新NISAの「成長投資枠」を活用する
いよいよ2024年より、新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まります。2023年までのNISAよりも投資額や期間などが拡充され、使い勝手が良くなります。今回のレポートでは、新NISAを使った金(ゴールド)投資について述べます。以下の図は、新NISAがカバーする金(ゴールド)投資の範囲を示しています。
図:新NISAがカバーする金(ゴールド)投資の範囲(2023年11月27日時点)
新NISAには二つの投資枠があります。「つみたて投資枠(従来のつみたてNISA)」と「成長投資枠(従来の一般NISA)」です。
このうち「つみたて投資枠」を利用して取引ができる商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託(従来のつみたてNISAの対象商品と同様、金融庁の基準を満たした投資信託)です。
こうした投資信託の中に、金(ゴールド)関連の投資信託がないため(2023年11月24日時点)、新NISAを利用した金(ゴールド)関連の投資は「成長投資枠」を利用することになります。
もともと金(ゴールド)関連の投資商品には、短期的な取引から超長期的な取引に利用できる商品が幅広く存在します。そしてグローバルな金(ゴールド)関連の商品も日本の金(ゴールド)関連の商品もあります。
こうした金(ゴールド)に関連する投資信託、ETF(上場投資信託)、個別株の多くは成長投資枠の対象商品です。
特に長期的な取引に利用できる商品については、「積立投資ができる仕組み」が拡充されたことで、これまで以上に長期投資の意図に沿った取引をしやすくなっています。
楽天証券が提供している米国株の積立「米株積立」と国内株式の積立「かぶツミ」のサービスが、成長投資枠に対応していることは、新NISAと金(ゴールド)投資の距離を近づけていると言えるでしょう。
新NISAを利用する際の五つの選択
新NISAを使って金(ゴールド)投資を行う際、いくつか整理しておくべき点があります。このことを、以下の図のとおり「五つの選択」としてまとめました。
1.投資枠、2.期間(取引手法)、3.地域、4.分野、5.商品の五つを順に選択することで、ご自身の意図にできるだけ近い、成長投資枠を利用した金(ゴールド)の取引ができると、考えます。
1の投資枠については、先述のとおり今のところ選択の余地はなく、「成長投資枠」となります。2の期間(手法)については、注目する材料がどの時間軸を示すものであるかでおのずと決まってきます。
短期の取引に関わりが深い材料(例えば戦争)に注目した場合は、スポット(随時)購入によって関連銘柄を保有する、長期の取引に関わりが深い材料(例えば中央銀行)に注目した場合は積立で購入する、という具合です。
3の地域については、価格の単位がドルの金(ゴールド)、ドル建ての金に連動する金を「グローバル」、価格の単位が円の金(ゴールド)、円建ての金に連動する金を「日本」と想定しています。
「グローバル」は、世界全体の有事や物価高、中央銀行の動向などを反映しやすい傾向があります。「日本」は、グローバルな金にトレンドが生じている中で、ドル/円が急激な円安方向に推移した時に特に注目を集めることがあります。
図:新NISAで金(ゴールド)投資をするための五つの選択(2023年11月27日時点)
4の分野は、「投資信託」「ETF」「個別株」から選択します。投資金額・リスク許容度だけでなく、ポイント投資ができるか、クレジットカード決済ができるか、配当を受け取ることができるか、などが選択の基準になります。
5の商品は、金(ゴールド)相場との連動性や諸コストの額などが選択の基準になります。
材料の時間軸と投資手法の関係
先述の通り、「期間(手法)」については、注目する材料がどの時間軸を示すものであるかで、おのずと決まってきます。
世界規模の不安感の強弱(有事ムード)、株価の上下(代替資産)、ドルの上下(代替通貨)といった、短中期的な時間軸の材料に注目した場合に選択する取引手法は「スポット(随時)購入」がなじむと考えられます。
一方、中国・インドの宝飾需要の増減、中央銀行の金(ゴールド)保有高の増減、鉱山会社のヘッジ(保険つなぎ)増減、西側・非西側の対立(見えないリスク)といった、中長期・超長期的な時間軸の材料に注目した場合に選択する取引手法は「積立購入」がなじむと考えられます。
図:金(ゴールド)にかかる七つのテーマ
