1.日本の経済成長と株価上昇の関係
日本の高度成長時代は、国民が豊かになり、株価も大きく上昇した
前回は「長期的成長に乗るインド株式市場へ長期投資!」というタイトルでインド株式市場について分析しましたが、今回はインド株上昇の原動力と考える「インド経済の長期的成長の可能性」を分析します。そして、その成長パターンが「新興国らしい成長」という視点で、日本と中国を参考に考えてみます。
図表1は日本株(TOPIX(東証株価指数))と日本の1人当たりGDP(国内総生産)の推移です。高度成長時代などの1人当たりGDPが順調に伸びていた時代には、日本株も順調に上昇してきたことが分かります。
そして、1人当たりGDPが伸びていた背景には、為政者たちの存在があり、彼らが掲げるスローガンに多くの国民が賛同し、みんながその気になって働いた結果が経済成長だったと考えています。
例を挙げると、1950年代後半から1960年代にかけて、岸信介首相や池田勇人首相などが「所得倍増計画」を掲げたことや、田中角栄首相が「日本列島改造論」を掲げて高速道路・新幹線などの高速交通網の整備を筆頭に不動産開発が進んだことが経済を押し上げました。こうしたスローガンに国民が一致団結できたことが重要だったと思います。
[図表1] 日本株(TOPIX)と日本の1人当たりGDPの推移
2.中国の経済成長と株価上昇の関係
中国の高度成長時代も、国民が豊かになり、株価上昇をもたらした
日本経済を追いつけ追い越せと成長してきた国にお隣の中国があります。中国の経済成長と株価の関係はどうだったでしょうか?
図表2は中国株(香港ハンセン指数)と中国と香港の1人当たりGDPの推移です。中国は香港周辺の広東省地域が先んじて成長し、それを上海や北京などの1級都市が追いかける構造だったため、中国と香港の1人当たりGDPを表示しました。香港の成長→広東省の成長→他の1級都市の成長→中国全体の成長という流れで成長し、株価も上昇してきたことが分かります。
そして、1人当たりGDPが伸びていた背景には、日本と同様に為政者たちの存在があり、掲げるスローガンに多くの国民が賛同し、みんながその気になって働いた結果が経済成長だったと考えています。
例を挙げると、中国の場合は何といっても鄧小平です。最高指導者の立場にいたのは1978~1989年ですが、その後、1997年に没するまで中国の実質的な最高指導者でした。
毛沢東政策を転換し、「先に豊かになれる一部の人は、存分に豊かになってもいい」という鄧小平理論(先富論)を発表、改革開放路線を進め、1979年には深センなどの経済特区制度(関税免除などで外資誘致)を開始しました。
経済特区の成長が中国経済をけん引する形で中国経済全体が発展し、全ての国民が豊かになろうと前向きになったことは中国の成長の最大の原動力だったと思われます。
[図表2] 中国株(香港ハンセン指数)と中国と香港の1人当たりGDPの推移
3.インドは新興国らしく経済成長できるのか?
インド経済はモディノミクスが押し上げる
図表3はインド株(Nifty50指数)とインドの1人当たりGDPの推移です。
インドは他の新興国同様に農業などの第1次産業を国家の基盤として成長してきましたが、その後の経済発展の経路は日本や中国と異なり、ITソフトウエア開発やコールセンター運営などの第3次産業が足元までの経済成長を支えてきました。日本や中国は工業などの第2次産業が成長エンジンでしたが、インドはそれを飛び越えて第3次産業が先に発展しました。
しかし、日本の人口減少、昨今の中国情勢などから、世界の巨大製造業はポスト中国としてインドに白羽の矢を立て始めていることに加え、インドの為政者であるモディ首相も「メイク・イン・インディア」構想を掲げ、第2次産業を経済の成長エンジンとして重視する政策を掲げています。
インドではモディ首相の支持は高く、多くの国民がモディノミクスに乗って成長しようと一致団結しており、過去の日本や中国の新興国としての成長パターンと同じような成長経路をたどろうとしています。
昨年の1人当たりGDPは約2,600米ドルで、前掲グラフで見ると日本の1970年代初めの水準です。インド経済の成長はまさにこれからであり、長期的な成長が期待できると考えています。
[図表3] インド株(Nifty50指数)とインドの1人当たりGDPの推移
<関連銘柄>
NEXT FUNDS インド株式指数・Nifty50連動型上場投信(証券コード:1678)
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