想像以上の盛り上がりを見せている新NISA

 今回が2024年最初の税金コラムとなります。本年も個人投資家の皆さまに役立つ税金や相続などの知識・情報の提供に努めてまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 さていよいよ令和6年になり新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしました。先日は、全世界株式へ投資するタイプのインデックス・ファンドの1日の資金流入額が1,000億円に達したというニュースもあり、筆者の想像以上に新NISAの注目度、そして実際に新NISAを活用している個人投資家が多いことを強く感じているところです。

 本コラムをご覧いただいている皆さまの中にも、新NISAで早速個別銘柄を買ったり、つみたて投資枠での積み立てを始めた方も多いと思いますが、新NISA口座を使われているのはご自身だけでしょうか。

 利益が生涯非課税というこの新NISA制度、ご自身だけでなくご家族皆さまで使わない手はない、と筆者は思っています。

贈与を活用して家族全員で新NISA

 ご自身だけが新NISAを使っているという方は、例えば独身でいらっしゃる方であったり、ご家族には投資資金の持ち合わせがないので自分だけやっている、というケースもあるでしょう。

 もし、ご家庭を持たれている方であって、ご自身の金融資産に余裕があるのであれば、ご家族についても新NISAを活用してみてはいかがでしょうか。

 例えば家族4人のご家庭であれば、生涯非課税枠は1,800万円×4人=7,200万円となり、かなりインパクトのある金額を非課税で運用することができるからです。

 仮に運用が順調で、1,800万円の元手を5,000万円に増やすことができたなら、これが家族4人ですから5,000万円×4人=2億円という金額を家族で手にすることになるのです。

 その際、ご家族に投資資金がなければ、それを贈与する方法があります。

 年間の投資限度額はつみたて投資枠・成長投資枠合計で360万円ですから、毎年360万円ずつご家族に贈与すれば、最短5年間で1,800万円×ご家族の人数の非課税枠を活用することができます。

新NISA資金を贈与した場合の贈与税額は?

 仮に、ご自身のほかに妻、長男、長女の4人家族とします。

 もし妻、長男、長女の3人に、年間の投資可能額360万円ずつ贈与すると、贈与税は1人あたり27万5,000円です。

 この贈与税負担についても面倒を見てあげるのであれば、393万円ずつ贈与すれば贈与税が32万4,500円で、税金を差し引いた残額がほぼ360万円になります。

 もちろん、年間のマックスの投資可能額ではなく、例えばつみたて投資枠の120万円を贈与することにすれば、贈与税は1万円で済みます。

 年間の贈与額がそれほど大きくありませんので、贈与税も10%以下に収まります。単に現金を贈与するだけでも、多額の財産を持つ方にとっては相続税対策になるのですが、せっかくならその贈与資金を新NISAで運用して、より大きな果実を目指すのも一案ではないでしょうか。

相続時精算課税制度を活用する方法も

 贈与時の税負担を抑えたいのであれば、相続時精算課税制度を活用する方法もあります。2,500万円までの贈与は無税で行え、上記のような贈与税の発生もありません。

 また、令和6年以降は、相続時精算課税も年間110万円の基礎控除が設けられ、基礎控除の額は相続時に戻し入れなくてもよいことになりました。

 ただし、一度相続時精算課税制度の適用を受けたら、暦年課税による贈与(通常の贈与税の対象)に戻ることはできませんし、基礎控除を除いた残額は相続時に相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

 暦年課税で贈与するか、相続時精算課税で贈与するかは、よくシミュレーションなどで検討した上で、できれば税理士にもアドバイスをもらいながら検討することをお勧めします。

 なお、贈与を実行する際は、それが課税当局(税務署など)に対して立証できるよう、適切な手順を踏んで行うようにしてください。贈与が成立していないと課税当局に指摘されると財産の移転が認められず、いわゆる「名義財産」として自身の相続税の課税対象となってしまう恐れがあるからです。

 この点につきましては別の回で詳しくお話する予定です。