▼答えてくれた人

虫とり小僧さん

▼Profile
40代。サラリーマン兼個人投資家。2005年より国際分散インデックス投資を開始したが、1年間のうち投資にかける時間は数時間程度。ほぼほったらかしで、これまでの年率平均リターンは8%程度(2021年9月現在)。確定利益と含み益の合計は、会社勤めの年収の数倍になる。趣味は筋トレ、爬虫(はちゅう)類捕獲、秘湯めぐりなど。
その他PR事項:金融庁ウェブサイト内で「教えて虫とり先生」の連載経験のほか、日本経済新聞やニューヨークタイムズなど、多数のメディア掲載履歴あり。Twitterアカウント:@mushitori ブログ「いつか子供に伝えたいお金の話

あなたの投資初体験を教えてください。何を買い、そしてどうなった?

Q あなたが投資に興味を持ったきっかけは?
A 最初は保険の勧誘から。支払い額より多い金額が返ってくる「運用」って何?

 20年近く前の話ですが、保険の営業マンから勧められた終身保険をあれこれ調べたことがきっかけでした。

 おおよその金額ですが、毎月5万円の保険料を30年間支払い続ければ、生涯2,200万円の死亡保障がついて、30年経てば2,200万円を受け取ることができる、というようなものでした。30年間の支払総額は1,800万円なので、支払った保険料に対するリターンは約22%です。

 当時の私は、なぜ支払い額より多い受取額を約束できるのだろう? と疑問を持ちました。調べるうちに、保険会社は集めた保険料から経費を引いた資金で「運用」なるものを行ってお金を殖やし、受取額以上の支払いを可能にしていることを知りました。

 さらに勉強を進めると、マーケットの世界には「インデックス」と呼ばれるさまざまな金融市場の平均値を指数化したものが存在し、それには誰でも簡単に投資できることを知りました。

 そこで、仮に30年前に先進国の平均株価指数(MSCIコクサイ・インデックス)に投資していたら、どのくらい増えているのかを計算してみたのです。

 あくまでも当時の市況下での試算ですが、なんとその投資元本は、10倍(リターン約900%)くらいに殖えている計算になりました。

 単純比較できるものではありませんが、保険商品には万が一のときの大きな保障だけをしてもらって(掛け捨てだけ利用して)、お金を殖やす「運用」は自分でした方が良さそうだ、と思ったのです。

Q 初めて買った銘柄は何?それはいつ?
A ネット証券で口座開設、外国株式系投資信託を購入!

 2005年にネットの証券口座を開設し、「ステート・ストリート外国株式インデックス・オープン」というMSCIコクサイ・インデックスに連動する投資信託を買いました。最初にまとめて100万円くらい買い、そのあとは毎月数万円の自動積み立て設定をした記憶があります。

Q その銘柄を選んだ理由は?
A 個別株式を選ぶ自信がなく、世界経済の成長の分け前をもらおうと考えた

 個別株式を選ぶ自信がなかったので、広く分散投資をして世界の主要な企業の超小口オーナーになり、その分け前をもらってしまおうと考えたからです(より広い分散をするため、同時に債券やリートなど株式以外のアセットクラスにも投資をしました)。

 また、Q1で答えたように、先進国の平均株価指数を投資の検証材料に使っていたことや、当時、購入手数料無料でMSCIコクサイ・インデックスに連動する投資信託の中では、その商品の信託報酬(運用管理コスト)が最も低かったことも理由です。

 まあ、現在は、その10分の1くらいのコストの類似商品がありますけどね(eMAXIS Slim先進国株式インデックスなど)。

Q その銘柄はどうなりましたか?
A リーマンショックにも負けず成長。次の乗り換えの元手になった 

 リーマンショックで大きく下げたりもしましたが、そういう時期にも積み立て投資を続けたせいで、かなり大きな利益をもたらしてくれました。

 ただ、より低コストな類似商品が発売された際に、積み立て商品を変えたりしたので、現在はもうその投資信託自体は保有していません(その投資信託を通じて間接的に投資していたものには、現在も商品を変えて投資を続けています)。

未経験者・初心者に教えたい、投資を続けるコツ!

Q 投資を始めた初心者時代の自慢エピソードを教えて!
A リーマンショックにひるまず、強気で買い増ししたこと!

