(前回のおさらい)損益通算のルールと投資ごとの所得の区分け
まずは前回のおさらいです。
前回、損益通算のルールと投資ごとの所得の区分けについて、以下のようにご説明しました(以下、前回の内容を抜粋)。
どの所得であっても、同じ所得内である「内部通算」は可能です。そして同じ所得というのはグルーピングがあり、例えばFX取引による損益、先物・オプション取引による損益、CFD取引による損益は同じグループです。したがって、これらについてはそれぞれの利益と損失をネットした上で、損益を計算することになります。
そして、投資ごとの所得の区分けは次のようになっています。
- 上場株式、投資信託などの売却損益:分離課税の譲渡所得(上場有価証券譲渡)
- 上場株式、投資信託などの配当金・分配金:配当所得
- FX取引、先物・オプション取引、CFD取引の損益:分離課税の雑所得
- 暗号資産(仮想通貨)の損益、外貨預金の為替差損益:総合課税の雑所得
- 金(ゴールド)の売却損益:総合課税の譲渡所得
- 不動産の賃貸収入:不動産所得(総合課税)
- 不動産の売却による損益:分離課税の譲渡所得(不動産譲渡)
今回は、各投資の所得による税率の違いや損益通算の仕組みなどをどのように活用し、税金をコントロールしていくのかを考えてみたいと思います。
上場株式・投資信託などの税体系や損益通算は?
上場株式や投資信託などについては、まず売却損益が「分離課税の譲渡所得」(税率20.315%)、配当金や分配金が「配当所得」となります。
そして同じ年に生じた分離課税の譲渡所得(売却損)と配当所得とは損益通算ができます。これは確定申告を要しますが、源泉徴収ありの特定口座かつ株式数比例配分方式の場合、同じ証券会社での、同じ年の売却損と配当金は証券会社にて損益通算してくれます。
また、売却損と配当所得を損益通算しても残った売却損は、確定申告することで翌年以降3年間繰り越しすることができます。
さらには、過去から繰り越した売却損を、売却益や配当金と損益通算することで節税ができます。
ポイントは、同じ年の売却損益の通算を除いては、損益通算や損失の繰り越しを行うには「確定申告をする必要がある」という点です。
特に売却損を繰り越したり、翌年以降に繰り越した売却損と売却益・配当金を損益通算するときは、確定申告を忘れないようにしましょう。
また、売却損の繰り越しは3年間までですから、3年経過した売却損が残っている間は、含み益が生じている株式などを売却して損益通算し、節税を行うということも検討の余地があります。
先物・オプションやFX取引の税率は上場株式と同じだが「カテゴリー」が異なる
先物・オプション取引やFX取引で生じた利益の税率は20.315%となっていて、これは上でお話しした上場株式や投資信託の売却損益と同じです。
ただ、上場株式や投資信託の売却損益は「分離課税の譲渡所得」であるのに対し、先物・オプション、FX取引で生じた損益は「分離課税の雑所得」であり、税区分のカテゴリーが異なります。
カテゴリーが異なるので、「上場株式や投資信託の売却損益や配当金・分配金」と「先物・オプション、FX取引で生じた損益」の損益通算はできません。
なお、先物・オプション、FX取引で同じ年に生じた損益は損益通算でき、それでも残った損失は確定申告をすれば3年間繰り越すことができます。
繰り越した損失については、翌年以降の「先物・オプション、FX取引での利益」と損益通算することができます。
先物・オプション、FX取引での損益は、上場株式・投資信託での損益と税体系は似ているものの、カテゴリーが異なるので、両者を損益通算できないという点は押さえておきましょう。
暗号資産やゴールドの税体系はなかなか厳しい
暗号資産の売却益は総合課税の雑所得、ゴールドの売却益は総合課税の譲渡所得です。所得区分は異なりますが税率は他の所得と合算した総合課税である点は同じです。
また、暗号資産であれば暗号資産の売却損益や外貨預金の為替差損益と損益通算ができますし、ゴールドの場合はゴールドの売却損益や他の総合課税の譲渡所得と損益通算できます。
ゴールドの場合は特別控除50万円がありますし、所有期間が5年超の場合は所得の額が2分の1となるためかなり税額が軽減されます。ここが暗号資産の利益とは大きく異なる点です。
一方、両者とも損失が生じた場合は、他の所得と損益計算できませんし、翌年以降への繰り越しもできず切り捨てとなってしまいます。
この面では、暗号資産やゴールドは、損失が生じたときの税制面の手当ては受けられないと思っておきましょう。
損益通算ができない、そして総合課税である、ということなので、対策をするとなれば、今年の年末に半分、来年の年初に半分、というように年をまたいで売却して、各年ごとの所得を小さくして税額を抑えるくらいでしょうか。
ゴールドの場合は所有期間が5年以内と5年超で大きく税額が変わってきますので、この点も考慮に入れて、いつ売却するかを決めるのが良いと思います。
総合課税の他の所得と損益通算が可能なものとは?
総合課税の所得、例えば給与所得、事業所得、不動産所得は、損益通算が可能となります。
給与所得がマイナスというのはありえませんので、よくあるケースとしては「給与所得や事業所得がプラス、不動産所得がマイナスで両者を損益通算」というものです。
不動産賃貸の場合、減価償却費の計上により不動産所得をマイナスにし、給与所得や事業所得のプラスと損益通算し、節税をするというのが王道です。特に、給与所得や事業所得が多い方であれば、不動産所得のマイナス額の50%程度が節税額になりますのでかなりインパクトも大きいです。
ただ、減価償却費が小さくなり、不動産所得がプラスになれば、それは総合課税の税率で課税されますので、他の所得が多ければ逆に所得の50%が税金としてかかってしまう点には注意が必要です。
不動産賃貸を事業として行うのであれば、かなりしっかりと取り組む必要がありますし、手間暇もかかります。それに加え、所得の半分が税金で持っていかれるというのはなかなか厳しいものがあります。
ですから、そこまでガッツリと不動産投資を行うつもりもないし、所得の半分も税金を持っていかれるのを避けたいというのであれば、REIT(リート:上場不動産投資信託)への投資も一考です。
REITであれば、上場株式や投資信託と同じ税体系なので、分配金の税率は最大でも20.315%で済みます。
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