THE S&P 500 MARKET: 2023年5月

 株式市場は直近(2カ月ほど)レンジ相場を形成していましたが、債務上限と政府支出を巡って民主・共和両党が合意したことを材料に、5月末にかけてレンジを上抜ける展開となりました。とはいえ相場上昇の理由は、市場が両党間の合意を評価したからではなく、交渉が決裂した場合には悲惨な結果を招きかねないからでした。S&P500指数は4,200台を回復し、取引時間中に4,231をつける場面もありました(前回終値が4,200台をつけたのは2022年8月)が、最終的には4,200台を割り込み、4,180で5月の取引を終えました。地方銀行の経営破綻や債務上限問題が一段落したことを受けて5月に株式市場が0.25%上昇したことは、勝利として受け取られました。特に2023年第1四半期の決算発表の大半が終了したことを考慮すると、市場のボラティリティは異常なまでの低水準を維持しています(営業利益は前期比4.8%増と良好な結果となりました。とはいえ、より公平な観点から言えば、下方修正される前の期初時点での予想値を1.0%下回っています)。メディア報道は「債務上限問題」一色でしたが、市場では業績予想と、経済の「選別的」ランディングまたは「ソフト」ランディングの可能性が主な取引材料となりました。また、主要産業毎にリセッションの可能性が取り沙汰され始めています。
しかしながら、(少なくとも私がまだ通っている数少ない)酒場では、(30過ぎか40過ぎぐらいの)いわゆる「若造」が人工知能(AI)の可能性や、よくある将来に対する壮大なビジョン、そしてAI絡みのM&A市場の盛り上がりについて議論していたようでした。私に言わせれば、オンライン学習と勉強ツールを提供するChegg (CHGG)の株価が、5月に入ってから早々に1日で48%下落(年初来では65%下落)したことが示すように、AIの持つ可能性は自明のことです。同社は学生がAI(ChatGPT)に傾倒し、同社のサブスク利用(ひいては事業)が縮小
したと警告を発しました。

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