 あくまでも「今となっては」ではありますが、リーマンショックで投資しているリスク資産が暴落した際に、「リバランス※」と称して大きく下がったそれらに大量の追加投資を行ったことです。

 結果的には現在、そのときの投資判断・行動が大きな利益を生んでいます。ただし、当時は大失敗かと思いましたし、他人様にオススメするようなものではありません。

※国際分散積み立て投資におけるリバランスとは、調子のいい資産を(みんなが買っているときに)自分は売り、調子の悪い資産を(みんなが売っているときに)自分は買う行為です。

 つまり、逆張り的な投資行為なのですが、機械的にそれを行うことにより、(相場の上下循環を前提とすれば)安く買って高く売ることができます(※主目的はリスクコントロール)。

 ただし、未来のことは誰にも分かりませんし、絶対にうまくいく保証もありません。結局は、なんらかの前提を持ち、自己責任において行う投資行動の1つにすぎません。

Q 投資を始めた頃の失敗談&教訓を教えて!
A 投資に時間をかけすぎたこと。投資には手間をかけないのが効率的

 投資のことが気になってしまい、そこに時間をかけすぎてしまったことですかね。

 投資のパフォーマンスを、投資に費やした時間で割り算してみると、なるべく時間をかけないほうが効率はいいことも身に染みてきます。

 他の投資スタンスの場合は違うかもしれませんが、インデックス投資の場合、時間をかけても投資のパフォーマンスは良くなりません。風見鶏的な投資判断は、むしろパフォーマンスを悪化させることが多いと気づきました。

 投資が仕事や趣味でなければ、いかに手間をかけずにラクしてリターンを上げるかが、QOL(Quality Of Life 生活の質)向上のポイントだと考えています。

Q 投資未経験者・初心者は、まず何から始めるべき?
A 最低一冊本を読み、ネット証券で口座開設。実践も勉強も同時並行で!

 実践と勉強の両方でしょうか。

 実践としてはネット証券等で口座開設し、少額でもいいので実際に金融商品を買い付けてみる。商品はつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で購入できるものなら、まあハズレはないでしょう。また、勉強はまともな投資本を最低1冊は読んでみることをオススメします。

 どのような本がまともであるかは、私のブログのトップページに「読みやすくてオススメの本」として紹介してあります。

 とりあえずのざっくりした勉強なら、金融庁のホームページ内に「教えて虫とり先生」という対談方式の特集があるので、そこに私が初心者に伝えたいことの概要がまとまっています。

Q これから投資を始める人に向けて、投資方法のアドバイスを!
A 3つのルールを守って投資を続けよう

 私が個人的にインデックス投資を継続させるためのポイントだと考えていることを3つ挙げておきます。

1.元本割れの腹をくくる

 リスク資産に投資を行うのであれば、元本保証がないのは当たり前。インデックス投資継続中の暴落はもちろん、究極的には最終的に利益を得られない可能性も許容する必要があるでしょう。その覚悟を持てないのであれば、投資なんぞしてはいけません。

 ただ、最終的に利益を得られるかどうかは、投資継続期間中の暴落が重要な糧であり、その時にも積み立て投資を止めずに続けられるかどうかがキーポイントだと私は考えています。

2.資本主義永続や景気循環の前提を持つ

 人類や経済の歴史を学び、「景気や株価は上下するものの、地球経済は長期的には成長するだろう」という前提を持てると、相場の乱高下に心乱されることもなくなるはずです。

 そうなれば、相場下落時に動揺せず、相場上昇時に欲張りすぎることもなく、最初に決めたルールどおり投資継続が可能だと思います。少なくとも私の場合はそうでした。

 もちろん、無理やりその前提に納得する必要はありません。ただし、そのような前提を持てないのであれば、インデックス投資なんぞしてはなりませぬ。なにか他の方法で資産形成を図ったほうがよいでしょう。

3.手間もコストと考え、あまり凝りすぎない

 リスク資産への投資を継続するためには、けっこうテキトーにやることも大切だと思います。

 資産形成のために、数十年も継続することになるであろう投資に手間がかかりすぎて、人生の貴重な時間を食いつぶされてしまっては困りモノです。また、厳密な計算やルールにこだわりすぎると疲れてしまいます。

 投資の結果なんて、運に作用される部分も大きいのです。最初にしっかり勉強をして、リスクを理解し、大枠のルールを決めて仕組み化したら、あとはほどほどに距離を保っておく方が継続しやすいでしょう。低コスト化や分散度合いもほどほどでよいと思います。

 また、「凝りすぎるな」というのは、「投資に関しては、自分を無知だと思え」ということでもあります。

 個別株式のタイミング売買などをするのなら話は変わってきますが、スタンダードなインデックス投資をするのであれば、下手な自信を持つことはヤケドのもとだと思っておくほうが無難でしょう。

 ただし、上記の3つのポイントなんてものは、そもそも家計体質が黒字である(収入の範囲内で生活できる)ことや、自身のリスク許容度を把握して、万が一のときに備える生活防衛資金などの無リスク資産(安全資産)もそれなりに確保してあるという土台があってこそ有効になる(と私が思っているだけの)話です。