※この記事は2022年8月26日に掲載されたものです。
資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。
お悩み
株主優待が気になって株式投資をしてみたいけど、損はしたくない
川上誠さん(仮名)会社員・40歳(既婚、子ども2人)
川上さんは資産形成のために、投資信託の積立投資を毎月し続けて3年ほどがたっていました。今年になって株式相場が大きく下落していることから、株式投資にも興味を持ち始めていました。
そんなときに雑誌で株主優待特集をみかけました。せっかく株式投資をするなら単に値上がりへの期待や配当目的だけではなくて、株主優待を楽しみつつ投資をするのもいいかなと考えるようになりました。
詳しく調べてみると、雑誌だけでなくWebメディアでも株主優待に関する情報は溢れており、これなら自分の好みの優待が見つかりそうだと喜ぶ一方で、コロナ禍で株主優待を廃止した企業も多くあることが分かり少し心配にもなりました。
川上さんが優待投資を始めるにあたって、何に気をつけたら良いのでしょうか?
優待投資の魅力とその注意点とは?
株主優待は、個人の株主数を増やすためにはじめた企業も多いですが、各企業によってさまざまな取り組みがされています。コロナ禍のタイミングで優待を廃止した企業も多くありますが、新しく始めた企業もあります。
株主優待に投資する魅力は多くのメディアで伝えられており、優待がもらえる投資金額に対して、株主優待だけでなく株式配当もあわせてどの程度のメリットがあるかがよくわかります。
今では有名企業だけでなく地元に根ざした企業などが、株主を増やすためだけではなく優待を通じた広告宣伝効果など実業へつなげる取り組みもしています。
優待投資の魅力を知って株式投資を始める人もいますが、何事も良い点だけではなく注意すべき点を知っておかないと、損をしてしまうかも知れません。
そこで、今回は優待投資で思わぬ損をしないための鉄則をお伝えします。
優待投資で損をしないための鉄則1:優待内容を最優先で投資をしないこと
優待投資とはつまり株式への投資です。当たり前のことですが、株式投資は一般的にはハイリスク・ハイリターンなので「株主優待」というリターンよりも株価の値動きの方が資産への影響は大きくなります。
これは高配当株投資にも共通することですが、株式投資は株価の値動きが最も資産にあたえる影響が大きいことは誰しもわかっているのに、配当金や優待のように目に見えるわかりやすいリターンがあると、つい忘れがちになる方が多くいます。
中長期で保有すれば大丈夫と安易に考えてしまって、企業分析を怠り、優待を目的とした投資だからという理由づけをして株価の動きを無視していませんか?
優待投資をするときにも、企業の業績や業界の展望など個別銘柄に投資するための情報収集を忘れてはいけません。
「優待投資」といっても株式投資であることにかわりありません。個別銘柄への投資ですからリスク(投資先の価格変動)も市場平均を狙うインデックス投資より高くなって当然です。優待や配当に惑わされずに、投資先企業を選びましょう。
優待投資で損をしないための鉄則2:優待クロスorつなぎ売りの活用も検討すること
『株主優待は欲しいけど、株式投資のリスクは取りたくない』という方におすすめの投資手法が信用取引を利用した「優待クロス取引」や「つなぎ売り」です。
どちらもよく似た投資手法ですが、すでに保有している銘柄に信用売りをすることをつなぎ売り、銘柄の買いと売りを同時に行うことをクロス取引と呼びます。
例えば優待クロス取引の場合、株主優待を受け取りたい企業の株式へ投資しているとき、持っている株式を保有したまま、信用取引で別途借りてきた同数の株式を売るという取引です。
つまり、同じ銘柄の株式を同株数の買いと売りの投資をすることで、株価の値動きを相殺する効果があります。
この状態のまま権利確定日を迎えると、株価の値動きに左右されず、株主優待をもらう権利を得ることができます。権利が確定したら、保有している株式を、借りてきた株式の返済にあてること(現渡)で株価の変動リスクを気にせずにすみます。
信用取引を組み合わせる分、取引手数料や貸株料などのコストが多少かかりますが「株主優待を低コスト・低リスクで得ることができる」投資手法です。優待投資の全てで利用できるわけではありませんが、知っておかなければいけない知識といえます。
優待投資で損をしないための鉄則3:優待が廃止・不要になる可能性も考えておくこと
株主優待を実施している企業の目的はさまざまですが、必ずしもずっと続くとは限りません。コロナ禍での環境変化を理由に多くの企業で株主優待を廃止する事例が目立ちました。業績悪化を理由に停止している企業もあれば、株主数の増加という目的を達成し、配当金に振り替えた企業もあります。
株式投資では良くも悪くも企業の業績や市場環境によって、リターンに大きな変化が起きます。そして、優待がもらえる権利落日に株式を保有していたとしても、その決算期から優待が廃止されれば、投資家にとって後出しのようですが、もちろん優待はもらえません。
また優待内容も最初は魅力的なものであっても、自分のライフスタイルの変化などによっては魅力がなくなる可能性もあります。その場合は違う優待を探すことを検討しましょう。
優待は必ずしもずっともらえるとは限りませんが、多種多様な優待がそろっています。思わぬ企業が自分にとって非常に魅力的な優待を用意してくれている可能性もあります。広い視野をもって楽しみながら優待を探すことが優待投資のコツです。
優待投資は優待だけを目的にしてはいけない
優待投資は楽しみつつも、リターンを計画的に
優待投資をしている投資家とお会いすると、売買して利益を得ようとするよりも優待や配当金を楽しみに投資をしているという方が多いようです。
長期投資を前提として株式投資をするスタンスとしては良いのですが、優待や配当金を中心に考えすぎて、肝心の株価動向を蔑ろにしてしまう方もいます。特に普段売買をしない前提だと、年数がたてばたつほど株価の値動きに無頓着になりがちです。
また優待銘柄へたくさん投資をし過ぎて、優待を使いきれないという方もいます。その場合は自分で使うだけでなくプレゼントに利用したり、優待で得たものを売却したりなど工夫をしています。
ただし繰り返しになりますが、「優待投資も株式への投資」なので、優待目的だけで購入するのではなく、株価の値動きを考慮した上で投資するようにしましょう。
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