※本記事は2021年5月28日に公開されたものです。
資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動をわかりやすく解説します。
お悩み
投資信託はどう選ぶ?何を基準にして買ったらいいのか分からない!
真田友香さん(仮名)会社員・30歳(既婚)
真田さんは、これまで資産運用に興味はありませんでした。しかし、結婚をきっかけにお金について真剣に考えるうちに、将来に備えて資産運用を勉強しておこうと考え始めました。
まず、ファイナンシャルプランナーに相談し、今後のライフプランをシミュレーションしてみたり、保険の見直しをしたりして、自分が投資に回せる余裕資金を確認していました。
そして、いざ投資商品を選ぼうとしたとき、選択肢の多さに戸惑いましたが、値動きが大きくなることもある株式投資やFX(外国為替証拠金取引)などは自分に向いていないと感じたので、初心者におすすめと言われた投資信託で、まずは積み立て投資を始めることにしました。
ところが、投資信託を検索してみると想像以上に種類が豊富であることを知り、一体どれを買ったらいいのか、途方に暮れてしまいました。
ひとまず、多くの人が選んでいるため、ランキングで上位になっている商品をいくつか購入してみることにしました。でも、なぜこれらの商品に人気があるのか、よく分からないままです。
おすすめの投資信託という表現はよく見かけますが、真田さんにとって、よい投資信託を選ぶには、どうしたらいいのでしょうか。
やってはいけない「投資信託」選びの注意点
取り扱い本数が特に多いネット証券を見ると、投資信託(ファンド)は2,500本以上あります。
試しに楽天証券で条件を指定して検索してみると、積み立て投資できる投資信託が2,555本、そしてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で利用できるものが2,614本、つみたてNISAは172本、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で利用できるものが31本ありました(2021年5月23日現在)。
30本程度なら時間をかけて一つ一つ比較検討することもできるかもしれませんが、それ以上の数になると、時間ばかりがかかり、なかなか投資を始めることができません。
また、時間をかけて投資信託を選んだものの、実は買ってはいけない投資信託を選ぶ人(=やってはいけない投資信託選びをしてしまった人)は多いのです。
実際に私たちがお客さまから相談を受けた中で、よくある失敗やその理由をまずはお伝えしたいと思います。
やってはいけない投資信託選び1:コスト比較をせずに買っている
投資信託はどの金融機関で買っても保有中の費用や売却時の費用は同じです(かからない場合が多い)。
しかし、購入時に支払う「販売手数料」は、金融機関ごとに違います。金融機関の担当者から提案を受けたとき、アドバイス料として割り切って手数料を支払う方もいますが、ネット証券では投資信託の販売手数料が0円であることがほとんどです。
その一方で、似たような商品の投資信託でも、保有中の費用が異なっていたり、投資先は同じようでも、投資信託とETF(上場投資信託)では手数料が大きく違うこともあります。
商品を検討する際には、ぜひコストを比較するくせをつけましょう。
やってはいけない投資信託選び2:同じような商品ばかり買っている
「一つの商品にまとまった金額で投資をしたくない」という人の中には、実は投資先が同じような商品をいくつも買っている人がいます。
投資信託一つひとつを比べると多少の違いはあるかもしれませんが、実は大きな違いがないケースがほとんどです。
むしろ保有している投資信託全体の値動きを見ると、一つの商品の値動きに近くなるか、市場全体へ投資したインデックスに連動した値動きになることも少なくありません。
本来、値動きの違う資産を複数組み合わせることで、リスク(資産価格の変動率)を抑えて、安定したリターン(期待収益)を狙いますが、同じような商品ではあまり意味はありません。
やってはいけない投資信託選び3:分散投資のつもりで、いろんな種類を買っている
資産形成をするなら「長期・分散・積み立て」投資というキーワードを耳にしたことはないでしょうか。
ここでいう分散投資は、主に投資先を分散するという意味です。株式や債券といった資産だけでなく、通貨や投資する国などを分散することで、価格変動のリスクを抑えて、安定した好リターンを目指す代表的な投資手法です。
ただし、分散投資には大事な点があります。それは、組み合わせ方と投資配分の定期的な見直しが必要だということです。自分で一度組み合わせた投資が、ずっと効率的になっているかどうかは、分からないからです。
投資信託はもともと分散投資されている商品ですから、一つ保有しているだけで十分な分散効果を期待できます。
そのため、まずは自分のニーズにあった投資信託を1本、探した方がいいでしょう。
やってはいけない投資信託選び4:管理できないほどの本数を買っている
運用を始めた頃は一つひとつの商品を理解していても、購入している商品数が多くなって、だんだんと管理しきれなくなっている方がいます。
買った当初はそれぞれの商品の仕組みやリスクを理解していても、時間が経つにつれて理解があいまいになることはよくあることです。
特に長期投資を前提に投資をしている人は、どうしても普段の生活にあまり関係がない投資への理解が浅くなりがちです。大切なお金のことであっても、人が管理できる量には限界があります。
また当然ですが、年齢によって理解力や判断力が衰えていくことも考えた上で、自分にとっての適切な範囲で、無理のない投資を心掛けましょう。
やってはいけない投資信託選び5:出口(売却)を考えずに買っている
投資信託は買いっぱなしになることはありません。いつかは売却することになります。そのため、明確なルールを決めるまでは必要ありませんが、どんな時に売却を検討するかをイメージしておくことが重要です。
「一定水準まで資産が増えたら」「ある程度の期間が過ぎたら」「相場の変化によって」「高齢になって管理が面倒になる前に」など、シチュエーションは人それぞれです。
ところが、何となく保有し続けるという人もいるのです。いずれ必要となるお金のために運用をしているのに、これでは本末転倒です。
特に金融機関で提案を受けて投資商品を購入している人は注意が必要です。金融機関では投資信託の販売予算があったり、保有残高を維持させることを社員に求めていることも多く、商品を売却されてしまうと会社の目標が遠のくことになります。
そのため、必要なときなのに金融機関に売却を止められたり、売却した後にすぐ、次の商品を提案される仕組みがあることは覚えておきましょう。
投資信託選びは消去法!どんな商品を買ってはいけないのか?で考える
以上、やってはいけない投資信託の選び方をお伝えしてきましたが、では投資信託を選ぶとき、何をすればいいのでしょうか。
まず「どんな商品を探すのか?」ではなく、「どんな商品を買ってはいけないのか?」という消去法の観点がポイントです。つまり、多くの投資信託から、先に買ってはいけない条件の投資信託を除外するやり方です。
たとえば、「投資信託の費用」「運用年数」「投資先資産」「投資先国」などから、先ほどの5つの「やってはいけない投資信託選び」のポイントを十分考慮し、自分が投資したくない投資先を除いていけば、自分のニーズに合った投資信託へと近づいていけるはずです。
資産運用のポイント
投資は自分にとってシンプル、そして分かりやすいことが重要
投資信託は投資家のニーズにそってプロが運用してくれるパッケージ商品です。運用自体を任せることができる半面、資産の管理やどのような商品を選ぶかは自分で考えなければいけません。
とはいえ投資にどのくらい時間をかけられるか、かけようと思うかは人それぞれです。できるだけ任せておける相談相手が欲しいという方が私たちのようなアドバイザーへご相談に来られます。
そういった考えであっても、任せることと、自分で判断すべきことを明確に区別することで、資産を適切に管理できる方法が身につくはずです。
【要チェック】
リーファス社の公式YouTubeチャンネル『ニーサ教授のお金と投資の実践講座』では、同コラムの他にも動画でお金と投資の知識を学ぶことができます。
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