特に初心者には難解な証券税制

 令和5年分の確定申告の受付が2月16日より始まります(還付申告の場合は年初より受け付けています)。提出期日は3月15日までとなっていますので、申告が必要な方は忘れずに行うようにしましょう。

 さて、株式投資に絡んで、確定申告が必要かどうかについて明確に理解している個人投資家の方は極めて少ないのではないかと思います。それほどまでに証券税制は難解なものですが、今回のコラムでは代表的なパターン別に、確定申告が必要になるのかどうかを解説していきたいと思います。

パターン1:令和5年に売却損が生じているとき(過去から繰り越す損失はない)

 まず令和5年分の株式などの売却損がある場合、令和5年中に受け取った配当金と相殺します。売却損と配当金の相殺をするためには確定申告が必要ですが、源泉徴収ありの特定口座かつ配当金受け取り方法として株式数比例配分方式を選択している場合は、証券会社にて相殺を行ってくれます。

 その上で、残った損失につき翌年以降に繰り越すために確定申告が必要となります。損失の繰り越しは最大3年間できますので、令和5年分の損失は令和8年まで繰り越すことができます。

 なお、繰り越す際は毎年確定申告が必要です。令和5年分の損失繰越のために令和5年分の確定申告をしただけでは、令和6年までしか繰り越せません。令和7年まで繰り越したいのであれば令和6年分の確定申告が、令和8年まで繰り越したいなら令和7年分の確定申告が必要ということです。

 損失が生じているため、損失繰越の確定申告をしなくても、税務署にとがめられることはありません。でも、単純に税金面で損をする可能性があるので、確定申告をするという選択がベターです。

パターン2:過去に確定申告で損失を繰り越しているとき

 具体的には、令和2~4年分の上場株式等売却による譲渡損失につき、確定申告をして繰り越している場合です。

 過去の損失は、令和5年分の売却損益と配当金を合計してプラス(利益)になっていれば相殺ができます。令和5年分の確定申告にて、過去(令和2~4年分)から繰り越した損失と相殺することにより、税額を軽減することができます。

 令和5年分の売却損益と配当金の合計がマイナス(損失)の場合は、令和2~4年分の損失と相殺できる利益がありませんので、確定申告にて令和3年分、令和4年分の損失を繰り越すとともに、令和5年分の損失も繰り越します。

 なお、損失の相殺は古いものから順に行われます。上場株式などの損失の繰り越しは最大3年間と定められていますので、令和2年分の損失は、令和5年分の利益と相殺できなければこれ以上繰り越すことはできず、切り捨てになります。

パターン3:令和5年に利益が生じていて、過去から繰り越している損失もないとき

 令和5年の売却損益と配当金の合計がプラスで、過去から繰り越している損失がない場合のうち、まずは「売却損+配当金」を相殺した結果プラスになった場合を考えます。

 売却損があり、配当金と相殺したらプラスになるケースは、上のパターン1で説明した通り、源泉徴収ありの特定口座かつ配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式としている場合は、相殺につき確定申告は不要です(証券会社が行ってくれます)。

 それ以外の場合は、売却損と配当金の相殺をするためには確定申告が必要となります。

 また、売却益と配当金があるような場合は、源泉徴収なしの特定口座もしくは一般口座で生じた売却益であれば原則として確定申告が必要です。源泉徴収ありの特定口座の場合、確定申告は不要ですが、確定申告した方が有利な場合は申告することもできます。

 配当金については、確定申告せず、源泉徴収のみで終わらせることもできますが、他の所得が少ないなどの理由で確定申告をした方が有利な方は、確定申告すれば配当金から源泉徴収された税額が還付される可能性があります。

 なお、令和5年分以降は、配当金や、源泉徴収ありの特定口座で生じた売却益を確定申告する場合、住民税も同様に確定申告する必要があります。確定申告することにより税金の還付が受けられる一方、国民健康保険料などの負担が増えることになりますので、確定申告した方が良いのか、しない方が良いのかを事前にシミュレーションしておくことをお勧めします。