生活に欠かせないスマホやカーナビ・AI家電などのエレクトロニクス産業の重要なパーツである半導体向け絶縁膜関係用材料などを製造しています。

 世界的には、スマホやパソコンに使われるロジック半導体はすでに回復基調に入っているほか、メモリー向け半導体も2024年5~7月ごろから回復感が顕著となるため、同社の業績もこれから持ち直すとの見通しです。

ADEKA(4401)

 パンやケーキに使用されるマーガリン(リスブランド)や農薬関連が主力事業ですが、サムスン電子や台湾企業を顧客に先端半導体材料も手掛けている中堅化学メーカーです。

 2024年3月期はマーガリンを主力とする食品事業が業績のけん引役となりそうですが、2025年3月期は先端半導体材料の拡大が業績のけん引役となる見通しです。

太陽HD(4626)

 エレクトロニクス事業では、半導体パッケージ基板向けのインキなどを展開しています。2010年に太陽インキ製造から社名変更し、2017年からDIC(4631)の持分適用会社となっています。

 2025年3月期は、エレクトロニクス事業を中心とした業績拡大が続くと期待されており、特に半導体パッケージ基板用のソルダーレジスト(絶縁膜のインキ)は、過去5年間で売上高が2.0倍(エレクトロニクス事業での売上構成比は33%)と存在感を高めていることから、今後も業績拡大のけん引役となりそうです。

フェローテック(6890)

 半導体ウエハ関連や半導体設備向けの部品などを製造しています。現在、中長期的な成長に向けて世界各地で生産拠点の整備を進めているため固定費の負担が増加。足元のEV(電気自動車)市場の変調や生成AIの半導体設備投資需要の縮小に伴い、売上高も伸び悩んでいます。

 ただ、今後の半導体設備投資需要の回復や、中国半導体業界における活発な投資動向、同社のマレーシアや日本国内の工場展開、生成AI関連向けサーモモジュールの成長などを考慮しますと、2026年3月期営業利益が増益に転じる可能性はあると考えます。