日米それぞれの金融政策決定会合まで相場は小動きの見込み

 米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演が19日に行われ、ここ数カ月の物価・雇用情勢について「目標に向けた進展が確認された」と述べ、政策運営は「慎重に進める」と発言しました。

 しかし、物価上昇の鈍化傾向が続くことについて「まだ高すぎる」と不安感を示し、物価上昇が収まり切らない場合は「さらなる金融引き締めが正当化される」と追加利上げの選択肢を排除しませんでした。

 発言内容は従来と同じ内容だったため、次回FOMC(連邦公開市場委員会)の方向を示唆するものではありませんでした。為替相場では、ドルは対円で多少上下しましたが大きな動きとならず、結局、来週の日米それぞれの金融政策決定会合まで狭いレンジ内での動きが続きそうです。

 しかし、それまでにはいくつかの山があるため注意する必要があります。

 26日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会、米国2023年7-9月期GDP(国内総生産)、27日(金)の10月東京都区部CPI(消費者物価指数)、米国9月個人消費支出(PCEコア・デフレーター<除く食品・エネルギー>)です。これらの山の影響でドルは多少上下に動くかもしれません。

 日米それぞれの金融政策決定会合までは大きな方向付けにはならないと思いますが、注目しておく必要があります。

ECB理事会は利上げ打ち止め色薄いか、米GDP発表で円安進行も

 26日のECB理事会では、政策金利引き上げ見送りとの観測が大勢となりつつあります。しかし、利上げ停止となるのか、追加利上げが今後あるのかどうか見方が分かれます。中東情勢によって原油が高止まりする可能性もあるため、利上げ打ち止めの色合いは出さないと思われます。

 一方で、米国と比べると景気の底堅さはないため、追加利上げの選択肢を残したとしてもあまりタカ派色は強くないかもしれません。従って、ユーロの頭は再び重たくなりそうです。ユーロは対円で上値が重たくなり、円が対ドルで円安になるのを止めるブレーキになるかもしれません。

 米国の2023年7-9月期GDPは、4-6月期の前期比年率2.1%増から加速し、4.5%増の予想となっています。この大幅な加速予想はかなり織り込まれていますが、発表を受けて米長期金利が再び上昇すれば円安に反応することが予想されます。

 ただ、パウエル議長も講演で10-12月期以降の成長率は減速するとの見方を述べているように、10-12月期は減速との見方が大勢となっていますので、長期金利もそれほど上昇しないかもしれません。

 また、このGDPを受けて来週のFOMCで利上げを行うとは思えません。それよりも市場関心は10-12月期以降、来年の利下げ時期に移りそうです。ただ、予想より上振れた場合は、一時的に1ドル=150円を突破することも予想されるので注意が必要です。

27日は10月東京都区部CPIと米国9月PCEの指数発表

 日本では、27日に全国のCPI(消費者物価指数)の先行指標となる10月東京都区部CPIは、前月と同じ2.5%(前年同月比)の予想となっています。予想より上振れれば日本銀行の政策修正や物価上方修正期待が高まり、円高に反応することが予想されます。

 また、米国では27日に9月個人消費支出(PCEコア・デフレーター)の発表があります。FRBが注目する物価指数です。前月の3.9%(前年同月比)よりも低下予想となっています。予想通りとなれば、年内の追加利上げはないとの見方が高まります。

 逆に、予想以上となり前月より加速すれば、12月への利上げ期待が高まり、長期金利も上昇することで円安が予想されますが、FOMCまでは大きく動くということはないと思われます。

 これらのイベントの日程(日本時間)は以下の通りです。

10月26日(木) 午後9時15分  ECB理事会
        午後9時30分  米国7-9月期GDP速報値
        午後9時45分  ECBラガルド総裁記者会見
10月27日(金) 午前8時30分  10月東京都区部CPI
        午後9時30分  米国9月個人消費支出(PCEコア・デフレーター)

 そして日米金融会合の日程(日本時間)は以下の通りとなります。

10月31日(火)正午頃  日銀金融政策決定会合決定、展望レポート(経済見通し)
11月 2日(木) 午前3時  米国FOMC
(1日の深夜) 午前3時30分  パウエル議長記者会見

日銀会合でのYCC修正有無、物価見通しの上方修正に注目

 日銀会合では、最近YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の修正観測報道が出ていますが、実際にこの通りになるかどうか焦点となります。米10年債が16年ぶりに5%台の高水準を付けたことに引っ張られて、日本の10年債利回りも10年ぶりに0.86%台を付けたことから、YCCで長期金利の変動上限を現在の1%からさらに引き上げるのか注目を浴びています。

 そして、日銀が四半期ごとに公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価見通しにも注目です。2023年度物価見通しは前回7月の2.5%から、3%近くに、2024年度は1.9%から2%超に上方修正されるとの見方が強まっています。YCCが修正され、物価見通しが上方修正された場合には、FOMCを待たずに円高に進むことが予想されますが、物価の上方修正だけでは、円高の反応は限定的かもしれません。

 そしてFOMCでは、11月、12月ともに利上げを見送るとの見方が大勢となっています。FOMC後のパウエル議長の会見が、19日の講演と同じような内容であれば、反応は限定的になると予想されます。また、長期金利の上昇が利上げの代替効果になっているとの見方を強調するのかどうかも確認したいです。

 FOMCメンバーの間でこの考え方が浸透しているのであれば、12月の利上げ見送りもかなり織り込まれることが予想されます。そして、10-12月期以降の景気減速や3%超の物価水準を受けて、来年の利下げ時期にどのような認識を示すのか注目です。

日米の金融政策の不透明感払しょくされ、相場動く可能性も

 今回、FRBは利上げ見送りとなり、年内も利上げなしとの見方が大勢となっても、米長期金利が高止まりする限り、また、日銀の政策修正がなければ、為替相場はドル高円安で推移することが予想されます。

 パレスチナ情勢も大規模な地上戦は延期となっており、膠着(こうちゃく)状態が続いているため、今のところ原油や世界経済に大きな影響を及ぼしていないことから市場の変動要因とはなっていません。

 従って、日米金融会合が終わっても再び為替の膠着相場が続く可能性があります。日銀の物価修正によって、多少レンジを円高方向に切り下げての膠着になると考えられる一方で、日米金融会合が終わったことにより年内の不透明感がなくなったと解釈されるかもしれません。

 不透明感という重しがなくなったことで、相場が動きやすくなるというシナリオにも留意しておきたいと思います。