新NISA、成長投資枠とつみたて投資枠の違いをまず確認
2024年からスタートする新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)、書店にも書籍が並び始めました。かくいう私も、NISAとiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の併用戦略について一冊書いて、7月下旬には書店に並ぶ予定です。よろしくお願いします。
さて、本書を書いていて改めて感じたことが「成長投資枠とつみたて投資枠の使い分け、あるいは組み合わせ」の戦略が必要になってくる、ということです。
改めて二つの枠のポイントを確認しますと、
- 同じ投資信託を購入しても「枠」としては別もので把握される
- つみたて投資枠は定期購入のみ、成長投資枠は定期購入もスポットも可
- つみたて投資枠を未使用にすると非課税枠の上限は1,200万円となってしまう
- 年間投資可能枠でいえば成長投資枠のほうが大きい(つみたて投資枠年120万円、成長投資枠年240万円)
といったあたりの違いを理解し、かつ有効に活用する必要があります。
積立投資とスポット投資を組み合わせることが活用の鍵
この中で一番悩ましいテーマは「つみたて投資枠は定期購入であることと、成長投資枠は1,200万円までという上限があること」という異なる性格をどう組み合わせるかだと考えています。
というのは、NISAの条件をフル活用したければ、基本的には「定期購入を設定」しなければいけません。そうしなければ1,800万円の上限を満たすことは絶対にできません。
一方で、今まで一般NISAでスポットでの売買を好んでいた投資家にとってはスタンスの異なる手法となります。また一般NISAでの売買は個別株が多いと思われますので、投資信託を利用していなかったという人もいるでしょう。
「積立投資未実施だった人」は、積立投資と投資信託の活用について、自分なりに投資スタンスを整理しておく必要があります。
投資信託はリアルタイムでタイミングをみた売買ができません。一方で、グローバルに分散投資をしたり、複数のアセットクラス(REIT:リート[不動産投資信託]など)を含めた同時投資を行ったりすることは少額設定できるメリットがあります。
「投資は個別株」という人は、資産運用のベースとしての積立投資信託について検討してみてはどうでしょうか。
売買、リバランス時には「つみたて枠からの流出」に注意したい
それでは、つみたてNISAの投資家は問題ないのか、というとそうでもありません。こちらで注意したいのは、売却時です。
NISAの売却は、NISA口座からの出金を意味します。つみたて投資枠で保有していた投資信託を売却した場合は、つみたて投資枠の利用上限の回復でもあります。しかし、もし、同じ投資信託を成長投資枠とつみたて投資枠で保有していた場合はどうなるでしょうか。
この場合、成長投資枠のほうを優先して売却したほうがベターといえます。なぜなら同一の投資信託であってもつみたて投資枠のほうから売却すると、定期購入でしかもう一度枠を埋め直す方法はありません。成長投資枠のほうを売却すると、1,200万円の上限に近づくところから一度遠ざかることにもなります。
同じ投資信託でも成長投資枠で保有していた分とつみたて投資枠で保有していた分は区分管理されており、実際の売却画面では、いずれかを選択することになるはずです。
新しいNISA制度は、ロールオーバーなどの面倒な検討からは解放されます。しかし、「総枠1,800万円、成長投資枠1,200万円」の上限や、「つみたて投資枠は積立投資のみ」という制約は、ある程度NISAの検討事項として残ることになりそうです。
工夫をしながら、1,800万円の上限を目指していこう
といっても、普通に資産形成をしていく人たちにおいてはあまり問題にならないかもしれません。
「基本、積立投資だけで資産形成を考えていこう」
「つみたてNISAの年40万円、あるいはプラスアルファするくらいのペースで投資をしていこう」
「リタイアのときに上限1,800万円に到達すればいいだろう」
「売却は基本的に考えず長期保有でいこう」
といった感覚で新NISAを利用する人にとっては、あまり気にすることはないからです。
今までは「一般NISAの投資手法」、「つみたてNISAの投資手法」が別ラインで設定されていました。ある意味シンプルであったといえます。
新NISAでは二つの投資枠が一体化される分、自分の投資スタンスをはっきりさせておく必要が高まります。自分はどんなスタンスで投資をしていきたいのか、そのために成長投資枠とつみたて投資枠をどう活用していくのか、自分なりに考えながら、2024年を迎える準備をしていきたいものです。
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