ブラックマンデーの再来はあるのか!?

 米民主党政権は株式市場が下がると直ちに市場に介入することが伝統なので、来年11月の米大統領選挙まで株式市場は大きなレンジ相場になると筆者は想定している。米民主党が選挙に勝つためには、なんでもありの相場となると思っている。

 さて、ブラックマンデーが起きた1986~1987年の米国株相場と、2022~2023年の米国株相場パターンが似ているというアナログチャートを最近よく見かける。

 ブラックマンデーとは、1987年10月19日の月曜日に起こった米国株市場の大暴落のことである。NYダウ(ダウ工業株30種平均)は、1日の取引で508ドル(22.6%)下落した。米国は財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」を抱えており、ドル安に伴うインフレ懸念が浮上したことがブラックマンデーの原因とされている。

 1987年当時と現在の状況で違うところは、「ドル安が到来していない」ことだ。

 金利上昇と財政赤字拡大とドル安が同時に起こるのは危険なカクテルであり、1987年のブラックマンデー相場を想起させる。現在の状況で、ドル安になれば危険なカクテルが完成する。すなわち、1987年のブラックマンデーの環境が出来上がる。

1987年と2023年のS&P500のアナログチャート(パターン分析)

出所:X・@The_RockTradingの9月4日の投稿

 誤解のないようにお断りしておくが、筆者は相場観やこの手のパターン分析で相場の売買を行うことはない。筆者は相場の実践では、基本的に以下のチャートのようなアルゴリズムを根拠とする「売買シグナル」を使う。

 相場の予測が当たることと、相場でもうけることには何の関係もない。相場の短期予測など半分は外れるし、長期予測は上げでも下げでもどっちか言っておけば、いつかは当たるだろう。相場の実践では予測があたってもタイミングが当たらないと役に立たない。漠然とした予測を当てても仕方がないのである。

 相場で大きな損をするのは、予測がはずれたからではない。大損失は、「間違ったポジションをとってしまった後の対処のまずさ」に起因している。人間の心理は相場で損をするようにできている。だから、相場は1にストップ、2にストップなのである。ストップロス注文を入れないと、相場は運だけの賭博行為になってしまう。

S&P500CFD(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

S&P500CFD(週足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 レーガン大統領のレーガノミクスの時代の米国の負債は1兆ドルだった。それがバイデノミクスの今は32兆ドルに達している。負債と金融バブルが今の世界景気を支えているのである。負債は天文学的に増加し、既に金利は上がっているが、この状況でドル安になるとどうなるかを、そろそろ視野に入れておくべきだろう。

 以下の記事は、著名投資家マーク・ファーバーのブラックマンデーの回顧である。

【1987年夏まで、米国だけでなく世界中に浮かれたムードが漂っていた。ところが、1987年夏までに、米国株が買われ過ぎている状況を懸念する予測者が出てきた。同年に株価が40%を超える上昇をみせたことを思い出してほしい。

 ロバート・プレクターもそのひとりである。彼は1978年に『エリオット波動入門』を執筆したときには、ダウ平均が3,000近くにまで上昇するだろうと強気を唱えていた(そして、誰にも信じてもらえなかった)。その彼が1987年9月初旬には弱気に転じたのだ。しかし、これは過半数の見解ではなかった。

 10月19日ブラックマンデー直前直後の日々は、私をひどく揺さぶった。極めて混沌としていたからだ。 自分の顧客も個人的にも稼ぐことはできた。しかし、ソロスのような賢明な人物でさえ2週間で資産の32%を失ったのだ。とすれば、私にも起こる可能性があると考えた。そこで、私は売り玉を減らし、しばらくの間、相場から離れると誓った。

米レーガン政権時代のNYダウ(週足1984~1988年)とブラックマンデーの波動カウント

出所:石原順

 先ほどロバート・プレクターが1987年9月に弱気に転じたと述べた。しかし、暴落直前に大量の売りを仕掛けて富を築いたファンドマネジャーは、友人のポール・チューダー・ジョーンズだった。彼が80年代に叩き出した運用成績はソロスよりもはるかに優れている。彼は1987年を約100%のリターンで終えたのだ!

 ポールは私が今まで会った中で最も偉大で、最も誠実なトレーダーである。彼には持って生まれたトレードの本能があるにちがいない】

(マーク・ファーバー)

出所:The Gloom, Boom & Doom

 株価が崩壊する時期について正確な予測は不可能である。だが、それが起こったときは、皆が一斉に逃げようとする(ミンスキーモーメント)ため、レバレッジのかかった多くの投資家は間違いなくその過程で押しつぶされることになる。臆病な筆者は、人より早く集団から離れることを選ぶ。

「景気後退が1年後なのか、4年後なのかは問題ではない。いま準備を始めないとすると、景気が良い間はうまくいくかもしれないが、不況になるとそれによって得られる利益よりもその投資によってもたらされる問題のほうが圧倒的に大きくなるだろう」

(ジェフリー・ガンドラック)

「今回は、ミンスキーですら考えてもみなかった大ブームを生み出しました。きわめて高いリスクの資産に投資した人たちの相当数は、自分たちがどんなに野放図なことをしているのか軽率にも考えてみなかったのです。自分は安全圏にいると思っていた彼らの多くは、実は、とんでもない投機かポンジー金融の仲間になっていたことに気がついて、大いに驚いたというわけです」

出所:2009年4月講演 『ミンスキー・メルトダウン-中央銀行家の教訓』
サンフランシスコ連銀総裁ジャネット・イエレン

9月6日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 9月6日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、加藤嘉一さん(楽天証券経済研究所客員研究員)をゲストにお招きして、「中国経済の実態」・「中国発の金融危機はあるのか!?」・「東アジアの地政学リスクと日本の危機」・「ブラックマンデーの再来はあるのか?」・「岸田政権の不人気で円買い介入は必至?」というテーマで話をしてみた。予定時間を20分超過しての熱いトーク! ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

9月6日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube