調整局面を迎えた米国株
米国株が久しぶりに調整局面を迎えています。米国を代表する株価指数であるS&P500種指数は7月27日にザラバ高値4,607.07を付けた後、8月の声を聞いてからは軟調な地合いが続いており、高値からの調整幅は▲3.1%になりました。
直接の引き金
今回の下げの直接の引き金になったのは8月3日引け後に発表されたアップル(ティッカーシンボル:AAPL)の決算がいまひとつだったことによります。
アップルの決算はEPS(1株当たり利益)が予想$1.20に対し結果$1.26、売上高が予想817.9億ドルに対し結果818億ドルと辛うじてコンセンサス予想を上回ったものの、iPhone、iPad、ウオッチなどのハードウエアの売上高が予想を下回り、消費者が新しいデバイスを買わなくなっていることが印象付けられました。一方、サービス売上高は予想を軽々上回りました。
サービスは利幅の大きいビジネスであり、その部分が好調だということは歓迎すべきことです。しかし9月に発売が予定されているiPhone15はスクリーンの歩留まりが悪いため必要な数量を新発売時にそろえることが難しいのではないか?と懸念されています。
アマゾンはAWSの成長鈍化が目をひいた
同じく8月3日引け後に決算発表したアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)はEPSが予想35¢に対し結果65¢、売上高予想1,314.9億ドルに対し結果1,343.8億ドルと良い数字だったのですが、成長のけん引役であるAWS部門の売上高成長率は前年同期比わずか+12.23%にとどまりました。
またAWS部門の営業マージンは前年同期の29.0%から今期は24.2%に急落しており、値引きが横行していることを伺わせました。
テスラの財務部長が交代
これは決算のニュースではないのですが8月7日にテスラ(ティッカーシンボル:TSLA)のザッカリー・カークホーン財務部長が退任すると発表されました。
彼はウォール街のアナリストからウケが良く、将来はイーロン・マスクの後を継いでテスラのCEO候補だと目されていた人物ですので、彼が居なくなると長期でのテスラのリーダーシップ交代が不透明になることを意味します。
データドッグのガイダンスはクラウド企業全般に対する不安をあおった
ウェブサイトがきちんと作動しているかを監視するソフトウエアならびにサービスを提供しているデータドッグ(ティッカーシンボル:DDOG)が8月8日に発表した第2四半期決算ではEPSが予想28¢に対し結果36¢、売上高が予想5.02億ドルに対し結果5.09億ドルと予想を上回ったものの2023年の売上高が予想21億ドルに対し新ガイダンス20.5億~20.6億ドルと落胆を誘う数字だったことから▲20%を超える急落となりました。
ある意味、同社はクラウド関連企業全般のビジネスの指標となることから多くのクラウド関連企業が連れ安を演じました。
アップスタートの急落は消費者ローンに対する懸念を抱かせた
AIを使って消費者向けローンを提供するアップスタート(ティッカーシンボル:UPST)の決算はEPSが予想▲7¢に対し結果6¢、売上高が予想1.35億ドルに対し結果1.36億ドルと予想をクリアしていたものの第3四半期の売上高が予想1.55億ドルに対し新ガイダンス1.4億ドルと低かったことを嫌気し同社株は売られました。
ガイダンスが低い理由として、実際にローンを組むことを担当している提携先銀行が新規ローンを乱発することに消極的になっていることが指摘されました。同社の手掛ける無担保ローンは景気後退局面で特にリスキーだと考えられています。
工業関連株が軒並み見通しを下方修正
さらにパーカー・ハネフィン(ティッカーシンボル:PH)、ドーバー(ティッカーシンボル:DOV)、ロックウェル・オートメーション(ティッカーシンボル:ROK)などの工業関連株がそろって見通しを下方修正しました。
その理由として新型コロナ後の経済再開で一時は顧客企業が多めに在庫を取っていたのだけれど、ここへきてたくさんの在庫を抱えるコストに気がついた取引先が注文を絞り込み始めたこと、さらに中国に対して工作機械を輸出しているスイス、オーストリア、ドイツの企業が口々に対中国ビジネスのスローダウンを訴えていることなどが原因となっています。
金利について
8月に入ってからの株式市場の軟調は、金利の見通しが大きく変わったからではなく、企業のニュースが原因です。ただし今後の金利動向も要注意です。10年債利回りは安値をだんだん切り上げてきており4.25%を超えるようなら新波動入りとなります。
債券利回りと株式バリュエーションはシーソーの関係であり、一方が高くなると他方が下がるリスクがあります。そのことは今後金利が上昇すれば株式は追い打ち的なネガティブ材料に遭遇するリスクがあることを示唆しています。
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