トウシル:それにしても、給与以外につき23.5万もの配当が入ってくるというのは、インフレの昨今、とても心強い状況ですね。こんな高配当ライフをこれから始めたいという方は、どのようなステップで取り組めばよいでしょうか。
長期株式投資:まずは今すぐ投資を始める、ということにつきますね。2024年、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートして、投資環境がよくなり、初心者の方でも投資を始めやすくなりました。
5,000円、1万円といった、ほんの少額でもいいので、ひとまず投資を始めてくださることが重要だと考えています。
また、コツコツと勉強しながら取り組むのが大前提であり、最初から全てうまくいくとは限らないことを頭に入れておきましょう。
トウシル:初心者はどんな銘柄を選べば失敗しにくいのでしょう?
長期株式投資:投資先を選ぶ際、判断材料の一つとなるのは、その業界のトップクラスの会社です。絶対ではありませんが、20年後にもその会社が残っているだろうとイメージしやすい会社をピックアップします。
例えばメガバンクや総合商社の大手なんかは、おそらく20年後も残っていそうですよね。ピックアップしたあとは、会社の方針を確認し、連続増配するor減配しないかどうかを見ます。その上で、株価ができるだけ安いときに買うことが大事です。
2023年5月に出した私の著書では、投資開始1カ月目にはこれ、2カ月目にはこれといった具合に、投資のステップを書いています。初心者の方は、まずこのまねをするところから始めてもいいでしょう。まずはまねして有力企業の株を少しずつ買ってみて、相場に慣れていく。慣れてきたら、自分の独自色を出していけばいいでしょう。
トウシル:投資をする上で、目標にすべきなのは株価の上昇?リターンの大きさ?どちらでしょう?
長期株式投資:リターンを上げるのは甘くはありません。そのため、リターンを上げることを目標にするのではなく、まずは相場に慣れることを目標としたほうがいいでしょう。
はじめは、損を出しにくい、負けにくい手法で、とにかく続けていくことを重点においてください。最初から「これで完璧」はありませんし、そもそも投資には「正解」が存在しないので、ドルコスト平均法を使って少しずつ買いながら、相場に慣れていくといいでしょう。
トウシル:「投資に正解はない」は、いい言葉ですね。
長期株式投資:はい。正解は個々人によって異なります。誰かの成功をマネして、自分が本来やりたかったことを見失わないようにしてくださいね。
そのうち相場に慣れてきたら、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった投資指標を見ることにも慣れてください。これらは、株が現在、割高か、割安か、を示す指標です。指標的に割安であることを確認して「安いときに買う」ことができるようになっていってください。
とはいえ、そう多くのことをやる必要はありません。基本的なところを理解しておけばいいのです。一つは、自分がイメージした配当利回りに納得できるかどうか。
もう1つはEPS(1株当たり利益)を見て、業績の安定度に納得できるかどうか。
業績が安定していれば投資指標の精度が一定高くなります。そうすると判断が楽になり、PERが低いことは、いまの株価が割安だという意味になるんです。
割安になっている理由が、業績悪化を織り込んでいるからではなく、本質的に安くなっているのかどうか、と正しい判断ができるようになると思います。なお、PERとPBRは過去5年ほどのレンジがあるので、そのレンジを見て、低いところで買えるようになるところまでいければ、ほとんど負けなくなると思います。
トウシル:その域に達するまで、どれくらいの期間がかかりそうでしょうか。
長期株式投資:1年もかからないと思いますよ。基本的な大事なところだけ抑えれば、ここまではいけると思います。まとめますと、踏むべきステップは以下の3つです。
- 相場に慣れる
- ポイントを勉強する
- 配当利回り、EPSの安定性、PERの仮説を立てて投資する
トウシル:勉強をしてから始めるのではなく、やりながら勉強していくことが大切なんですね。
長期株式投資:そうですね。スポーツでもそうですが、何かをやるには慣れが必要なので、まずは始めてみなければ始まりません。ただ、何も知識を入れずにやみくもにやるのでは頭打ちになります。技術を上げるには、勉強も必要です。投資もそれと同じだと思っています。
今では、1株が500ミリリットルペットボトル1本分と同じ価格で買えるような株もありますし、配当金だけではなく、株主優待を得られるものもあります。そうしたものから1株買ってみて、経過を観察してみましょう。1日1株買い、株主優待をもらえる100株保有を目指すのもいいと思いますよ。1株ずつであれば、そんなに大損はしませんしね。
