2023年上期は業績回復も勢いを欠く、選択的医療需要の戻りの鈍さで
中国ではコロナ規制の廃止後に医療活動が正常化したが、医療サービス市場の回復が遅れている。腫瘍治療分野が底堅い半面、景気低迷を背景に、緊急性の低い医療サービス需要が低調。ただ、BOCIは病院経営の海吉亜医療(06078)について、業容拡大が下期の成長を後押しするとみている。また、中国政府の「反腐敗」(汚職取り締まり)キャンペーンによる医療サービス銘柄への影響に関しては、製薬・医療機器メーカーより軽微にとどまる見通しを示した。短期的な業容拡大効果と長期の安定成長見通しを理由に、不妊治療クリニック経営の錦欣生殖医療(01951)より、海吉亜医療を選好している。
海吉亜医療と錦欣生殖医療の2023年6月中間期の売上高はそれぞれ、前年同期比15.3%増の17億6,000万元、17%増の13億3,000万元。錦欣生殖医療の対外受精件数は13.9%増の1万4,731件に達し、海吉亜医療の施術回数も20%増の3万5,753件。海吉亜医療の場合、主力のがん治療業務は堅調だったが、選択的医療サービスの回復が遅れ、売上高は予想をやや下回った。海吉亜医療と錦欣生殖医療の上期の純利益は49%増の3億3,400元、18%増の2億2,400万元。うち海吉亜医療は通期で前年比25%を超える増益(調整後)を予想。錦欣生殖医療は20%の増収と、5億元の調整後純利益の計上を見込む。
中国では上期に病院経営が正常化し、選択的医療サービスの需要も急回復したが、一部分野はコロナ前の水準を回復していない。例えば愛爾眼科医院集団(300015)では、白内障手術が伸びる半面、視力矯正や検眼などの戻りが低調。歯科の通策医療(600763)を見ても、歯列矯正などの需要が弱く、一部サービスの客単価も低下した。
医療銘柄にとってはこの先、業容の拡大と買収が成長エンジンとなる見込み。海吉亜医療では2023年2月、7月に重慶市と山西省で新規の医療施設が稼働。山東省成武のプロジェクトも10-12月に稼働を開始する予定となっている。一方の錦欣生殖医療は2024年中に、既存施設の約5倍の床面積の大型クリニックを深セン市に開業する予定。国内の有力医療施設のほか、海外での買収にも目を向けている。
当局の「反腐敗」キャンペーンによる影響は限定的とみられるが、これは両社が医薬品・消耗品の調達をグループ単位で集中的に行っているため。医療サービス大手にとっては逆に、医師などの人材確保において、この政策がプラスに働く可能性があるという。
BOCIは医療需要の持続的拡大や反腐敗運動の影響が相対的に軽微であることを考慮し、医療サービスセクターに対する楽観見通しを継続。両銘柄の株価の先行きに強気見通しを据え置いた。個別では、業容拡大による短期成長見通しと、堅実な成長につながる高効率の経営モデルを理由に、海吉亜医療を選好している。一方、レーティング面の潜在リスク要因としては、業界政策が変わる可能性や医療保険支払方式の変更による予想外の影響、買収後の医療施設との非効率な統合、不適切な買収戦略などを挙げている。
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