10月のビットコインイベント

NEW!10月14日 SEC、グレースケール裁判の控訴断念
NEW!10月16日 ブラックロック分BTC ETF承認誤報
NEW!10月17日 ブラックロックCEO BTCは「質への逃避」

*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た11月見通し

10月の振り返り

10月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

10月のBTCは上昇

 先月「年内500万円あるか?」と題し「11月利上げ見送りが確実視されるようになれば、10月中にも年初来高値をトライ」するとして「今後2カ月の間にこの水準(500万円)まで達する」と申し上げたが、10月中に500万円に到達した。

 BTC(ビットコイン)は、9月末の米政府閉鎖解除を受け2万8,000ドル台に値を伸ばしたが、10月7日のハマスのイスラエル奇襲攻撃を受け2万6,000ドル台に値を下げた。

 ボラティリティが高いBTCは戦争という究極のリスクイベントに弱いことに加え、バイナンスがハマス関連口座を凍結したことを受け、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)が暗号資産がハマスの資金源だったと報じたことも影響したか。なおデータ分析企業からそうした指摘に疑問の声も出ている。

 しかし、グレースケールのBTCファンドGBTCのETF(上場投資信託)への切り替え申請を否認したSEC(米国証券取引委員会)の判断を裁判所が取り消した裁判で、SECが控訴を断念、ETF承認へ一歩前進したとBTCは切り返した。

 するとコインテレグラフがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でブラックロック申請分のBTC ETFが承認されたとの誤った情報を流し、BTCは3万ドルにワンタッチしたが、その後、誤報と判明、失速した。

 翌日、FOX TVに出演したブラックロックのラリー・フィンクCEOはETFの可否についてのコメントは避けたが、今回の上昇の背景にBTCへの「質への逃避」があると指摘、注目を集めた。

 同じ頃、米国ではイスラエルとウクライナ支援に1,000億ドル規模の予算を要求するとの方針が示され、米長期金利が急上昇。これにより追加利上げが不要だという見方が広がったことでBTCは下げ渋った。

 バイデン米大統領がイスラエルに訪問するも情勢の鎮静化に失敗、戦闘拡大は避けられないとの見方もBTCをサポート、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が11月利上げ見送りを示唆する中、BTCは3万ドルを回復した。

 するとブラックロック申請分のBTC現物ETFが、上場予定先のナスダックの清算会社DTCC(預託信託清算公社)のサイトに、IBTCというティッカーで掲載されたことがETF承認に向けた前向きの動きと好感され、年初来高値3万1,800ドルを上抜けると、BTCは急騰、3万5,000ドルにワンタッチした。

 その後、いったん、3万3,000ドル台に値を下げたが、イスラエルのガザ侵攻が開始、また11月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げが見送られ、3日の雇用統計と合わせて利上げ打ち止めが確実視される中、BTCは再び3万5,000ドルに乗せ、年初来高値を更新している。

材料面から見たBTC見通し

ETF承認期待はきっかけ

 10月のBTC上昇はETF承認観測が高まったことがきっかけとされるが、それだけが理由と考えると腑に落ちない点がいくつもある。ブラックロックのETF承認の誤報で3万ドルを付けたが、誤報と判明したにもかかわらずBTCは3万ドルをキープした。またDTCCへの記載により、月内にもETF承認かと騒がれたが、11月6日現在でまだETFは承認されていない。

 確かにグレースケールの勝訴確定でETF承認は時間の問題との見方も広がっているが、25日のイベントでのゲンスラーSEC委員長の発言を見る限り、SECのスタンスに変更は感じられない。それにグレースケールの勝訴が伝えられた8月末にはBTCの上昇は数日しか持たなかった。何がBTC上昇の背景にあるのだろうか?