金(ゴールド)相場は、上図のとおり複数のテーマの影響を受けています。近年の環境は、一つのテーマだけで値動きを説明できた1970年代と大きく異なり、複雑化しています。ですが、こうした複数のテーマを「時間軸」で分類することで、相場を分析しやすくなります。
このような考え方に基づくことによって、中央銀行関連のニュースで短期前提のスポット購入(売却)をしたり、有事関連のニュースで長期前提の積立投資をしたりするなどの、意図と行動が食い違った状態を避けることができます。
「成長投資枠」を利用した金(ゴールド)投資に欠かせない考え方です。
金(ゴールド)相場との連動性に留意
新NISAの「成長投資枠」で取引できる金(ゴールド)関連銘柄は「投資信託」「ETF」「個別株」のいずれかです(2023年11月24日時点)。これらの投資手法は、金(ゴールド)投資においては「間接」手法です。
「直接」手法は、金(ゴールド)現物そのもの、あるいはそれに限りなく近い手法である、純金積立や商品先物、CFDなどです。
「間接」と「直接」の最も大きな違いは、関連する商品の値動きのもととなる金(ゴールド)相場との連動性です。直接は連想性が高く、間接は(それよりも)低くなる傾向があります。
図:金(ゴールド)関連銘柄と金相場の連動性における傾向
保有していた関連する投資信託が早期償還となってしまったり、保有していた金の鉱山を持つ企業の株式の価値が本業以外の要因によって負の影響を受けたりすることがあります。
これらはいずれも、関連する商品と金(ゴールド)相場の連動性を低下させる例です。こうした点は、新NISAで金(ゴールド)関連の投資商品を取引する上で、留意しておきたい事項です。
およそ20の具体的な関連銘柄
以下は、新NISAで利用できる金(ゴールド)商品の具体例です(楽天証券において)。投資信託はグローバル、日本を合わせると10個、ETFは同7個あります。個別株は代表的なものを同6個、挙げました。
この中で、配当を受け取ることができる商品があります(当該企業が配当を出した場合)。個別株に挙げた全てと、二つのETFです。金(ゴールド)相場に連動することを目指す投資信託やETFは、配当はありません。しかし、関連する個別株や複数の関連する個別株を指数化したETFであれば、その限りではありません。
「金(ゴールド)は保有していても配当を得られない」と言われますが、関連する個別株と一部のETFはそうではありません。先述の連動性における留意事項とトレードオフ(引き換え)のようにも思えてきます。
図:新NISAで利用できる金(ゴールド)商品の具体例(2023年11月27日時点)
本レポートで述べてきたとおり、新NISAで金(ゴールド)関連の投資をすることができます。新NISAというフィルターを通じて見ることでより、金(ゴールド)への理解が深まっていくと、筆者は感じています。
まずは文中で述べた「五つの選択」を利用し、ご自身とどの関連商品が合っているのかを、探してみると面白いと思います。
[参考]新NISA対応の金(ゴールド)関連銘柄
投資信託
グローバルな金(ゴールド)投資
ゴールド・ファンド(為替ヘッジあり)
SMTゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジあり)
Smart-iゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ブラックロック・ゴールド・ファンド
日本の金(ゴールド)投資
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)
SMTゴールドインデックス・オープン(為替ヘッジなし)
Smart-iゴールドファンド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド
ETF
グローバルな金(ゴールド)投資
SPDR ゴールド・シェア(GLD)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
ヴァンエック・中小型金鉱株ETF(GDXJ)
日本の金(ゴールド)投資
NEXT FUNDS金価格連動型上場投信(1328)
純金上場信託(現物国内保管型)(1540)
個別株(一例)
グローバルな金(ゴールド)投資
バリック・ゴールド(GOLD)
アングロゴールド・アシャンティ(AU)
アグニコ・イーグル・マインズ(AEM)
フランコ・ネバダ(FNV)
ゴールド・フィールズ(GFI)
日本の金(ゴールド)投資
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