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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日経平均3万1000円の攻防。長期投資で「買い場」」
日経平均急落、3万1,000円割れでは押し目買いが入る
先週(10月2~6日)の日経平均株価(225種)は1週間で862円下がって3万0,994円となりました。4日に一時3万0,487円まで下がりましたが、3万1,000円割れでは押し目買いが入り、3万1,000円近くに戻して引けました。3万1,000円が当面のサポート(下値支持線)として意識されている可能性があります。
日経平均週足:2023年1月4日~10月6日
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日本株のファンダメンタルズ(景気・企業業績)は良好で、日本株は割安、長期投資で「買い場」の判断は変わりません。
ただし、短期の日経平均を考える時は、テクニカル分析の視点で見ることが必須です。なぜならば、長期はファンダメンタルズ(景気・企業業績)で決まりますが、短期はファンダメンタルズを無視して、需給主導で動くことがあるからです。
そこで、まずテクニカル分析の視点から日経平均を見てみます。上の週足チャートから分かる通り、日経平均は今、二番天井を付けて下がってくる弱い形になっています。どこが下値になるか分かりませんが、その第一候補として3万1,000円があります。
3万円から3万1,000円は、日本のファンダメンタルズ改善を好感して、6月に日経平均が大陽線(長い陽線)をたてて上昇したレンジです。ここまで下がると押し目買いが入る可能性があります。先週は実際、このレンジで押し目買いが入り、3万1,000円近くに日経平均は戻した形です。
ここで下げ止まることができるのか、さらに下値を試すのか、目先の日経平均は3万1,000円の攻防となりそうです。
日経平均・米ナスダック総合指数の動き比較:2021年末~2023年10月6日
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日経平均の先行きを決めるカギは、米景気および米国株の動きです。
2023年に入り、米景気ソフトランディング(軟着陸)の期待から米国株が上昇、日本の景気・企業業績の回復期待も高まり、日経平均は上昇してきました。ところが、8月以降、米インフレが高止まり、米長期金利の上昇が続いていることから米景気ハードランディング(急速な失速)の不安が再燃し、米国株が下落しました。それを見て、日本株にも外国人によるリスクオフの売りが波及しているところです。
日米長期(10年)金利の推移:2007年1月~2023年10月(6日)
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詳しい説明は割愛しますが、米長期金利上昇により、米国株はイールドスプレッドで見て、割高になってきています。日本の長期金利も上昇していますが水準が低いので、日本株はイールドスプレッドが開いていて割安と判断されます。
日本と米国のイールドスプレッド(株の益利回りと長期金利のスプレッド):2023年10月6日時点
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日本の景況は良好、米景況は低水準だが足元持ち直し
9月の日銀短観DIで示された通り、日本の景況は良好です。
日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2018年3月~2023年9月
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一方、日本と比べると、米国の景況は低水準です。
ISM製造業・非製造業景況指数の推移:2018年1月~2023年9月
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製造業は景況の分かれ目である50を下回っていますが、足元、49.0まで回復してきています。非製造業は53.6と辛うじて50を上回っています。
米労働市場は強く、インフレ収束が遅れている
9月の米雇用統計は、米景気・雇用が依然として強いことを示す内容でした。9月の非農業部門雇用者は、前月比33万6,000人増と、増加幅が拡大しました。増加数が20万人を超えると米景気は好調と判断しましたが、雇用を見ると、米景気の強さが再確認されます。
米雇用統計、非農業部門雇用者数(前月比):2021年1月~2023年9月
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完全失業率は前月比変わらず3.8%でした。コロナ前の2020年2月とほぼ同水準で、実質完全雇用が続いていることが確認されました。これで、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がさらに利上げをする可能性が高まり、金融引き締めの手を緩める期待が消えました。11、12月も大幅利上げが続く不安から、ナスダックは再び急落しました。
米雇用統計、完全失業率:2014年1月~2023年9月
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このように、米景気は底堅く、米インフレの収束が遅れているために、FRBはタカ派姿勢を崩さず、米長期金利の上昇が続く要因となっています。
米景気がしぶとく好調なのは米国株にプラス材料ですが、金利上昇が続いていることはマイナスで、米国株は上値が重くなっています。
日本株、長期的に良い買い場と判断継続
結論は、いつも述べていることと同じです。日経平均は短期ショック安が続く可能性もありますが、長期的には良い買い場を迎えていると判断しています。
短期的にシートベルトを締め直す必要はあるものの、時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与するとの考えは変わりません。
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