若い方は、個別株だけでなく、インデックス投資の比率を多めにして平均的なリターンを取りつつ、個別株投資を始めて配当金を得て、企業活動への理解を深めるのもいいんじゃないでしょうか。
投資のメリットは資産形成だけではありません。投資をするために企業について学び、各企業の戦略を知ることは、自身の仕事にも生かせるところがあるでしょう。そういった視点で投資をするのもありだと思います。
トウシル:長期株式投資さんの現在のご活動内容について教えてください。
長期株式投資:2023年3月末に会社を辞め、独立しました。その翌月から、オンライン投資教室を1年予定で開き、受講生に投資を教えています。これがこの1年のメイン活動ですね。もうすぐ1年がたち、一区切りという感じです。
オンライン投資教室以外にも、依頼を受けてセミナー講師をしたり、2冊目の著書を5月末に出したりといった活動を行ってきました。X(旧Twitter)やブログでの発信活動も会社員時代から継続して行っています。
トウシル:メインのご活動となったオンライン投資教室は、初心者に向けたものなんですか? 受講者の年代層はどれくらいなのでしょうか。
長期株式投資:そうですね、初心者を対象としています。詳細な年代層はわからないのですが、40代、50代、60代といった少し上の層の方が多い印象がありますね。会場でのセミナーでは、40代参加者が若くなるぐらい、50代60代が多いです。
個人的に、このあたりの年代の方への投資情報の発信が不足していると感じています。20代30代の方は時間に余裕があるので、インデックス投資で資産形成をしていけますが、40代後半以降の方は、そう悠長なことを言っていられる時間がありません。
それでも、よく目につくのは「初心者はまずインデックス投資を」といった情報なんですよね。40代後半以降のそう少なくない人が求めるのは、生活費への充当を目的とした配当金を受け取るための投資だと思うのですが、需要に対して応えられる情報発信が少ないと感じています。それが約1年、オンライン投資教室をやってきて思ったあらためて得た気付きでした。
トウシル:オンライン投資教室は2年目以降も続けられるのでしょうか。
長期株式投資:いずれはやろうと思っていますが、すぐに2期生を募集する予定はありません。1年目で見えてきた課題を整理して、準備が整ったらいずれは、といった感じですね。
投資は受験勉強のように点数で成果を判断することができません。オンライン講座となると、より実力を測るのが難しいんですね。1年近く続ける中で、受講生の質問内容の質、レベルでスキルアップできているかどうかを見てきました。
見ている限り、10カ月勉強すれば、企業を見るところ含め、投資に必要な部分はある程度身に付けられるのではないかと感じています。やってみて良かったです。
トウシル:今後の展望についてお聞かせください。
長期株式投資:まずは3月で一区切りとなる1期生のオンライン投資教室を最後までやり切ることですね。その後は、ブログとXで引き続き情報発信を定期的に行っていきます。
投資に関しては、これまで通り1日1株、2株の投資を毎営業日続け、Xで記録を残していきます。
日本株もかなり買われていて投資しづらい環境になりつつあるのかなと思いますが、企業の業績が上がって1株利益が伸びれば、株価の水準が割安になるという発想もできますので、5月の決算を注視していきたいと思っています。原理原則は今まで通り、配当利回り・EPS・PERを基準に続けていきたいですね。
トウシル:最後に、読者にメッセージをお願いいたします。
長期株式投資:初心者の方には、まず始めていただきたいと思っています。新NISAも始まりましたし、試しに買ってみることに価値があると伝えたいです。
これを読んでいる方は投資に興味がある方だと思うので、その興味をぜひ一歩踏み出す行動に変えてもらいたいですね。その後、負担にならない範囲で少しずつ投資を続けてもらえたらと思います。
1株200円で買えますよと伝えると、1株200円の株を買うことに意味があるのかと聞かれることがあるのですが、まず接点を持つことが大切で、その一歩は200円以上の価値があると思っています。1株からならそこまで大きな負担はないので、ぜひ一歩踏み出してみてください。
>>前編「2023年の受取配当額は378万円!コツは連続増配or減配しない日本株銘柄選び 長期株式投資さんインタビュー[前編]」
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