「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第19回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

今日のクイズ:個別株と日経225、運用成果が良いのはどっち?

<クイズ>投資資金100万円を使って日本株に投資することを決めました。日経平均株価(225種)に連動した値動きをするインデックスファンドを買うか、東証プライム上場のA社株式を買うか、さんざん迷った末、A社株を選びました。

 1年後の投資成果について、A社株に投資して良かったと言えるのは、次の【1】、【2】のケースのうち、どちらでしょうか?

  1. 1年後にA社株は5%上昇、日経平均は10%上昇
  2. 1年後にA社株は5%下落、日経平均は10%下落

年金運用のPLAN→DO→SEE

 正解をお伝えする前に、私がファンドマネージャー時代に、年金運用を担当していた時の経験をお話しします。今日のクイズに関係する話です。

 私は、25年間、日本株のファンドマネージャーを務めてきた経験があります。公的年金や投資信託、海外ファンドの日本株運用を担当してきました。

 私が担当していたのは、アクティブ運用ファンドです。日経平均などの株価指数に連動することを目指して運用するインデックスファンドではありません。インデックスファンドを上回るパフォーマンスを挙げることを目指す運用でした。そのために、社内のアナリストチームと共同でパフォーマンスの良い銘柄を選別するための調査に明け暮れていました。

 私が担当していた年金ファンドでは、3カ月ごとに運用報告会がありました。過去3カ月の投資成果が良かったか悪かったかデータを示し、その要因を報告します。どういう銘柄・どういう投資戦略が勝ちにつながったか、あるいは負けにつながったか説明します。最後に、今後の見通しも説明し、年金基金の担当者の質問に答えます。それを3カ月ごとに繰り返していました。

 運用計画で、「どのようにインデックスに勝つか」プラン(PLAN)を示し、それを実行(DO)し、その結果を振り返り(SEE)、報告していました。このPLAN→DO→SEEのサイクルを3カ月ごとに繰り返し、期待通りの成果が挙げられていれば、いつまでも運用担当を続けられました。

 何年も続けてインデックスに負けると、解約されました。私は、幸いにしてインデックス(配当込みTOPIX(東証株価指数))に勝つ運用を続けられたので、長く担当を続けることができました。

クイズの正解:良かったのはインデックスを上回った【2】

 A社株に投資して良かったと言えるのは、【2】のケースです。

【2】1年後にA社株は5%下落、日経平均は10%下落

 日経平均インデックスファンドに投資していれば10%下がっていたのに、A社株に投資していたから5%の下落で済みました。

 投資専門用語で、インデックスを上回るパフォーマンスを挙げることを「アウトパフォーム」と言います。A社株は、日経平均が10%下がる時に、5%しか下がらないことで、日経平均を「アウトパフォーム」しました。

 一方、【1】はA社株への投資が失敗したケースです。日経平均が10%上がっているのに、5%しか上がっていないからです。このようにインデックスを下回るパフォーマンスになることを「アンダーパフォーム」と言います。【1】ではA社株が日経平均をアンダーパフォームしました。

 先ほど、私は、3カ月ごとに年金基金に運用報告をしていたとお話ししました。3カ月ごとに「勝ったか負けたか」報告していました。ここで言う「勝った」は、「アウトパフォーム」のことです。

 日経平均やTOPIXが10%下がっているときに、運用ファンドが5%しか下がっていなければ「勝った」になります。「負けた」は「アンダーパフォーム」のことです。たとえファンドが10%値上がりしていても日経平均が15%上がっていれば、「大負け」となります。

ご自身の考え方を振り返ってください

 クイズが正解だった方も不正解だった方も、ご自身の過去の投資をどう評価していたか、振り返ってください。

 ひょっとして、買ってから値上がりしている銘柄は全て成功、買ってから値下がりしている銘柄は全て失敗と考えていませんでしたか? もし、そういう考え方をしていたのならば、今日からその考えを改めてください。そうしないと、良い銘柄を選ぶ目が養われません。

 短期的な株価変動を気にせず、良い銘柄を選んでじっくり長期投資することが、長期投資で良い成果を挙げる鍵です。株価が上がったら良い銘柄、下がったら悪い銘柄という考えでは、銘柄評価を間違えます。

 良い銘柄・悪い銘柄の評価基準を、「アウトパフォーム」「アンダーパフォーム」に置き替え、ご自分で選んだ銘柄の勝ち負けを正しく判断するようにしましょう。そして、1年おきくらいに、PLAN→DO→SEEを続けることで、銘柄を評価する目が養われます。

個別株に投資するメリットとデメリット

 最後に、個別株投資のメリットとデメリットについて、まとめます。個別株に投資すれば、大成功して大きなリターンが得られることも、大失敗して大きな損失をこうむることもあります。以下の式を理解してください。

【個別株の投資成果】=【市場平均の投資成果】±【個別株要因による投資成果】

 上記で、【市場平均の投資成果】とは、日経平均インデックスファンドや、TOPIXインデックスファンドの投資成果のことです。【個別株要因による投資成果】とは、インデックスファンドとのパフォーマンスの差です。【個別株の投資成果】はプラスのことも、マイナスのこともあります。

 日本株で個別株に投資したら、日経平均インデックスファンドなどとパフォーマンスを比較する習慣を身に付けたら良いと思います。1年ごとに比較してみましょう。

 日本株への投資資金が100万円あるとして、それを年初から年末まで日経平均インデックスファンドに投資していたときに得られるリターンを計算してください。それと、ご自分が1年間に個別株の売買で得たリターンを比較すれば良いです。

 個別株投資で得られるものはいろいろあります。個別株の投資成果がプラスであれば、その効果は一目瞭然ですが、それだけではありません。たとえ個別株の投資成果がマイナスでも得るものはあります。

 個別株投資を通じて勉強したことは、たとえ投資成果がマイナスでも無駄ではありません。さまざまなビジネスに役立つ可能性があります。チャレンジしたいと思う方は、積極的にトライしたら良いと思います。