※この記事は2021年3月26日に掲載されたものです。

 資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。

 このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。

お悩み

投資信託はインデックスファンドとアクティブファンドのどちらを選ぶべきか?

加納伸二さん(仮名)会社員・55歳(既婚)

 加納さんは、会社で早期退職の募集があったことをきっかけに転職を決意。転職先も決まり、これからも現役で働き続けるため、目先の生活に大きな心配はありませんでした。そして、定年より早めに退職したことで、割り増し退職金を受け取ることができました。いますぐ使う予定もなかったため、この退職金は資産運用の資金として、投資信託(ファンド)の購入を検討しています。

 ファンドを選ぶにあたって、友人たちに相談したところ、「まずは運用コストが安くて、平均的なリターンが期待できるインデックスファンドから始めるといいよ」「いやいや、将来のために運用するなら、今後伸びそうな業界をプロが見極めて投資してくれる、アクティブファンドがいいんじゃないかな」というアドバイスをもらいました。

 投資期間は今後10年間ぐらいのイメージで、大きな損失にならなければいいと考えていたので、当初は平均的なリターンで十分と思っていました。一方で、余裕資金でもあるので、将来性のある業界や企業に投資してもいいとも考えています。

 加納さんは、インデックスファンドとアクティブファンド、どちらを選ぶべきなのでしょうか。

アクティブファンド選びのウソホント(1)インデックスとアクティブの違い

 投資信託は、その運用方法による違いから主にインデックス運用を行う「インデックスファンド」とアクティブ運用を行う「アクティブファンド」の二つに分けられています。

インデックス運用とは?

 インデックス運用とは、「市場全体の平均的なリターンの獲得」を目的に運用されています。つまり、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、代表的な株式指数などをベンチマークとし、これらの指数と同じ値動きをすることを目的として運用されています。良くも悪くも平均的な投資結果を目指す投資信託といえます。

アクティブ運用とは?

 その一方、アクティブ運用は「市場全体の平均的なリターンを上回る運用成果」を上げようとするものです。現在、投資家が購入している投資信託の残高(純資産総額)は、全体で約145兆円。そのうちインデックスファンドが約71兆円(49.0%)です(※)。インデックスファンドに該当しないものの大半はアクティブファンドに分類されています。

※2021年2月末時点。出所:一般社団法人投資信託協会

アクティブファンド選びのウソホント(2)投資すべきはインデックス?アクティブ?

 最近の投資の傾向は、コストの安いインデックスファンドが好まれています。その一方、インデックスファンドよりも、コスト面で割高になりがちなアクティブファンドを避ける傾向があります。しかし、コスト面だけを見て選ぶのは、投資の幅と投資成果を自ら狭めていることになります。

 そこで、正しく投資先を判断する助けになるべく、アクティブファンド選びのよくある誤解や勘違いをご紹介します。

アクティブファンド選びのウソ1:常にプラスのリターンを目指している

 アクティブファンドの運用方針は、市場全体の平均的なリターンを上回る成果を得ることです。しかし、これはアクティブファンドが常にプラスのリターンを見込んでいることではありません。

 例えば市場全体のリターン(利益)が▲10%の時、アクティブファンドの運用成績が▲5%だとすれば、運用成果としては目的を達成しているといえます。

 ただ投資家にとっては、市場環境がどうであろうとマイナスであることに変わりないため、感情面では正当にアクティブファンドを評価することができないのです。

アクティブファンド選びのウソ2:運用コストが高いのでインデックス運用の方がいい

 アクティブファンドがインデックスファンドに比べて人気がない理由として、運用コストの高さが挙げられます。同時にアクティブファンドが比較対象とされるベンチマークのインデックス運用と比べて、運用成績が大差ないか、むしろ負けているファンドがあることも理由に挙げられます。

 しかし、ベンチマーク以上の運用成果を上げているアクティブファンドはあります。単純に「アクティブファンドだからダメ」ではないことを確認してください。

アクティブファンド選びのウソ3:アクティブ運用を選ぶより、株式投資で分散がいい

 主に株式に投資する投資信託であれば、その中身は株式に分散投資しています。そのため、株式投資の経験がある人なら、初めから株式を複数銘柄選んで投資すればコストがかからずに済むからいいという人がいます。

 しかし、アクティブ運用では自分で株式の銘柄を調べたり、売買管理することをプロに任せています。そのサービスに対するコストを支払うことは当然。ファンドの優劣を比較するものではありません

アクティブファンド選びのウソホント(3)アクティブファンドのよい選び方とは?

 投資信託は、インデックスファンドで充分という考え方もありますが、よりよい運用成果を求めたり、それぞれの目的に沿った運用を目指したりする場合には、アクティブファンドも検討すべきでしょう。

 ここからは、誤解されがちなアクティブファンドの魅力と選ぶときのポイントをお伝えします。

アクティブファンド選びのホント1:コスト・パフォーマンスのよいファンド選び

 アクティブファンドが否定されがちなのは、インデックス運用と大差ないのにコストだけ高いという商品もあることが理由でしょう。つまりは、コストに見合ったパフォーマンス(運用成果)や目的に沿った運用ができているなら、十分コストに見合っていると考えるべきでしょう。

 ただし、投資信託は中長期の運用成果を目指しているので、単年度での運用成果を基準に選ぶことは、投機的な投資に近づく懸念があるので、要注意です。少なくとも「3年以上」の運用実績があるアクティブファンドであれば、その実績を見てから投資の可否を検討する価値はあるでしょう。

アクティブファンド選びのホント2:リターンを追求するだけが運用ではない

 結果だけ見れば、リターンが大きければ大きいほどいいファンドといえるかもしれません。しかし、実はリターンを追求するだけが運用ではありません。

 リターンではなくリスク(価格の変動率)を抑えた運用、配当金を重視した運用、特定のテーマに沿った運用など、時間や資金がかかり過ぎて個人ではできない運用も、投資信託を通じて実現することが可能です。

 投資信託は、リターンだけではなく自分の「投資目的」にあった運用をしてくれる商品を選ぶことが大切です。

アクティブファンド選びのホント3:投資のバリエーションが豊富にある

 投資の選択肢は多岐にわたります。資産を選ぶにも国内外の株式・債券・REIT(リート:不動産投資信託)を基本に何千何万銘柄もありますし、どのような資産配分で投資するのか、売買や見直しのタイミング、相場の変動にどのように対応するのかなど、考え出すと、きりがありません。 

 そんなときにアクティブファンドは、多種多様な「投資方針」の中から選ぶことができます。市場平均のリターンを狙うインデックス運用に比べて、幾千もの選択肢の中から「自分好みの運用」を探せる商品といえるでしょう。

資産運用のポイント

資産形成はメリット・デメリットの見極めが大事

 現在、金融緩和の影響や運用コストの引き下げが投資家から求められた結果、インデックス運用が資産運用の中心的な存在となっています。特に資産形成ではつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の影響もあり、低コストのインデックスファンドを勧められることが多くなっています。とはいえ、相場環境や個人のライフプランの変化によって適切な運用スタイルに合わせることが重要です。

 アクティブファンドはコスト面だけで、投資の選択肢からはずされることもありますが、きちんとメリット・デメリットを把握した上で、検討することが資産形成の力になるのです。

【要チェック】
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