7月のビットコインイベント
7月6日 | ブラックロックCEO、BTCは国際的資産 |
7月13日 | リップル、SECに部分勝訴 |
*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た8月見通し
7月の振り返り
7月のビットコイン価格(円)とイベント
上値重い展開
7月のBTCは上値の重い展開。
円建てで450万円台、ドル建てでも3万2,000ドル手前まで上昇、年初来高値を更新したが、その後は上値を重くし、じりじりと2万9,000ドル台に値を下げている。
6月、ブラックロックを皮切りにBTC現物ETF(上場投資信託)の申請が相次いだが、その肝となる価格操作に関する監視協定を結ぶ交換所の名前が抜けているとSECから指摘を受け、各社コインベースと記載して再申請、同社株が急上昇、BTCも3万1,000ドルに乗せ、円建てでも450万円台に乗せ年初来高値を更新した。
さらにブラックロックのラリー・フィンクCEOがフォックスTVでBTCは金融に革命を起こす、インフレや通貨の切り下げに対するヘッジとして国際的資産だとコメントしたことが好感され、ドル建てでも年初来高値を更新した。
さらにSECがXRPを証券としてリップル社らを訴えていた裁判で、XRPの機関投資家向け販売は証券に該当する「投資契約」にあたるが、一般向け販売は「投資契約」に当たらないとする判断を下した。これを受け米国内で停止されていたXRPの売買を再開する交換所が相次ぎ、XRPは約2倍近く、1ドル手前まで急騰、BTCも年初来高値を更新し3万2,000ドルに肉薄した。
しかし、XRPの反落やBTCは2021年から塩漬けになっているロングポジションのやれやれ売りなどにBTCは上値を重くすると、バイナンスの出来高水増し報道をきっかけに、1カ月近く続いていたレンジを下抜けた。
すると、それまでサポートだった2万9,500ドルがレジスタンスとなり、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)が予想通り利上げされたものの、パウエル議長の会見がややハト派だとして2万9,500ドルを抜けるもすぐさま失速するなど、上値の重い展開が続いている。
このように7月のBTC相場はドル建てで見ると年初来高値を更新した後は横ばい圏での取引となったが、その割に円建て価格が下がったのはドル/円の影響だ。
一般にBTC市場はドル/円より遥かに変動が大きいのでドル建てで見ても円建てで見てもさほどBTCのパフォーマンスは変わらない。しかし、7月のBTC相場は変動が小さく、逆にドル/円が乱高下した分、為替の影響が目立つ格好となった。
BTC/USDとドル/円の変動率
具体的には内田真一副総裁のYCC修正発言で145円から137円台に急落、植田和男総裁の発言で修正期待が後退、142円近辺に反発。
結局、日本銀行はYCCを修正、ドル/円は138円近辺まで値を下げたが、修正は運用の変更で政策変更ではないとの政府・日銀の説明もあり143円台に反発した。このように5円単位で乱高下するドル/円相場に円建て価格は振らされる格好となった。
上値が重い二つの理由
7月のBTC相場はラリー・フィンクCEOのポジティブ発言やリップル裁判が同社の(部分)勝訴といった買い材料があった割に上げ渋った。特に後者ではXRPが2倍近く急騰したにもかかわらずBTCは年初来高値を数百ドル更新するに止まった。これだけ上値が重いのには二つ理由があると考える。
一つは従来から申し上げている「やれやれ売り」だ。3万~4万ドルは2021年から2022年にかけて滞空時間が長く、新値を更新するごとに塩漬けになったロングの売りをこなす必要がある。7月も2度高値を更新するも、その都度、戻り売りに押し返されている。この水準を上抜けるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
もう一つは積極的に買う理由に欠ける点だ。先月も指摘したが、例えば現物ETFは広い投資家の参加を促す大きな材料だが、あくまでBTCを買いやすくするだけで、買うかどうかは別の話だ。実際の機関投資家マネーの流入に至るにはインフラの整備に加えて積極的な買い材料が必要だろう。
ラリー・フィンクCEOの発言の意味
この点で面白い動きが見られた。7月6日ブラックロックのラリー・フィンクCEOはフォックスTVで「インフレに対するヘッジ、国の厄介な問題に対するヘッジ、あるいは通貨の切り下げに対するヘッジとしてゴールドに投資するのではなく、明確にしておくと、BTCは国際的資産であり、特定の通貨に基づいていないため、代替手段として利用できる資産となり得る」と発言した。
