先週の日経平均株価(225種)の12月1日(金)終値は前週末比0.6%(194円)安の3万3,431円。先々週の前週比0.1%(40円)高に続き、停滞した1週間でした。
2023年5月以降の日経平均は1週間で1,000円以上乱高下する週も続出しましたが、ここ2週間は年初来高値圏で静まり返っています。
その大きな理由は、9月以降の株式市場のかく乱要因だった米国の金利上昇が一服して日米金利差が縮小したため、12月1日(金)のニューヨーク外国為替市場の終値が1ドル=146円75銭台まで急落するなど、かなり急速な円高が進んでいるから。
円高になると日本の外需産業の円換算した海外収益が縮小し、ドル建てで見た日本株の株価が割高に映ることもあって、日本株は上がりにくくなります。
米国の長期金利の指標となる10年国債の金利は先週も低下が続き、12月1日(金)には一時4.2%を割り込む水準まで下落しました。
金利低下を好感して、機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は1日、前週末比0.77%高と小幅ながら5週連続で上昇しました。11月は前月比8.92%と上昇率は1年半ぶりの高い水準を記録しました。
日経平均の11月の上昇率8.5%を上回っています。
しかし米国の金利低下とセットでドル安円高が進んでしまうため、今後の日本株の上昇は米国株に比べると見劣りしてしまう可能性もありそうです。
ただ、先週も米国の物価指標が順調に低下し、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の高官からは2024年半ば以降に利上げでなく利下げもありうるという発言が飛び出すなど、2024年の米国経済のソフトランディング(軟着陸)期待が根強いのも事実。
高金利でも景気後退には至らず、物価や金利も低下する来年2024年はバラ色になるという期待感がさらに高まれば、12月は米国株に連動して日本株も力強い上昇モードが再開する可能性も高いでしょう。
とはいうものの、1ドル=146円台に突入した円高の進行もあり、週明け12月4日(月)の日経平均は続落して始まりました。自動車などの輸出関連銘柄で売りが目立ち、前週末終値と比べた下げ幅が一時400円を超えました。ただ節目の3万3,000円近くまで下落すると押し目買いが入り、相場もやや円安に振れたことで下げ幅を縮小。終値は200円安の3万3,231円となりました。
米国の金利急低下である意味、材料出尽くしとなる中、今後、米国株や日本株をさらに上昇させる新たな材料探しには多少、時間がかかるかもしれません。
先週:2024年利下げ期待に沸く米国株に死角!?日本は半導体株が強い!
先週の株式市場では、FRBが景気をソフトランディングさせるため、2024年の半ばに利下げに転じる期待感がさらに鮮明になりました。
きっかけになったのは、11月28日(火)、金融引き締めに積極的なタカ派と見なされていたFRBのウォラー理事が「あと数カ月、インフレ率の低下が続けば利下げを開始できる」と発言したこと。
11月30日(木)発表の米国の10月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も前年同月比3.0%の伸びで、前月比では横ばいとなり、FRBが目標とするインフレ率2%が近づいてきました。
12月1日(金)には、米国の大学でFRBのパウエル議長が講演。
「利下げは時期尚早」と市場の期待にくぎを刺したものの、利上げをしすぎたり、しなさすぎたりする「利上げの過不足リスクは均衡している」と発言。
金融緩和に積極的なハト派寄りのトーンに若干、変わりつつあります。
パウエル発言と同じ12月1日発表のISM(米供給管理協会)の11月製造業景況指数は46.7と好不調の境目である50を13カ月連続で下回りました。
今後、米国の景気悪化を示す指標が相次ぐと、株式市場が完全に織り込んでいる米国経済のソフトランディングシナリオに水を差すことになるでしょう。
株式市場は2024年半ばの利下げ転換を織り込みつつありますが、FRBが利下げに踏み切るのは景気後退が深刻化して、株価が急落したときです。
株価急落が引き金にならないと始まらないことが多い利下げを株式市場が早々に織り込んで上昇し続けているのは、ある意味、矛盾に満ちた状況といえるでしょう。
高値圏のべた凪(なぎ)相場の中、先週の日本株では高性能な半導体検査装置の新製品を発表した半導体関連の人気株レーザーテック(6920)の1日株価が前週末比9.9%の上昇。
半導体向け超純水装置大手の野村マイクロ・サイエンス(6254)が12.5%も上昇して5月以降、株価が2倍以上になるなど、値動きの軽い中小型の半導体関連株の上昇が目立ちました。
また、国や地方自治体が使う共通の情報システム基盤の提供業者に認定されたデータセンター運営のさくらインターネット(3778)が39.3%も上昇するなど、「政府クラウド」が人気テーマに浮上しました。
その一方、中国で子どもを中心に謎の肺炎が大流行していることから、日本航空(9201)が2.5%安となるなど、空運株や旅行関連株の下げが目立ちました。
今週:米国の雇用統計で株価乱高下?円高メリット株に注目!
