長期の資産形成は、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」など、非課税口座を活用してやっていくべきと考えます。
2014年にNISA制度が始まってから今年でもう10年目です。しっかり使いこなしている方もいます。ただ、制度がやや複雑できちんと理解せず、うまく使えていない方もいます。そこで今日は、よく聞くNISAの勘違い・失敗談について、まとめました。
ただ、現行のNISA制度を使って投資するのは今年で終わりです。来年(2024年)から新NISAが始まります。新NISAになっても、「やってはいけない」「気をつけねばならない」ことは基本的に変わりません。新NISAになることで何が変わるかも、ざっくり解説します。
今年で最後となる一般NISA・つみたてNISA概要
NISA・つみたてNISA口座で有価証券を購入すると、配当金や売却益が非課税になります。
課税口座(一般口座や特定口座)で投資すると、通常(分離課税選択の場合)、株でもうけた売却益や配当金などの運用益から20.315%(復興特別所得税含む)の税金(所得税と住民税の合計)が差し引かれます。NISA・つみたてNISAで投資すれば、非課税口座なので、運用益に税金はかかりません。
NISAには、2014年から始まった「一般NISA」、2018年から新たに始まった「つみたてNISA」の2種類があります。今年(2023年)まで続く現行NISA制度では1年間にどちらか一つしかできません。
今年使うのをどちらにするか、どちらか一つ選ぶ必要があります。両者の大きな違いは、非課税となる期間、年間上限額、対象商品の3点です。概要は、以下の通りです。
今年が最後となる現行NISA・つみたてNISA概要
「現行制度NISAが今年まで」というのは、現行制度で新規に投資するのが今年までという意味です。今年、現行NISAで投資した有価証券については、売却しない限り一般NISAなら5年、つみたてNISAなら20年、非課税での投資が続けられます。
気をつけたい、初歩的な失敗
以下、私がよく聞く三つの失敗談をご紹介します。同じ失敗をしないように気をつけてください。
失敗談1 NISA口座を開く前に株を買って、後からNISA口座に移そうとしたが移せなかった
課税口座(特定口座や一般口座)で買い付けた株や投資信託を、後からNISA口座に移すことはできません。まず、NISA口座を開き、NISA口座で買い付けた株や投資信託だけが、非課税の恩恵を受けることができます。
最近日本株で、配当利回りが4%を超える銘柄が増えています。そこで、NISA口座を開いて、高配当利回り株に長期投資しようと考える方が増えています。それならば、まず、NISA口座を開いてください。先に株を買ってしまって、後からNISAに移そうとしても、移せません。
【失敗しないための対策】
NISAで非課税投資を始めようと思っている方は、何はともあれ、まずNISA口座の開設から始めましょう。
NISA口座を開いてから買い注文を出すとき、口座区分の欄で、NISA口座に以下の通りチェックを入れて注文を出すようにしてください。
特定口座や一般口座にチェックをして注文を出すと、NISA口座に入りません。
失敗談2 昨年12月に駆け込みでNISA口座を開いたが、12月中に何も買わなかった
現行のNISA口座では年間120万円まで、非課税の投資ができます。ただし、昨年(2022年)のNISA口座は、2022年中に投資する必要があります。使わずに残った非課税枠は、次の年に引き継げません。したがって、2022年12月にNISA口座を開いても、2022年中に何も買わなかったならば、2022年の非課税枠は全て消滅します。
今年(2023年)、NISAを選ぶか、つみたてNISAを選ぶか考える際、一番重要な決め手は、「2023年にいくら投資できるか」です。2023年に120万円のNISA非課税枠を得ても、2023年末(受渡ベース)までに40万円までしか投資しなかった場合、残りの80万円の非課税枠は消滅します。2024年に引き継ぐことはできません。
1年間に40万円だけ投資する予定ならば、上限40万円のつみたてNISAを選んだ方が良いと思います。つみたてNISAは投資上限が年間40万円ですが、非課税になる期間が20年あるからです。一方、NISA口座は120万円まで投資できますが、非課税期間が5年間しかありません。
【失敗しないための対策】
2023年のNISA枠は、余裕資金があるならば、年内になるべく上限まで投資するようにしましょう。既に、120万円の投資資金がある方は、非課税枠が大きいNISAを選んだ方が良いでしょう。年間の投資額が40万円以下ならば、つみたてNISAを選んだ方が良いと思います。
