おトク感の高い金券優待株の中で、さらなる株主還元に期待できる割安株!

 クオカードや図書カード、ギフトカードなど金券優待を導入している企業には、建設、不動産、技術商社、学習塾、IT・ソフトウエア関連など、個人投資家に株主になってもらうことで、上場基準を満たす株主数や株式の流動性を確保したい会社が多くなります。

 そういった企業は業績自体は安定していて、財務面の不安は少ないものの、成長性や人気の面で魅力に乏しいため、日々の取引が少なく、株価の値動きも低調な傾向にありました。

 しかし、2023年3月末に東証がPBR(株価純資産倍率)1倍を割り込むような企業に対して株価水準を引き上げるための改善策を開示・実行するように要請を出して以降、流れが激変しました。

 東証の要請もあって、株価が会社の解散価値を下回るようなPBR1倍割れ企業は、増配や自社株買いなど株主還元策を積極化して、これまで以上に、株価を引き上げる努力をしなければならない状況に迫られているのです。

 楽天証券の「株主優待検索」の「検索条件を指定」欄で「優待月・9月」、「優待内容・金券」にチェックを入れると、111銘柄がヒットしました。

 9月優待は全部で383銘柄あるので、およそ全体の3割弱が金券優待株ということになります。

 この中から、優待権利を取得するのに必要な最低金額に対して、もらえる金券の額が高くておトク感の高いものを厳選。

 その中から、PBRが1倍を割り込んでいて、さらなる株主還元策に期待できそうな企業を選びました。

建設会社ビーアールHD(1726)がおトク感No.1の9月金券優待株!

 ビーアールホールディングス(1726)は橋梁建設などに強みを持つ中国・関西地盤の建設土木会社です。

 保有期間1年以上という条件がつきますが、9月・3月末に100株保有で500円分のクオカードが贈呈されます。

 株価は371円(2023年8月18日終値。以下同)なので、3万7,100円(100株)の投資金額に対して年間1,000円分のクオカードですから、他の金券優待株と比べて非常におトク感が高いといえるでしょう。

 同社は高速道路の橋梁建設・補修や新幹線の延伸工事などで毎年安定した収益が見込めるため、今期2024年3月期の予想配当利回りも3.23%と高い点も魅力です。

 PBRは1.23倍とすでに1倍を超えていますが、これは東証がPBR1倍割れ企業に経営改善を要請したことを受け、同社の株価が3月終値355円から7月終値402円まで、約13%ほど上昇したことも影響しています。

 8月4日に発表した2024年3月期第1四半期の純利益が前期比マイナス88%の減益となったことで株価は急落しましたが、これは設計変更による代金増額契約が第2四半期以降に期ズレしたため。

 2024年3月期の通期予想は16.6%の増収、26.7%の増益予想で変更ありません。

 今後、東証の要請に応じてさらに積極的な株主還元策が打ち出されれば、株価の上昇にも期待できるでしょう。

高配当&おトク度の高い金券優待株で、さらなる株主還元に期待できそうな銘柄!

2.朝日放送グループHD(9405)

 テレビ朝日系列の関西ローカルテレビ局として「探偵!ナイトスクープ」などユニークな番組を制作している朝日放送グループホールディングス(9405)

 100株保有 で9月・3月末に同社グループ番組特製クオカード500円分が保有期間に関係なく贈呈されます。

 6万6,800円(100株)の投資金額に対して年間1,000円分のクオカードがもらえるので、おトク感も高めです。

 今期2024年3月期の予想配当利回りも2.1%と高めになっています。

 業績は安定的に推移していますが、成長性に乏しいことからPBRは0.4倍と非常に低く、豊富な財務力も考えると今後、より積極的な株主還元策を打ち出すことに期待が持てます。

 2023年4月以降は日曜日夜22時の枠で全国放送のドラマ制作にも乗り出し、今クールは名作ドラマ「高校教師」などを手掛けた有名脚本家・野島伸司氏脚本の「何曜日に生まれたの」がオンエア中。

 同社のテレビ番組が大好きという方にもおすすめの9月金券優待株といえるでしょう。

3.たけびし(7510)

 たけびし(7510)は三菱電機系の産業用電機・電子機器を取り扱う技術商社です。

 100株保有で9月・3月末に1,000円分のクオカードが贈呈されます。

 株価は1,778円ですので、投資金額17万7,800円(100株)で年間2,000円分のクオカードがもらえます。

 同社は半導体関連や医療機器分野の成長が続いており、2023年3月期に続いて今期2024年3月期も過去最高益の更新と増配を予定していて、業績は好調そのもの。

 株価も順調な上昇が続いていますが、PBRはいまだ0.8倍台です。

 これまで3期連続で増配を続けて今期の予想配当利回りが3.26%に達するなど、株主還元に積極的な姿勢も好感度大です。

 金券優待の場合、もらえる金券の額だけにこだわるのではなく、配当利回りの高さや好業績、株主還元に対する積極性といった点にも注目したほうが、株価の上昇に期待できる銘柄を探すことができます。