今週は米国の雇用関連の指標発表が相次ぎます。
12月5日(火)には、ISMの11月非製造業景況指数のほか、米労働省が米国の労働需要の動向を調査したJOLTS(雇用動態調査)の10月求人件数、12月6日(水)には民間給与計算代行会社ADP(オートマティック・データ・プロセッシング社)の11月民間雇用統計が発表になります。
そして、12月8日(金)には、11月の米国雇用統計も発表に。
11月の非農業部門の新規雇用者数は前月比19万人増、平均時給は前月比0.3%の上昇という予想ですが、雇用統計は予想からブレが大きいのでサプライズが起こる可能性もあります。
雇用市場の伸びが少し鈍化すれば、2024年半ばの早期利下げ期待がますます高まり、年末恒例の上昇相場がさらに加速するかもしれません。
一方、大きく落ち込むと高金利政策による景気・雇用の急激な落ち込みが危惧されて株価は急落するでしょう。
予想以上に強すぎる場合は高金利政策の2024年いっぱいの継続懸念につながるので株価にとってネガティブです。
来週12月12日(火)~13日(水)には米国の政策金利を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)も控えているため、今週相次ぐ雇用関連指標の結果次第では株価が乱高下するかもしれません。
日本では、12月5日(火)に物価の先行指標といわれる東京都区部の11月CPI(消費者物価指数)が発表。
生鮮食品を除くコアCPIの伸びは前年同月比2.4%増に低下する予想です。
12月8日(金)には10月の毎月勤労統計調査が発表されます。物価の上昇を反映した日本の労働者の実質賃金は9月は前年同月比2.4%減となり、9月までで18カ月連続で低下しています。
10月も19カ月連続の低下が予想されていますが、賃金の上昇が物価高に追いつかない苦しい家計状況が岸田政権の記録的な低支持率につながっています。
円高が進むと輸入品の物価は少し下がりますが、外需企業中心に業績が悪化するため、賃金上昇には逆風になりかねません。
日本は長年のデフレ不況からようやく脱却しつつあり、株価もそれを好感してバブル経済崩壊後の最高値水準まで上昇しています。
今後、賃金が物価以上に上昇し、国内の個人消費の盛り上がりで景気がさらによくなって、ますます賃金が増加するという好循環に入れば、日経平均が3万8,915円のバブル当時の史上最高値を更新するのも夢ではありません。
11月後半から始まった円高トレンドは、その好循環に急ブレーキをかける恐れもあります。
円相場の推移を見ると、約1年前の2023年1月につけた1ドル=127円台までは円高が進む余地があります。
もし米国経済が2024年以降、ソフトランディングではなくハードランディング(景気後退)に陥った場合、円高ドル安のスピードはさらに急激なものになるでしょう。
12月の米国株は今週も2024年の米早期利下げ期待を材料に続伸しそうです。
しかし、米国の利下げとセットになって必ず起こる円高トレンドという逆風があるため、日本株の上昇力が鈍くなる可能性もあるでしょう。
この先、さらに円高が進むと思う場合は、製品・原材料の輸入価格が円高で目減りして収益拡大が見込める円高メリット株に資金の一部を逃避させるのもいいかもしれません。
例えば、食品などを海外から輸入して販売しているイオン(8267)や「業務スーパー」の神戸物産(3038)、「ドン・キホーテ」のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)、原料のパルプを輸入して紙を作る日本製紙(3863)などは株主優待株としても魅力的。
来たる2024年の円高トレンドに乗って、株価のさらなる上昇に期待できるかもしれません。
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