ふるさと納税について私が解説しているレポート、
「ふるさと納税:生活防衛型に注目、水産物「緊急支援品」や「訳あり」も人気」を多数の方にお読みいただき、ありがとうございます。
今年も12月になりました。今日はふるさと納税「ワンストップ特例」を使う方が、やってしまう四大失敗について、解説します。手続きでミスをして、非課税の恩恵を受けられないことがないように、気を付けましょう。
ふるさと納税とは
ふるさと納税は、自分が応援したい市区町村に、実質2,000円の負担で、寄付ができる制度のことです。寄付した自治体から、返礼品が贈られてくる魅力もあります。
年収などの条件によって決まる上限額の範囲内で寄付をすれば、寄付額から2,000円を差し引いた金額だけ、ご自身の納税額(所得税および住民税)が減ります。
例えば、実質2,000円の負担で5万円まで寄付できる方の場合、5万円を応援したい市区町村に寄付し、寄付金控除の手続きをすると、2,000円を差し引いた4万8,000円だけ、ご自身が納めるべき税金が減ります。
5万円寄付すると、4万8,000円分、納税額が減るわけですから、実質2,000円の負担で5万円の寄付を行ったことになります。
ただし、ふるさと納税をしても、寄付金控除の手続きをしないと納税額は減りません。「ふるさと納税をしたのに寄付金控除の手続きをしなかった」、あるいは「寄付金控除の手続きをしたつもりだったが、やり方を間違えていたために無効だった」が、よくある失敗談です。
ふるさと納税の寄付金控除手続きには2通りあります。
【1】確定申告で、ふるさと納税「寄付金控除」手続きをする。
【2】寄付する自治体数が五つ以内ならば、「ワンストップ特例制度」を利用する。
寄付する自治体数が五つ以内ならワンストップ特例制度が使える
「確定申告で寄付金控除の手続きをしてください」と言われても、確定申告した経験がない方には、とても難しいことです。そこで確定申告しなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受ける方法が用意されています。それが、「ワンストップ特例制度」です。
1年間に「ふるさと納税」で寄付する自治体の数が五つ以内ならば、確定申告をしないでも、ふるさと納税の寄付金控除を受けることができます。
それが、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」です。ふるさと納税を行う際に、寄付を行う自治体に、「ワンストップ特例の適用を受ける申請書」を提出する必要があります。
ワンストップ特例を使う場合は、住民税だけで「ふるさと納税額-2,000円」分、納税額が減ります。
先に例に挙げた、5万円まで実質2,000円負担で寄付できる方の場合、5万円をワンストップ特例で寄付すると、確定申告しないでも、4万8,000円、ご自身が納める住民税が減ることになります。
送付方法は、自治体により異なります。封筒に入れて送ってくることが多いが、返礼品の中に一緒に入っていることもあります。送られてきた申請書に必要事項を書き込み、「マイナンバー」関連の必要書類を添付して返送すれば手続き完了です。
返送用封筒は、入っている場合と入っていない場合があります(それも自治体により異なります)。入っていない場合は、自分で返送用封筒を作成して、返送してください。
たまに「簡易書留で返送してください」と指示してくる自治体もあります。その場合、簡易書留の郵送料を負担して返送する必要が生じます。
寄付した翌年の1月10日までに、申請書が自治体に着かなければならないことに注意してください。2023年のふるさと納税ならば、2024年1月10日までに提出してください。間に合いそうにない場合は、寄付する自治体に相談してください。
「ワンストップ特例」の四大失敗
ワンストップ特例は便利ですが、落とし穴もあります。以下、私が聞いたことのある四大失敗と、失敗してしまった時の対策をお伝えします。失敗してしまった時は、「確定申告でふるさと納税の寄付金控除を申請する」のが善後策となります。
【失敗談1】ワンストップ特例申請書を1年間で六つの自治体に出してしまった。
ワンストップ特例申請書を六つの自治体に出すと、全てが無効となります。そのまま放置しておくと、税額控除がまったく受けられなくなります。
もし間違えて今年、六つの自治体にワンストップ特例申請書を出してしまった場合、ふるさと納税の適用を受けるためには、来年2月16日~3月15日までの間に確定申告するしかありません。
確定申告でふるさと納税の寄付金控除を申請すれば、ふるさと納税全額について、きちんと税額控除が受けられます。
一つの自治体に複数回ふるさと納税を行い、複数回返礼品を受け取る場合、ワンストップ特例の申請書は、寄付する都度、提出する必要があります。同じ自治体に寄付するならば、何回寄付しても自治体の数は一つと数えられます。紛らわしいので、以下、きちんと理解してください。
★六つの自治体にワンストップ特例申請書を提出→全て無効
★四つの自治体に1回、別の一つの自治体に2回申請書を提出→提出した自治体は五つなので全て有効
【失敗談2】一部の自治体にワンストップ特例申請書を出し忘れ
一番多い失敗は、申請書の出し忘れです。1年間に五つの市区町村にふるさと納税する場合、ワンストップ特例申請書を、五つの自治体全てに出す必要があります。四つの自治体には出したが、一つの自治体に出し忘れた場合、出し忘れた自治体への寄付では税額控除が得られません。
一つの自治体に2回ふるさと納税を行い、1回しかワンストップ特例申請書を出さなかった場合は、申請書を出さなかった寄付は税額控除の対象となりません。
今年、既に五つの自治体にふるさと納税してワンストップ特例申請書を出したはずだが、「ひょっとして出し忘れたかも」と思う時、どうしたら良いでしょう。
自治体に確認する方法もありますが、それよりも簡単なのは確定申告することです。ワンストップ特例申請書を出して、かつ確定申告でふるさと納税の寄付金控除を申請すれば、確定申告が優先されます。
「ワンストップ特例申請書を出し忘れたかも」と思う人は、確定申告してしまうのが良いと思います。確定申告には、ふるさと納税の「寄付金受領証明書」が必要です。なくさないように保存しておいてください。
【失敗談3】ワンストップ特例申請書を出した後、住宅ローン税額控除(初年度)や医療費控除を受けるために確定申告した
ワンストップ特例申請書を出して、かつ確定申告をした場合、確定申告が優先されるので、ワンストップ特例申請は無効となります。確定申告しないつもりでワンストップ特例申請書を出していたのに、急に確定申告する場合は、注意が必要です。
例えば、急に医療費の金額が大きくなり、医療費控除を受けるために確定申告することになった場合、その確定申告書で、ふるさと納税「寄付金控除」も申請する必要があります。そうしないと、ふるさと納税の税額控除が受けられなくなります。
確定申告するとワンストップ特例申請は無効になることを、覚えておいてください。
【失敗談4】ワンストップ特例申請書の提出が期限に間に合わなかった
ワンストップ特例申請書は、寄付した翌年の1月10日までに自治体へ提出(必着)しなければなりません。年末ぎりぎりにふるさと納税をすると、提出が間に合わなくなることもあります。提出が間に合わなくなると、その分、税額控除が受けられません。
もし間に合わなくなってしまった時は、「確定申告」するしかありません。確定申告をすることによって寄付金控除を受けることができます。
以上、ワンストップ特例で失敗した時は、確定申告するのが基本です。確定申告でふるさと納税の寄付金控除を受ける方法を一度覚えてしまえば、そちらの方がワンストップ特例申請書をいくつも出すより楽かもしれません。
早めに一度、確定申告を経験した方が良いと思います
主たる収入が給与所得だけの方、いわゆるサラリーマンの場合、確定申告したことがない方がほとんどです。税の申告は全て年末調整で済ませているのが普通と思います。そういう方にとって、「ふるさと納税のために確定申告する」のは、とても骨が折れる仕事と思います。
それでも私は、一度思い切って確定申告した方が良いと思います。二つ良いことがあります。
【1】将来確定申告の必要が生じた時、一度やったことがある経験が生きる
サラリーマンでも確定申告の必要が生じる場合があります。住宅ローン税額控除を受ける初年度、医療費控除を受けるため、寄付金控除を受けるためなどです。
また、上場株式の譲渡損失の繰越控除を受ける場合、ゴルフ会員権で売却損が出る場合、年金受け取りが始まる場合などで確定申告が必要な場合もあります。
副業を解禁する会社が増えています。副業の所得が大きくなる時も確定申告が必要になることがあります。
一度、確定申告を経験しておくと、生涯にわたってその知識は有用と思います。
【2】税に対しての意識が高まり、認められている節税をやりやすくなる
確定申告することで、自分がどんな税金をどのような名目で取られているかよく分かるようになります。税に対する意識が変わります。
医療費控除や寄付金控除などを受けられるのに受けないで済ましてしまう人がたくさんいますが、一度確定申告を経験すると、認められている節税策はきちんと使う習慣が身につきます。
確定申告を行っている人は、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などの非課税投資制度を使う比率が高いこともアンケート調査などで分かっています。税に対する意識を高めて、必要な節税を面倒くさがらずにやる習慣を付けた方が良いと思います。
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