利上げ打ち止め観測

 一つには利上げ打ち止め観測が挙げられる。2020年から2021年にかけて米ドルの代替投資先として米機関投資家がBTCを買い始めて以降、BTCはFRBの金融政策によく反応するようになった。

 2021年11月のテーパリング開始時にピークを迎え、2022年11月の利上げ幅縮小時にボトムを迎えた。さらに今年1月に利上げ幅がさらに縮小されると上昇に転じ、3月の金融危機で利上げ打ち止め観測が浮上すると3万ドル台に乗せた。

BTC/JPYと米金融政策

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成 

 結局5月利上げで打ち止め観測は空振りに終わりBTCは失速したが、6月の据え置きで今度こそと利上げ打ち止めを織り込みに行き、3万2,000ドル手前まで上昇した。しかし7月の利上げでまたしても空振りに終わり、8月の急落につながった。

 今回、9月、11月と2会合連続での据え置きとなり、3度目の正直で利上げ打ち止めを織り込みに行く相場となった。ちなみに、上記の利上げ縮小は昨年12月と今年の2月となりBTCの値動きと1カ月程度ずれている。

 これはBTC(に限らないが)が期待をベースに前倒しで動くことからで、今回も11月のFOMCの前に織り込みに行った格好だ。すなわち、追加利上げの織り込みはすでに1割程度まで低下、利上げ打ち止めはほぼ織り込まれており、ここから先、この材料でのBTCの上昇は限定的かもしれない。

「質への逃避」

 もう一つ、今回の上昇で大きかったのはラリー・フィンク氏の発言だ。前述の通りBTCは戦争に弱い。不測の事態が発生すると投資家はポジションを小さくしようとする。ポートフォリオのリスク量を小さくするには、ボラティリティの高い資産を売却するのが近道だからだ。

 しかし、同氏がBTCを逃避先と名指ししたことで雰囲気が変わった。というのは、今回は「質への逃避」の筆頭であるはずの米国債が大きく売られ、また伝統的に安全資産といわれていた日本円もさっぱりで、投資家が逃避先に困っていたからだ。それゆえ、スイスフランや金が買われたが、前者は市場規模が小さく、後者は値動きが鈍い。

 そうした中、同氏の指摘でBTCが逃避先として認識されるに至った。とはいえ、まだそうした認知が一般的になったわけではないが、中東情勢が好転すればリスクオンで、悪化しても逃避フローで、どちらに転んでもBTC買いといった状況が生まれた。

どちらに転んでもBTC買い

 どちらに転んでもBTC買いという構図は米長期金利との関係でも生じた。パウエル議長らは米長期金利上昇による引き締め効果により追加利上げが不要になったと説明している。この結果、長期金利が上昇すれば利上げ打ち止め観測が高まり、低下すればリスクオンで、どちらに転んでもBTC買いといった状況が生まれた。

米10年債金利(橙:左軸)とFF先物2023年12月(白:右軸)

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 ただこうした、どちらに転んでもBTC買いといった状況は長続きするわけではない。すでに追加利上げの織り込みが1割程度に低下した中、次は利下げが見えてくるまでは、この材料での上値余地は限定的だろう。

 米長期金利の上昇、米国債価格の低下は代替投資であるBTCの買い要因となったが、利上げ打ち止め観測が浮上する中、米債金利は急低下している。投資家は金利が上昇している間は長期債を買おうとしないが、いったん金利が低下に転じると、4%台の10年国債は魅力的に映るだろう。

ETF承認時の上昇余地

 ETFの承認の可能性はどうだろうか? 具体的にいつSECが承認するかを占うのは難しい。すでにSECの論理は破綻しており、後は政治的な判断となる。ただ、あとどれだけ上昇余地があるかのめどは立てられるかもしれない。

 前述のGBTCは、ファンドが保有しているBTCの価値と市場で流通しているファンドの株式の時価総額とのマイナスかい離に苛まれている。6月のブラックロックのETF申請時にはおよそ4割のマイナスだったものが、SECへの勝訴などもあり1割程度に縮小している。この間、BTCは2万6,000ドルから3万5,000ドルに3割強上昇している。

