ある時点でFRBは利下げとQE(量的緩和)への回帰を余儀なくされる!?

 注目の8月の米CPI(消費者物価指数)は、数字に大きなブレがなかったため無難に通過したとの声も多いが、CPIの前年同月比は+3.7%に押し上げられた。これは前月比では2022年6月以来の大きさである。

8月のCPIの前年同月比

出所:ゼロヘッジ

 後味はよくないものの、CPIの中身が中途半端な内容だったので、株式市場も為替市場も大きな変動はなかった。

ドル/円(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ナスダック100CFD(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 CPIを受けて著名投資家のピーター・シフは、「私が警告してきたように、CPIで測定されるインフレは底を打ち、現在上昇に向かっている。8月のCPIは前月比0.6%上昇、前年同月比3.7%上昇し、6月の最低値3%から上昇した。コア物価は前月比0.3%上昇、前年同月比4.3%上昇した。2024年の消費者物価上昇率は2023年よりもはるかに大きくなるだろう。おそらくFRB(米連邦準備制度理事会)は既に密かに2%のインフレ目標を放棄したのでしょう。次に、義務としての物価安定を静かに引き下げるだろう。その新たな暗黙の使命は、爆発的に拡大する政府に資金を提供することだ。結果的にインフレがどれほど上昇しても、債務を削減し、金融危機を回避するだろう」と述べた。

 これは、どういうことだろうか。インフレはもう終息したのではないのか?

【FRBは損をしている。それはアメリカの納税者が損をしていることを意味する。たいていの場合、赤字を出している企業は大きな問題を抱えており、最終的には潰れかねない。しかしFRBは違う。実際、中央銀行にとって赤字はまったく問題ではない。しかし、アメリカ政府にとっては大きな問題なのだ。

 FRBが資金を失うと誰が困るのか?たいていの場合、企業が損失を被ったときに痛みを感じるのは企業である。しかし、FRBが資金を失うと、米国政府が痛みを感じる。そして最終的には、あなたと私がそのツケを払うことになる。

 財政赤字が拡大するということは、政府は増税するか、さらに借金をしなければならないということだ。いずれにせよ、私たちは支払うことになる。より大きな税金を払うか、FRBが借金をマネタイズするためにお金を刷ってインフレ税を払うかだ。

 すでに借金に埋もれ、毎月巨額の財政赤字を垂れ流している政府にとって、これは良いニュースではない。つまり、アメリカ政府はさらに借金をしなければならなくなり、最終的にはFRBがマネタイズしなければならなくなるのだ。

 FRBのインフレ対策が失敗する運命にあるもう一つの理由がこれだ。インフレの竜を手なずけるために金利を引き上げ、バランスシートを縮小することは、連邦政府の負債を増やすことを意味する。そうなると、中央銀行が政府の借金と浪費の政策を支える圧力が高まる。

 ある時点でFRBは、政府が借金を続けられるように債券市場を操作するために、利下げとQEへの回帰を余儀なくされるだろう。つまり、もっとインフレを起こさなければならなくなるのだ】

出所:9月14日 ゼロヘッジ  『FRBは損失を出し、そのツケはあなたが払うことになる』

 米国が利上げを続けていられるのは、日本が異常低金利と大規模金融緩和を継続して、米国の金融市場、そしてそこから派生した世界のエブリシングバブルを支えているからである。

 バイデン大統領の米民主党は、票集めのために無駄に何かを配ろうとしている。バイデノミクスというものは存在しない。バイデンらがやっているのはカネを使うことだけである。そんなことはどんな阿保でもできる。

 問題なのは、ピーター・シフが指摘しているように、「有権者が政府から無料で何かを得ることがどれほど高価なことか理解していない」ことだ。政治家は自分のキャリアを永続させるために、その無知と貪欲さを利用する。

 米民主党の大統領選挙勝利のために、日本銀行は米国の大統領選挙が終わるまで低金利を継続し、国債の買いオペを続けてお金をバラマキ続けねばならない。そうしないと米国株が下がるし、米国の金利も上がり債務返済ができなくなる。

 日銀の政策にストップ・ロス(損切り)はない。いけるところまでいくということだ。植田和男日銀総裁が読売新聞に語った「物価上昇に確信が持てる段階」という時期は、来そうでいてなかなか来ないのではないだろうか?

