執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 日経平均は2万円を挟んだボックスの動きが続きそう。景気・企業業績の改善が下値を支えるが、米国株の上昇を牽引してきたFANG株の急落、自民党が東京都議選で大敗したこと、米トランプ大統領の支持率低下が続いていることなどが、上値を抑える。
  • 目先、IT関連など成長株が売られ金融など割安株が買われやすい地合いとなりそう。

(1)日経平均は当面、2万円を挟んでボックス圏との見方に変更なし

先週の日経平均は、1週間で99円下がり、20,033円となりました。2万円を挟み、上値が重く、下値は堅い展開が続いています。

<日経平均週足:2016年1月4日―2017年6月30日>

(注:楽天証券マーケット・スピードより作成)

景気・企業業績が回復トレンドにあることが下値を支える一方、欧米で長期金利が上がり米NASDAQ株が一時大きく下がったことが、不安材料となります。

また、加計学園問題などを受け、安倍首相の支持率が低下していることも、外国人投資家から見て、日本株を買いにくくする要因となります。7月2日の東京都議選で、自民党が大敗したことも、自民党の政策実行能力の低下につながる懸念があります。

米国も同じ状況です。トランプ大統領の支持率が下がり、大統領の政策実行能力が低下する懸念が出ています。

引き続き、景気回復が下値を支え、政治不安や米NASDAQの下落が上値を重くする展開と考えています。

(2)米NASDAQが下落

これまで米国株の上昇を牽引してきた米国NASDAQ市場のIT関連株・ハイテク株が急落したことを嫌気し、6月30日に日経平均は、前日比186円安と大きく下げました。NASDAQに連動して買われてきた、日本のIT関連株・半導体関連株などの下落率が大きくなりました。

これまで米国株では、NASDAQ上場のFANG・MANT【注】など時価総額の大きいIT関連・ハイテク株に物色が集中していました。

【注】FANG・MANT
FANGは、フェイスブック(SNS大手)、アマゾン(ネット通販)、ネットフリックス(動画配信)、グーグル(検索大手)の頭文字をとった造語です。MANTは、マイクロソフト(OS「ウインドウズ」)、アップル(スマホ大手)、エヌビディア(半導体)、テスラ(電気自動車)の頭文字です。

FANG・MANTの株価に過熱感が出て警戒されている中で、先週は、欧米および日本で長期金利が上昇したことがきっかけとなって、NASDAQのIT関連・ハイテク株が売られました。ECB(欧州中央銀行)が、金融引き締めに動くとの観測が広がったことが、長期金利上昇のきっかけとなりました。

NASDAQ総合株価指数とNYダウの比較:2016年末―2017年6月30日

(注:2016年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

より長期で見ても、米国株を牽引してきたのは、NASDAQであることがわかります。NASDAQに高値警戒感が出ていることは、米国株の上値を抑える要因となります。

(注:2012年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成)

(3)日本株投資への影響

今年は、日米で二極化相場が続いてきました。米国では、FANG・MANTと言われるIT・ハイテク株が集中的に物色されてきました。金融株や資源関連株は、株価指標で見て割安でも買われない状況が続いてきました。

日本でも同様の二極化が起こっています。IT・ネット関連・ゲーム・半導体関連株が集中物色され、金融・資源関連・自動車関連・不動産・建設などは、株価指標で見て割安でも買われない展開が続いてきました。

米国では、長期金利の上昇をうけて、成長株が売られる一方、金利上昇で恩恵を受ける金融株などの割安株が買われました。日本でも、まったく同じように、成長株が売られ、金融株などの割安株が買われる流れが出ています。

目先、日経平均は2万円を挟んだボックスの動きと見ていますが、その中で、これまで買われてきた成長株は下がりやすく、金融株などの割安株が買われやすい展開と考えています。