※このインタビューは2018年10月4日に実施し、2018年10月19日に初回掲載したものです。
人気ブログ『いつか子供に伝えたいお金の話』を運営する虫とり小僧さんインタビューの後編をお届けします。今回はリーマンショックで投資資産を半分に減らしたときのエピソードや、バランスファンドにこだわる理由、つみたてNISAの魅力などについて聞きました。
大きな損失を出しても自信は揺らがなかった
──前回、リーマンショックで大きな含み損を抱えたとおっしゃいましたが、具体的にはどれくらいですか。
それまで積み立てた分が半分に減ってしまったという感じです。
──すでにご結婚されていたようですが、奥様の反応は?
うちでは万が一、投資に失敗しても家族に迷惑がかからないよう、生活に必要なお金と投資にまわすお金を分けています。それもあって、特に何も言われませんでしたね。僕のことを信用してくれているようでした。
──でも、投資なんてしなければと後悔しませんでした?
それは全くなかったですね。というのも金融情勢がよくなったり悪くなったりするのは当たり前のことですから。バブルが起きて崩壊し、国が金融緩和に乗り出し、しばらくして回復に向かう──。どんな国もこれを繰り返しています。もちろんリーマンショックは世界中の金融市場がマヒしてしまうような大きな出来事でしたが、それでもいずれ回復するという確信があったので、焦るようなこともありませんでした。
──一時的に資金を引き揚げようともしなかった?
「すぐに売却したほうがいい」という専門家が多かったのは事実です。「米国経済は死んだも同然なのだから一刻も早く見切りをつけるべき」などと声高に叫ぶ人もいました。でも、そういう声は無視しました。というか、僕はむしろ逆で、リーマンショックで暴落した後、追加投資してるんです。まあ、機械的なリバランスであったとも言えますが。
──月々の積み立てとは別にスポット買いされた?
そういうことです。結果的にはこれが大正解でした。ある程度まとまった額を投じたこともあり、数年後、大きな利益を得ることができました。ただし、暴落時に追加投資を行うのは、リスクを積み増しすることになるので、あまりオススメはできません。とくに初心者は避けたほうがいいと思います。
──いずれにしても自信が揺らぐことはなかったわけですね。
前回、お話ししたように投資を始めた当初は、興味もあったので勉強しましたからね。普段なら絶対に手にしないような経済学の専門書などもけっこう読みましたし。その手の本は直接、投資活動に役立つわけではありませんが、社会や経済のからくりが見えてきたりするので、読んでおいてよかったと思います。
金融資産は年収の数倍に
──リーマンショックの損失はすぐ取り戻したのですか。
確か4、5年はかかりました。そういうのもすべて加味した投資を始めてからのリターンは年率平均で7%くらいです。現在、金融資産は年収の数倍ほどに増えています。もし今、リーマンショッククラスの金融危機が起こって相場が暴落しても、ひょっとしたら元本を割り込むことはないかもしれません。
──暴落時も冷静な虫とり小僧さんの読み通りになりましたね。今後は、バランスファンドメインのスタイルから変えるつもりはないんですか。
実は、バランスファンドに強いこだわりがあるわけでもないんですよ。それに基本的には債券や不動産よりも株を持っていたほうが強いと考えています。そのため、8資産の中でも株の比率は高めです。ですが、株式オンリーにはしたくないんです。
──米国株式や全世界株式なら安心という人も多いですよね。
それはよく分かっています。おそらく50、60年というスパンならば、それこそ天変地異でも起きない限り、世界経済は成長して、株価もそれに見合うものになっているはずです。けれど、10年、20年という単位だとどうなるか分かりません。来年、金融危機が訪れ、それから20年間、株価が低迷し続けるということもないとは言い切れません。過去の株式市場のチャートを見ても、20年間株価が停滞するというのは珍しくないんです。
──そう考えると、バランスよく保有していたほうがよいと。
万が一、20年間株価が停滞しても債券や不動産を持っていればちょっとは救われるかもしれませんから。大勝ちする可能性を捨てる代わりに、大負けの可能性も少しだけ下げようとしているというか。
──いろいろ振り分けて持っていると、定期的にリバランスを試みることでパフォーマンスを維持できますもんね。
そうなんです。それともう一つ、つけ加えると精神的にもいいんです。例えば8資産のうちの一つをやめたとしますよね。それで、やめた資産が高騰すると、めちゃくちゃ悔しいものなんです(笑)。8資産全部持っていると、あーしておけばよかったという後悔がない。まあ、人によるとは思いますけど。
初めての人にはつみたてNISAがオススメ
──つみたてNISAはされてるんですか。
はい、もちろん。すべてではないですけど、それまで所有していたファンドから移し替えました。
──つみたてNISA、それとiDeCo(個人型確定拠出年金)もずいぶん認知されてきましたが、虫とり小僧さんはそれらを勧めますか。
インデックス投資を始めようとする人は年5%程度のリターンを期待するのが普通だと思いますが、そのくらいの前提で長期投資をしようというなら、これはもう絶対に利用すべきでしょう。やはり税制優遇の恩恵を受けられるのは大きいですから。iDeCoは高所得者の場合、退職金の金額次第で微妙なところもありますが。
──つみたてNISAとiDeCoではどちらを優先すべきだと思いますか。
うーん、難しいですねえ。iDeCoには運用益が非課税なのに加えて、掛け金全額が所得控除の対象となるというメリットがあります。ただし、60歳までは辞めたくてもやめられません。一方、つみたてNISAは税制優遇の点では見劣りしても、いつでも辞められるというよさがあります。いつでも解約できますし、試しに購入してみるといいと思います。
つみたてNISAは、金融庁が定める基準を満たしたファンドとETFだけしか商品ラインナップがありませんから、どれを買っても大やけどはしないはずです。
──そういえば虫とり小僧さんは、お子さんのお金も投資にまわしているそうですね。
子供のお金を勝手にかすめて投資資金にまわしているというわけではないですよ(笑)。これ、第一子が生まれたときからやっているのですが、お祝い金とかお年玉をもらったら、それを半分に分けるんです。で、半分を預貯金にまわし、残りの半分でファンドを買います。
これを子供が成人するくらいまで続けてどこかのタイミングで本人に引き渡すつもりですが、そのときには預貯金とファンドではそうとう金額の差がついていると思うんです。実際、まだ数年経ったところですが、かなりの差がついていますし。そうすると、子供が投資のよさを身をもって理解してくれるのではないかと考えています。
──面白いですねえ。
仮に損失が出てしまったとしても、それはそれで「投資なんかやめておけ」という逆の意味で勉強になりますし(笑)
──投資初心者のかたへメッセージをお願いできますか。
僕はバランスファンドをメインに投資してきたわけですが、世の中には株式ファンド1本という人もいるし、ETF(上場投資信託)しか買わないという人もいます。僕はどれでもいいと思うんです。ちゃんと国際分散して、そこそこ低コストで投資を続けるのであれば、大差はないと。ただし、僕たちのようにリスク資産への投資をしている人と、何もせず収入をすべて預貯金にまわしている人を比べたら、けっこう大きな差が開いてくるような気はします。
我々は経済との関わりを避けることができず、自分のお金は必ずどこかになんらかの形で置いておく必要があるので、まずは月1万円でもいいので、行動を起こしてみることを勧めたいですね。
読者へのメッセージ
景気は循環する
投資をはじめて、歴史を勉強して、いいときもあれば悪いときもあることを知りました。物事を俯瞰して長期的に考えられるようになったことは私生活にも活きています。
※このインタビューは2018年10月4日に実施し、2018年10月19日に初回掲載したものです。
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