中国は世界第2位のゴールド保有国!?

 中国が引き続きゴールドの備蓄高を積み増している。PBoC(中国人民銀行)が9月7日に発表した2023年8月末の外貨準備の内訳によると、ゴールドの保有量は約2,165トンと、7月末から29トン(1.4%)増えたことがわかった。増加は10カ月連続でこの期間に保有割合を1割以上積み増している。

 PBoCが公開している以上のゴールドを所有しているというのは、公然の秘密ではあるが、実際には公にされている数量の倍以上を持っていることが伝えられている。

 9月10日にゼロヘッジに投稿された記事「中国の推定公的ゴールド準備残高は5,000トンを超える」によると、中国の公的ゴールド準備残高は6月末までに5,029トンに達したという。

中国のゴールド準備残高の推移(推計)

出所:ゼロヘッジ

 WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)は、四半期ごとに、全ての中央銀行と国際金融機関が購入したと推定されるゴールド地金の総額を公表している。この推計値は、公的データと業界の情報に基づいており、報告された購入と報告されていない購入が含まれている。

 WGCの四半期推計は通常、中央銀行が報告した購入額を超えており、その差は公には報告されていない購入額を反映していると考えられている。これらの報告されていないゴールド購入のうち80%がPBoCの買いに関連しているという。

 2022年第3四半期を例にとってみよう。WGCは、この期間に中央銀行が推定459トンのゴールドを購入したことを明らかにした。世界の中央銀行によって報告された購入量は109トンだった。

 その差は350トンである。このうちの80%、つまり280トンはPBoCが密かに入手したものだと考えられる。なお、同期間(2022年第3四半期)における、PBoCのゴールド準備高の増減はゼロだと報告されている。

 PBoCは2023年上半期に103トンの購入を報告したが、公にされていない購入が250トンを占め、合計353トンの純増となったと推計されている。

 2023年上半期の購入量は2022年下半期に比べると34%減少したものの、中国のゴールドに対する需要は依然として強く、これがゴールド価格を押し上げる原動力の一つとなっている。中央銀行による買い増しは継続しており、ゴールド市場の長期的な強気トレンドを支えている。

世界のゴールド保有量の国別ランキング(2023年第2四半期末時点)

出所:Statistaのデータより筆者作成

 上のグラフは、Statistaの記事「2023年第2四半期時点 世界で最も多くのゴールドを保有する国トップ20(単位:トン)」のデータをもとに、2023年第2四半期末時点の国別のゴールド保有量をグラフ化したものである。もし推計通り、中国のゴールド保有が5,000トンを超えているとしたら、ドイツを上回る水準となることがわかる。

 なお、中国の民間ゴールド準備高は2万4,698トンと推計されており、官民を合計すると中国本土のゴールド準備高は2万9,727トンとなる。中国は米中関係の緊張が高まると共に「無国籍通貨」といわれるゴールドの公的保有を積み増している。

 人民元の国際化を目指す中国にとって、ゴールドの保有を増やすことは、ドル覇権への挑戦であるとの指摘もある。いずれにせよ、中国によるゴールドの爆買いが続く限り、ゴールド相場の下支えになりそうだ。

ゴールド/ドル(週足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ゴールド/円(週足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

9月13日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 9月13日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土居雅紹さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部長)をゲストにお招きして、「医療・保険・フード・ペット関連銘柄のバリュー」・「土居さんの新規注目銘柄」・「新製品発表のアップルの評価は!?」・「植田日銀総裁の観測気球と早期利上げ観測の裏側」・「アップル、テスラ、メタのテクニカル分析」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
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 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

9月13日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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