4.ナフコ(2790)

 ナフコ(2790)は中国地方を地盤とする家具用品の「ツー・ワン・スタイル(TWO-ONE STYLE)」とホームセンター「ナフコ」を運営する小売企業。

 100株保有で9月末にUCギフト券500円分、3月末に同1,000円分が贈呈されます。

 3月末のUCギフト券は、同社の店舗で利用できるナフコ買物券2,000円分に変更も可能です。

 100株購入に18万5,600円の資金が必要ですが、年間1,500円分のUCギフト券がもらえるので満足感も高め。

 同社の業績は堅調で、今2024年3月期は2円増配の1株当たり58円の株主配当を予定しており、配当利回りは3.13%に達しています。

 PBRは実に0.3倍台と、同社が保有する純資産に対して株価は非常に割安です。

 そのため、大株主の中には、株価が割安な企業の株を買い集める外資系ファンドも名を連ねており、その動向次第では同社がより積極的な株主還元策を導入する可能性も考えられます。

 そんな情勢を反映して、2023年に入って株価も上昇傾向で推移しています。

5.TOKAIホールディングス(3167)

 東海地盤のLPガス供給会社で、水の宅配事業のほか、ケーブルTVやモバイルショップ運営会社を子会社に持つTOKAIホールディングス(3167)は、アクア(お水)優待が人気の9月優待株ですが、クオカードも優待品として選択可能です。

 100株保有で9月・3月末にクオカード500円分のほか、「富士の天然水さらり」500㎖×12本もしくは2,080円相当の「おいしい水の宅配便」12ℓボトル、グループレストラン食事券1,000円分など5つのコースから優待品を選択可能です。

 投資金額が9万700円(100株)と10万円を切っているのに、年間1,000円分のクオカードがもらえて、しかも、別の優待品も選択できるので、かなりおトク感の高い金券優待といえるでしょう。

 今期2024年3月期の予想配当利回りも3.53%と高くなっています。

 LPガスの供給という安定収益源に加えて、法人向けクラウドや通信インフラ設備事業などでは関西圏への進出にも力を入れており、業績面にもあまり不安要素がありません。

 クオカード以外にお水、食事券など5コースから選べるため、長期保有して半年ごとに気分を変えて優待品を選ぶといった楽しみ方ができる点も魅力といえるでしょう。

金券優待株は配当利回りとセットで考えるべき

 クオカードなどの金券優待は、現金代わりに利用できるので非常に使い勝手がいい優待です。

 換金性が高いという意味では、株主配当利回りに準ずる特典と考えてもいいでしょう。

 そのため、金券優待を選ぶ際は、株主配当利回りとセットで考える必要があります。

 さらにPBRの水準や業績面から見て、今後も積極的な株主還元策や株価の底入れに期待できそうな9月金券優待株には以下のような銘柄もあります。

金券優待の魅力が高く、株主還元に積極的な割安株にはこんな銘柄も!

銘柄名 購入金額
(100株)
配当利回り
(2024年3月期の予想値)
優待内容
PLANT(7646) 7万5,000円 2.93% 福井県に本社があるホームセンターとスーパー併設の「PLANT」を運営する流通企業。9月20日(権利確定日)に100株を1年以上保有すると、図書カードもしくは買物券1,000円分贈呈。3年以上保有で買物券のみ2,000円分に増額。業績は安定推移しており、配当利回りが2.93%と高く、毎年のように自社株買いを行っているにもかかわらず、PBR0.36倍と株価はいまだに超割安。
アイナボHD(7539) 11万6,900円 3.93% 関東圏で戸建住宅の外壁、サッシ、空調設備の販売・工事を行う建設会社。9月末に100株以上保有でクオカード1,000円分贈呈。コロナ禍以降のリフォーム需要の高まりで業績堅調。株価も上昇中だがPBR0.57倍といまだ割安。今2023年9月期も前期比2円増配の46円配予定。株主還元に積極的な点を評価したい。
エイトレッド(3969) 14万400円 1.85% クラウド型のワークフローシステムなどを提供するITソリューション企業。9月・3月末に100株保有で1,000円分のクオカード贈呈 。企業のデジタル化需要を受けて業績は好調。連続増配を続けており、2024年3月期の配当利回りは1.85%。株価は1,400円台で低迷中だが、2024年3月期も10%超の増収増益予想で株価の回復に期待したい。IT企業のためPBRは2.61倍で割安感はない。
城南進学研究社(4720) 3万8,900円 1.29% 神奈川県で個別指導塾「城南コベッツ」を運営。9月・3月末に100株以上保有で500円分のクオカード贈呈。4万円弱で100株を購入できるため、クオカード優待のおトク感は抜群。コロナ禍で対面授業ができず連続赤字で、株価は4年半近く400円前後で横ばい推移も、今期2024年3月期は黒字転換予想。新規展開する保育園事業の成長に期待したい。PBRは1.54倍。
※最低購入金額および配当利回りは2023年8月18日の終値で計算。