 この上昇にはETF期待だけでなく、利上げ打ち止め観測分があるために、ある程度割り引かなければならないが、仮にGBTCがETFとして認められ、ファンドの純資産価格と流通価格が一致するようになれば、GBTC価格はあと1割上昇する計算となり、BTCも最大でおおよそ1割程度の上昇余地があるか。

 すなわち、3万8,000ドルから3万9,000ドル、円貨で580万円程度までの上昇が見込めそうだ。ただし、実際にETFがローンチした後はSell the Fact(うわさで買って事実で売れ)で利食い売りが出るので注意が必要だ。

GBTCプレミアム(市場価格/純資産価格-1)とBTC/USD価格

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

テクニカル面で見たBTC相場見通し

BTC/USD 一目均衡表

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 テクニカル的には、一目均衡表などトレンド系は10月の急騰の余韻が残っているものが多いが、一部でピークアウトを示唆するサインも出始めている。

BTC/USD MACD

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 移動平均を改良してより早くサインを出すように工夫したMACD(移動平均収束拡散手法)では、デッドクロスが発生している。

BTC/USD RSI

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 またオシレーター系のRSI(相対力指数)では、ダイバージェンス(逆行現象)が出現している。これは今年1月の上昇の後にも出現した強い売りサインで、その際は1割弱の調整が発生した。

BTC月別騰落一覧

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 恒例の月別の騰落率で見ると、11月は7勝5敗(12年で7回上昇、5回下落)と勝率は58%。陰線から2カ月連続で陽線に転じた場合の3カ月目の成績は11勝8敗とこれまた58%。若干強めだが、予想の根拠になるほどの強い季節性は感じられない。

BTC/USD 3~4万ドルはやれやれ売りが出やすいゾーン

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 以前から申し上げているように、3万ドルから4万ドルは、2021年から残るロングポジションのやれやれ売りが出やすいゾーン。すなわち、新値を更新すると戻り売りに押されるといった展開を繰り返し、4万ドルを抜けたところから相場が走り始めるイメージ。

 今回も3万2,000ドルを超えて3万5,000ドル台を付けたが、そこで上値を抑えられており、年末には3万ドル前後に収束すると予想している。

まとめ

 まとめると、11月のBTC相場は上値の重い展開を予想する。

 すでに利上げ打ち止めはほぼ織り込み済みで、11月14日のCPI(消費者物価指数)次第では若干高値を更新する上値余地があるかもしれないが、上値余地は限定的で、戻り売りに押し戻される展開を予想する。

 仮にETFが承認されれば3万8,000~3万9,000ドル程度までの上昇が想定されるが、3万ドルから4万ドルのゾーンは抜けきれず、むしろローンチ後のSell the Factで失速するのではないかと考えている。

2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

9月28日 SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断再延期
9月19日 野村ホールディングス、子会社でBTCファンド提供
9月10日 インド、今後数カ月で暗号資産に対するスタンスを決定
8月31日 SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断延期
8月29日 グレースケール、SECに勝訴
8月17日 スペースX、保有BTC売却
8月2日 ライトコイン半減期
7月13日 リップル、SECに部分勝訴
7月6日 ブラックロックCEO、BTCは国際的資産
6月15日 ブラックロック、BTC現物ETFを申請
6月6日 SEC、コインベースを提訴
6月5日 SEC、バイナンスを提訴
5月23日 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道
5月22日 ビットコイン・ピザデー
5月8日 PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止
4月25日 コインベース、SECを提訴
4月24日 ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明
4月19日 SEC委員長、下院公聴会で批判集まる
4月12日 ETH上海アップデート
3月27日 CFTC、Binanceを提訴
3月22日 コインベース、SECから訴追予告受け取る
3月22日 SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴
3月12日 シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ
3月8日 シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表
2月23日 ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性
2月13日 パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止
2月9日 クラーケン、ステーキング停止
1月19日 ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請
1月17日 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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