新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の開始を控え、どのように投資していこうか検討されている方も多いのではないでしょうか。投資で資金を投じる方法には大きく分けて、毎月など定期的に一定額を投資していく積立投資と、まとまった資金を一度に投資する一括投資の2つがあります。
今回は、積立投資と一括投資ではどちらの方が利回り(年率リターン)が高くなるのか、世界株式インデックスのデータを使って検証した結果をご説明します。
世界株式インデックスを対象に分析
今回は、世界の幅広い株式を対象としたインデックスの1つ、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスを対象に分析します。分析方法は次のようになります。
通常、インデックスファンドの形で投資する場合には信託報酬などの運用コスト(低いと0.1%程度)がかかりますが、今回の分析では割愛しています。
では、早速、どのような利回りになったのか、確認していきましょう。
世界株式への積立投資、投資期間が短いと利回りは安定せず
毎月1回のペースで積立投資をした場合に、どのくらいの利回りになったのか、投資期間1年、10年、20年、30年のそれぞれについて見ていきます。
まず投資期間1年、つまり12回(12カ月)のみ積立を行った場合の結果です。横軸が利回り、縦軸がその利回りが実現した回数として、ヒストグラムで示しています。なお、利回りがプラスの結果を緑色で、マイナスの結果を橙色で示しています。
利回りが18%以上と最も高かった結果が一番多くなっていますが、▲10%未満と最も悪かった結果も多くなっています。▲10%から+18%までの間は、特にどの利回りが多いということもなく、ほぼまんべんなく実現しています。
次に、投資期間が10年の場合です。
積立期間が10年間になると、利回りがプラス(緑色)の結果がかなり増えており、10%以上といった高い利回りの結果も多くなっています。また、マイナス利回りの場合であっても、▲2~0%の結果が多く、大きなマイナスの結果はかなり少なくなりました。
次に、投資期間が20年の場合です。
積立期間が20年間になると、全ての結果で利回りがプラス(緑色)になりました。あくまで過去の実績ということになりますが、世界株式インデックスに20年間積立投資をしていれば、一度も損失にはならなかったということになります。
次に、投資期間が30年の場合です。
積立期間が30年になると、全ての場合で、利回りは6~10%となっています。長期になると、利回りが安定してくることが確認できます。
一括投資はリスクが高いイメージもあるが、積立投資とほぼ同様の結果に
続いて、資金を一度に投じる一括投資を行った場合に、どのような利回りになったか、投資期間ごとに確認していきます。
まず投資期間1年の場合ですが、積立投資の場合とほぼ同様で、+18%以上の場合と、▲10%未満の場合が多くなるものの、その間はまんべんなく分布するという結果になりました。投資期間1年といった短い期間の場合は、積立投資であろうと、一括投資であろうと、利回りが安定しないことがわかります。
次に、投資期間が10年の場合です。
投資期間が10年になると、ほとんどの場合で利回りがプラスになっています。また、マイナスになった場合であっても、低くても▲4%までに収まっており、積立投資の場合に見られた▲10%近くの結果は一度も発生していません。
次に、投資期間が20年の場合です。
20年になると、2%以上の利回りが確保できており、全てプラスになっています。積立投資でも、一括投資でも、20年間投資できると損失は発生しなかったことになります。
最後に、投資期間が30年の場合です。
30年の場合には、利回りが4~10%に収まっており、特に6~8%に集中しています。積立投資の方では6~10%に収まっていましたが、一括投資では少し低めの4~6%の場合も残っています。
これは、たまたまインデックスが高いタイミングに一括投資をしてしまうと、利回りが低めになってしまうためでしょう。そういう意味では、積立投資は投資タイミングの時間分散効果があると言えますね。
投資対象が同じであれば、利回りは同じ水準に
今回の分析では、積立投資と一括投資の2つの方法について、いずれも世界株式インデックス(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)に投資したとして、利回りを確認しました。もちろん個別の事例では利回りはさまざまですが、投資期間が長くなればなるほど、いずれの投資方法であっても利回りはほぼ同じ水準になっていることが確認できました。
投資対象がいずれも同じ世界株式インデックスでしたので、実現した利回りがほぼ同じ水準になるのは当然の結果と言ってもよいでしょう(日本株式と世界株式など、投資対象が異なっていれば利回りも異なってくるはずです)。
積立投資がいいのか、一括投資がいいのかが話題になることもありますが、長期的な資産形成であるなら、あまり細かい投資のタイミングは気にすることなく、資金的に余裕がある時は投資をしていく、といったスタンスでよいのではないかと考えています。
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