インフレヘッジや法定通貨の代替手段としてのニーズを認めた格好で注目を集めたが、「国際的資産」と言われてもやや回りくどく、分かりにくい部分があった。
ところが8月2日大手格付け会社フィッチが米国債を格下げ、BTCが買われた。格下げの理由は社会保障費と医療費の増加による財政の悪化と債務上限問題に代表される政府のガバナンスの低下だ。
確かに、あれほどデフォルト一歩手前まで追い込まれながら、AAAというのはさすがに忖度(そんたく)が過ぎる。もし自国通貨建て債務はデフォルトしないというならば、世界中の、例えば日本国債だってAAAになる(実際はA)。これはまさに米「国の厄介な問題」により「特定の通貨に基づいていないため、代替手段としてBTCに逃避フローが出たケースだ。
進む米ドル離れ
実は、ここ数カ月、BRICSやASEAN、中東を中心に急速にドル離れが進んでいる。米ドルが基軸通貨であるということは、米国のメリットであると同時に、世界の公共財を提供する責務も負っている。しかし、ここ数年の米国は、自国の利益や国内の党派争いのために米ドルを利用し過ぎた。その代表例がドル決済の制裁利用や債務上限にかかる瀬戸際戦略だ。
「米国の金融制裁の実施がドルの国際的覇権を弱体化させつつある」とはイエレン財務長官の発言だ。こうして愛想をつかした人々が米ドルに代わるものを模索し始めている。そうした中で、BTCもその役割の一部を担いつつあり、これが次のBTCブームのメインエンジンとなりそうだ。
景気は減速
米ISM製造業・政策金利・非農業部門雇用者数・CPI
金融政策を見ると、FRB(米連邦準備制度理事会)は7月に予想通り25bp利上げ、明言は避けているが利上げのペースを2会合に1回にペースダウンした。このペースで言えば次は11月となり、市場は3割程度織り込んでいる。
一方で、7月のISM製造業、雇用統計、CPI(消費者物価指数)はいずれもインフレ鎮静化を示唆するものであった。市場ではこれを受けて、インフレを抑制しつつ、景気の後退を避ける、バラ色のシナリオが浮上している。
米大中企業向けローン基準を厳格化した銀行の割合(FRB調査)
ただ、経験的に、人類が景気循環を克服しただの、ニューエコノミーだの、ゴルディロックスだの言い始めると早晩クラッシュが到来しがちだ。ゴルディロックスの検索数は2007年と2018年に増加したが、リーマンショックとコロナショックで終焉(しゅうえん)した。
問題はいつ景気後退が来るかだが、FRBは第2四半期の融資担当者調査で貸出審査を厳しくした割合が5割を超えたとした。直近で5割を超えたのは2001年1月、2008年4月、2020年7月といずれも景気後退期と重なっている。
銀行が融資を絞った結果、景気が後退したのか、景気悪化を先取りして審査を厳しくしているのか、両方だと思われるが、いずれにせよコロナショックが人類が経験する最後の景気後退でない限り、いずれリセッションは到来するし、既に米2-10年国債金利が逆転して1年経過したが、サンフランシスコ連邦準備銀行の調査によれば第2次大戦後、9割以上の確率でこの逆イールドが発生してから6カ月から2年以内にリセッションが到来している。
ただ、景気後退はそれが来るまでいつ来るかが分からないのが問題で、そうした動きが実際の指標で確認されるのはもう少し後かもしれない。
暗号資産を巡る米政界の三つ巴の対立
ブラックロックらが申請しているETFの行方や暗号資産に強硬姿勢を見せるSECと業界の争いも長期戦の様相だ。SECは7月13日ブラックロックらのBTC現物ETFの申請を受理、19日に官報に掲載された。一応、審査の期限は45日とされているが、最大で210日まで延長可能だ。
官報掲載日を起点とすれば最初の期限が9月2日、最終期限が2024年3月30日となる。SECはコインベースに対しBTC以外の暗号資産全てを上場廃止するように迫っていたもようで、XRPを証券に該当しないとした判決にも不服を持っている様子。
一方、共和党のデサンティス・フロリダ知事はバイデン政権の暗号資産に対する「戦争」を終わらせることを公約に掲げ、マクヘンリー議員などは暗号資産を定義・規制する法案を下院で通過させた。
このように、暗号資産の取り扱いは、民主党VS共和党ないし民主党左派VS民主党中道派といった高度に政治的な問題となりつつあり、ゲンスラー委員長などはEウォーレン議員など民主党左派を後ろ盾にしているといわれている。その結果、来年11月の選挙まではこうした対立に決着がつかず、暗号資産をどう取り扱うかも宙に浮いてしまう可能性がある。
このように、ドル離れの動きや金融引き締めの終焉がBTC相場を下支えしそうだが、新値水準は戻り売り圧力が強く、本格的に上昇するにはまだ時間がかかりそうだ。
テクニカル面で見たBTC相場見通し
BTC/JPY(日足)