2023年12月末までに受け渡しが済むように投資するためには、日本株の場合は12月27日(水)までに買わなければなりません。12月27日(水)に買えば、12月29日(金)に受け渡し(株主として株主名簿に記載)されるので、2023年のNISA枠に入れることができます。
ところが、2023年12月28日(木)に買うと、受け渡しが年明けの2024年1月4日(木)となるので、2023年のNISA口座に入れることはできません。
失敗談3 2022年に課税口座(特定口座)で10万円の売却益を出し、NISAで10万円の売却損を出したが、損益通算できなかった。
NISAの欠点として知っておく必要があるのは「損益通算」ができないことです。課税口座(特定口座)で10万円の売却益と10万円の売却損を出せば、「損益通算」されます。売却益と売却損が相殺され、ネットで売買損益は出ていないので、税金はかかりません。
ところが、課税口座で10万円の売却益を出し、NISAで10万円の売却損を出した時は、損益通算ができません。10万円の売却益に対し、分離課税を選択していると、2万315円(20.315%)の税金(所得税および住民税)がかかります。NISA口座で10万円の売却損を出しても、払った税金は戻ってきません。
【失敗しないための対策】
NISAでは、短期的に損切りが必要になる可能性のある投資(小型材料株への短期投資)はしない方が良いと思います。
NISAは長期的な資産形成に向いている制度です。低コストのインデックスファンド(指数連動型投資信託)などに、じっくり長期投資するのが良いと思います。個別株に投資するならば、じっくり長期で投資できる銘柄を選んだ方が良いと思います。例えば、長期的に安定成長を期待する株や、大型の好配当利回り株が良いと思います。
2024年に新NISAが始まったら、何が変わるか?
現行のNISA制度は2023年までで終わります。2024年から新NISA制度が始まります。ただし、新NISAになっても、上記に挙げた失敗をしないように気を付けるべきことは変わりません。
新NISAになっても、特定口座などで保有中の有価証券を、NISA口座に移し替えることはできません。NISA口座で買い付けた銘柄だけが、NISA口座に入ります。
新NISAになっても、2024年に付与されたNISA投資枠は、2024年中(受け渡しベース)に投資しないと消滅するのも同じです。ただし、1年間の非課税投資枠が360万円に拡大しますので、なかなか全て使い切るのは難しいと思います。
また、新NISAになっても、課税口座と損益通算できないのも同じです。したがって、新NISAになっても、このレポートで挙げた3大失敗は、やらないように気を付けましょう。
新NISAは、現行制度とどのように変わるのでしょうか。ざっくり大きな違いだけ説明すると、以下の通りです。
現行NISAと新NISA比較
相違点1 新NISAでは、成長投資枠(一般NISAの後継)とつみたてNISAを併用できる
現行NISAでは、一般NISAかつみたてNISAか1年間にどちらか一つしかできません。ところが新NISAでは、成長投資枠(一般NISAの後継)とつみたてNISAを両方使うことができます。
相違点2 新NISAでは、毎年新しく付与される非課税投資枠が360万円に大幅拡大
現行制度では、毎年新しく付与される非課税投資枠は、NISAならば120万円、つみたてNISAならば40万円です。新NISAではそれが大幅に拡大します。成長投資枠(NISA後継)で年240万円、つみたてNISAで年120万円、合わせて1年間に360万円の非課税投資ができるようになります。
相違点3 新NISAでは、非課税投資期間が「無期限」に
現行NISAは5年、つみたてNISAは20年で非課税期間が終了します。終了後は、課税口座(特定口座など)に保有する有価証券が移されます。
新NISAは無期限ですので、NISA口座で買い付けた有価証券は、売却しない限り、恒久的に非課税投資が続きます。
相違点4 新NISAで生涯投資額の上限1,800万円が設定される
新NISAでは、毎年360万円の投資枠が付与されます。もし毎年上限360万円の非課税投資をしていっさい売却しないと、5年で1,800万円(簿価ベース)の非課税投資ができます。それが生涯投資額の上限となるので、それ以上は新規の投資枠が付与されません。
ただし、新NISAで投資した有価証券を売却した場合、上限1,800万円を超えない範囲で、新たに非課税で投資できる枠が復活します(簿価ベース)。復活した枠で投資できるのは、1年間では360万円までです。それを超える枠が復活した場合、2年以上をかけて投資していく必要があります。
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