1.東京オフィス空室率に改善の兆し
高止まりしている東京オフィス空室率が若干低下し始める
図表1は、三鬼商事の調査による東京ビジネス地区のオフィス空室率と平均賃料の推移ですが、空室率は2021年暮れにかけて6.5%程度に急上昇した後、2022~2023年は高止まっています。一方、平均賃料はこの期間もじりじりと低下しており、足元では2万円/坪を割り込んでいます。
ただし、空室率が高止まっている2022~2023年も細かく見ると変化が生じており、2022年は6.5%程度でほぼ高原状態だった一方、平均賃料が2万円を割り込んできた2023年は6.1%程度に低下する局面も見られるなど、改善の兆しが見られ始めています。
オフィス空室率が本格的に低下すれば、遅れて平均賃料も底入れすることが期待できるため、オフィスのウエートが高いJリートにとっては良い環境になると思われます。そこで、次のグラフでもう少し詳しく分析してみましょう。
[図表1] 東京ビジネス地区のオフィス空室率と平均賃料の推移
2.千代田区、新宿区は顕著に改善
東京ビジネス地区(都心5区)の間でも大きな違いがある
図表2は、過去1年間の都心5区の空室率を区別に見たものです。空室率は5区全体では高止まりしているように見えますが、区別に見ると大きな違いが見られ、千代田区、新宿区は顕著に低下している様子が見られます。
これらの区は平均賃料が大きく下落しており、賃料が割安となったことが空室率低下につながった可能性があります。三鬼商事の調査でも、「拡張移転」などの前向きの需要が出てきたことを挙げています。
一方、港区は他とは違った動きを見せており、空室率が上昇していますが、虎ノ門地区などでの大規模供給といった固有の要因がありそうです。中央区も足元では同様の影響を受けています。また、渋谷区は空室率がおおむね横ばいで推移していますが、渋谷区は今年に入って平均賃料が都心5区の中で唯一上昇しており、IT業界中心にオフィス需要が高まっているようです。
このように、大規模供給などの特殊要因を除けば、東京ビジネス地区のオフィス市況は改善の兆しが見られており、今後の動向に期待が集まります。
[図表2] 東京ビジネス地区の区別の空室率の推移
3.今年度はオフィス・セクターのパフォーマンスが最良
Jリートのセクター別パフォーマンスでは、オフィス関連が最良
図表3は、今年度に入って以降のJリートのセクター別パフォーマンスの推移です。上述したように、一部の例外を除いて東京オフィス市況に改善の兆しが見られ始めていることを反映してか、オフィス関連(オフィスと総合型)のパフォーマンスが良好で、東証REIT指数を上回っています。
オフィス関連セクターはJリートの中心であり、オフィス関連セクターのパフォーマンス改善は、Jリート全体のパフォーマンス改善につながることが期待されるため、非常に重要です。
一方で、インバウンド需要などでビジネスが好況なはずのホテルのパフォーマンスが足元で悪化しているほか、Eコマースなどで同じく好況が期待される産業用(物流施設など)もじりじりとパフォーマンスが落ちています。
これらの原因は、ビジネス環境が好況だった影響でこれまでに割高な水準まで買い上げられてしまった反動と見られており、あくまでも一時的な調整と見ています。
今後については、オフィスが本格的に改善し、ホテルや産業用の割高感が解消していけば、Jリート全体にとって良い投資環境になっていくと期待しています。
[図表3] 東証REITのセクター別パフォーマンスの推移
<関連銘柄>
NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信(証券コード:1343)
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