ドル建てで見ると、BTCは2万9,500ドルから3万1,500ドルのレンジ取引を1カ月近く続け、何度か新値を付けてレンジブレークを目指したが、上値を押さえられた。そして力尽きたようにレンジの下限を割り込んだが、一目均衡表の雲の上限付近で下げ渋った。
この結果、最後の1週間ほど2万9,000ドルから2万9,500ドルの狭いレンジでの取引が続き、月末から8月頭にかけていったん、雲の中に突入したが、すぐさま反発し雲の上に出た。
8月は雲の上限がサポートとなって、3万1,000ドルを目指してじりじりと上昇するのか、雲の中に入り、雲の下限2万8,000ドル前半にじりじり値を下げていくのか、早晩方向性が見えそうだが、今のところまだ決着はついていない。
BTC/JPY 一目均衡表
円建てで見ると、一目均衡表の雲の中に入り方向感を失っていたが、いったん上抜け、再び雲の中に入ってしまった。この上抜けがダマしに終わるか、どうなるかは、まだこれから。ドル建てと同様、岐路に立っている。
BTC/JPY パターン分析
一方、パターン分析で見ると、6月の上昇のちょうど半値押しでサポートされ、下降チャネルの上限をトライしている。この形は上昇フラッグと言って、上昇トレンド継続、レンジ上抜けを示唆している。
足元では6月後半から7月前半のサポートだった425万円近辺がレジスタンスとなっており、上抜けるのに少し手間取るかもしれないが、上抜けする可能性は十分ある。
BTC月別騰落一覧
恒例の月別の騰落率で見ると、8月は9月に次いでアノマリー的に弱い月だ。ただ、そうとは言っても5勝7敗でこの数字を根拠に下がりそうとは言い難い。
また6月が陽線で7月は陰線となったが、このように陽線から陰線に転じた場合に翌月陰線が続くか陽線に転じるかはほぼ半々で傾向が見られない。アノマリー的にはやや弱いけれど強いインプリケーションはない。
まとめると、8月のBTC相場は少し方向感が出にくい展開になりそうだ。2万8,000ドル、400万円に向かってじりじりと下げていくのか、3万1,500ドル、450万円に向かってじりじりと値を上げていくのか、ちょうど月初の雇用統計とCPI辺りが岐路となりそうだ。
アノマリー的にはやや弱そうだが、米国債の格下げの影響や米景気後退の兆し、また下降チャネル上抜けによる上昇フラッグ完成の可能性から、どちらかといえば上方向かと考える。
2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)
6月15日 | ブラックロック、BTC現物ETFを申請 |
6月6日 | SEC、コインベースを提訴 |
6月5日 | SEC、バイナンスを提訴 |
5月23日 | 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道 |
5月22日 | ビットコイン・ピザデー |
5月8日 | PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止 |
4月25日 | コインベース、SECを提訴 |
4月24日 | ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明 |
4月19日 | SEC委員長、下院公聴会で批判集まる |
4月12日 | ETH上海アップデート |
3月27日 | CFTC、Binanceを提訴 |
3月22日 | コインベース、SECから訴追予告受け取る |
3月22日 | SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴 |
3月12日 | シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ |
3月8日 | シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表 |
2月23日 | ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性 |
2月13日 | パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止 |
2月9日 | クラーケン、ステーキング停止 |
1月19日 | ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請 |
1月17日 | 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕 |
*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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