「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第17回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
今日は、新興企業向けの東証グロース(旧東証マザーズ)市場に上場する小型株への投資戦略に関するクイズを出します。
今日のクイズ:東証グロース市場250指数のチャートはどっち?
<クイズ>東証グロース市場250指数と、日経平均株価(225種)のチャートを掲載しています。東証グロース市場250指数は、チャートAとBのうち、どちらでしょうか?(東証グロース市場250指数・日経平均とも2016年末の値を100として指数化しています)
<チャートAとチャートB:2016年末~2024年2月19日>
東証グロース市場250指数とは
東証グロース市場250指数といっても、何のことか分からない方もいるかもしれません。東証マザーズ指数といった方が、なじみのある方が多いでしょう。
東証グロース市場250指数は、JPX総研(日本取引所グループ傘下の1社)が、東証マザーズ指数を改編して作った指数です。東証マザーズ指数との連続性が保たれるように何回かに分けて銘柄入れ替えをして、2023年11月6日に「東証グロース市場250指数」と名称を変更しました。
東証グロース市場250指数は東証マザーズ指数との連続性が保たれており、東証マザーズ市場が創設された1999年11月までさかのぼってデータが提供されています。
長期の資産形成で東証グロース市場に投資する必要はあるか?
今日のクイズの正解をお教えする前に、そもそも長期の資産形成で日本株に投資する際、東証グロース(旧東証マザーズ)株に投資する必要があるか、という点について、私の考えをお伝えします。
私は、日本株に投資する際、日経平均インデックスファンドや、TOPIX(東証株価指数)インデックスファンドに投資するだけでも十分と思います。あえて東証グロース市場の個別株まで、投資範囲を広げる必要はありません。
というのは、東証グロース市場は初心者向けではないからです。ハイリスク・ハイリターン銘柄が多く、うまくいけば大きなリターンが得られますが、銘柄選択で失敗すると大きな損失を被ることもあります。
とはいえ、ぜひ応援したい企業やよく知っている企業に、長期投資したいと思うならば、投資をしてもいいと思います。
つまり、あえて投資する必要はないものの、きちんと事業内容や財務状況を調べてチャレンジするならば、投資してみてもいいと思います。
東証グロース市場の特色
東証マザーズ(現東証グロース)市場は、成長が期待される新興企業に早めに上場の機会を与えて資金調達の場をつくる目的で、1999年11月に創設されました。新興企業でも高い成長が期待できるならば、創業以来、黒字を計上したことがなくても上場できる場合があります。
投資家から見ると、成長が期待される新興企業に、従来の上場よりも早いタイミングで投資できるメリットがあります。一方、早めに上場したものの、期待された成長が実現せずに上場後に株価が暴落する銘柄も多数あります。
過去に東証マザーズからスタートして大きく成長した銘柄に、エムスリー(2413)、MonotaRO(3064)、サイバーエージェント(4751)、ZOZO(3092)、ディー・エヌ・エー(2432)などがあります。いずれも今は、最上位の東証プライム上場銘柄です。
一方、暴落して上場廃止になった期待外れの銘柄もあります。インターネット総合研究所、旧ライブドアなどです。東証グロースは当たり外れが大きい、高リスクの市場です。
クイズの正解:日経平均に劣後するチャートB
クイズの答えをお伝えします。チャートBが東証グロース市場250指数です。チャートAは日経平均です。正解を入れたチャートを、改めてご覧ください。
<日経平均と東証グロース市場250指数の動き:2016年末~2024年2月19日>
2021年以降東証グロースが不振の理由
チャートをご覧いただくと分かる通り、2021年の秋をピークに、東証グロース(旧東証マザーズ)市場は大きく値下がりしています。日経平均が大きく上昇しているのに、真逆の動きです。
不振の最大の理由は、東証グロース市場上場のインターネット企業やバイオ企業の利益が期待外れとなったことです。東証グロース上場のネット関連株やバイオ関連株が2020年に大きく上昇しています。コロナ禍で人々が外出できなくなり、ネットの中だけで活動を完結する動きが加速したためです。
こうした異常状態にあって、東証グロース上場のネット企業には、創設以来、初めて黒字を計上する企業も増えました。待ちに待った高成長がいよいよ実現したと期待を抱かせました。2020年はコロナに対する不安から、バイオ株も買われました。
ところが、2021年以降、東証グロース市場にとって投資環境は暗転しました。コロナ禍からのリオープン(経済再開)が少しずつ進むにつれて、人々の活動はネットからリアル経済に戻りました。一時的に黒字を計上した東証グロースの新興企業には再び赤字に転落する企業が増えました。
政府がかけ声をかけて推進していたDX(デジタルトランスフォーメーション)が期待ほど進まず、諸外国に比べて日本が出遅れてしまった影響もありました。
東証グロース市場の復活はあるか?
東証グロース(旧東証マザーズ)株に投資するとき、注意しなければならないことがあります。私がファンドマネージャー時代に東証マザーズ株に投資するときに肝に銘じていたことです。
私がファンドマネージャー時代に、東証マザーズ株のトレーディングで気を付けていたことは「波に乗る」ことです。銘柄選択はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのが波に乗ることです。
というのは、東証マザーズ株は上がるときも下がるときも値動きが極めて大きく、一方通行になることが多いからです。以下のチャートが示す通り、上がる時はいい銘柄も悪い銘柄も上がり、下がるときはいい銘柄も悪い銘柄も下がる傾向があります。一生懸命、企業調査をしていい銘柄を選んだつもりでも、下げ相場では、なすすべもなく下がります。
2021年以降、いい銘柄も悪い銘柄もなんでも下がる相場が続いた後、2024年に入り、やっと少しだけ底打ちしつつあります。少しだけ投資してみてもいいかと思われる環境にはなってきています。
<東証グロース(旧東証マザーズ)の月次推移:2016年1月末~2024年2月>
ただし、初心者が投資すべき市場だとは思いません。東証グロース市場の動きから、少しだけ底入れの動きがあるものの、日本からネット関連の高成長企業が現れにくい環境に変わりはないからです。
結論として、2020年のような小型グロース全盛期が復活する兆しはまだ見えていません。いつか復活する日は来るだろうと期待はしていますが、いつなのか、まったく予測できません。東証グロースに投資する場合は、よく知っている企業を少しだけ試し買いするにとどめた方がいいと思います。
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