「株主優待」「優待生活」という言葉に漠然と憧れを抱いたことがある方は少なくないと思います。今回は、優待銘柄を中心に120銘柄を長期保有している仔馬の優待生活さんにインタビュー。優待銘柄への投資についての考えを聞いていくうちに見えてきたのは、「投資だけではなく、人生設計も分散させる」という仔馬の優待生活さんの価値観でした。
<プロフィール>
仔馬の
優待生活 |
2010年、学生時代に株式投資を開始。現在は兼業投資家として、優待銘柄を中心に120銘柄を長期保有。不動産投資、ふるさと納税、端株投資も始め、1,460銘柄ほどを保有しています。現在の資産は数千万円規模。主にSNSでの情報発信とカフェ会を中心に活動し、今後はブログでの発信も予定しています。 X:@kouma6301 Instagram:@kouma6301 YouTube:仔馬の優待生活 |
投資デビュー翌年に震災が発生。元手30万円が10万円に…
トウシル:仔馬の優待生活さんは、働きながら投資をされている、サラリーマン投資家なんですね。Xでのフォロワーさんも4万以上と、発信活動もされていて、兼業投資家は大変ではないですか?
仔馬の優待生活さん:はい。Instagramでの配信も行っています。また、メインは優待投資なのですが、端株投資や不動産投資など投資の幅をひろげています。現在は福岡県在住ですが、週末は実際に、投資初心者の方々と対面でお会いし、皆さんの悩みや相談事に乗る「カフェ会」を定期的に開催しています。
トウシル:カフェ会! 楽しそうですね。どんな相談にのられているんですか?
仔馬の優待生活さん:今年から新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まりさまざまな依頼がありますが、個々で抱える悩みごとはさまざまで、主婦や若い方でもネット証券の口座開設からつまずいてしまう方も多くいらっしゃいます。一緒に画面を共有しながら口座開設のサポートをしたり、少人数制でのカフェ会では、優待投資を中心に投資手法や個別株について解説をしたりしています。
トウシル:ご自身もさまざまな紆余曲折があるからこそ、レクチャーができるんですね。仔馬の優待生活さんは投資を始めて12年近いとうかがっています。投資を始めたきっかけはなんだったんですか?
仔馬の優待生活さん:実は株式投資を始めたのは学生時代なんです。大学で経済学の講義を受講していた際に株式投資について触れたことがあり、株って面白いな、意外とFXなどより低リスクかもと思い、一度投資を経験してみたいと思いました。
ただ、学生なので資金はほとんどなく、ポイ活やアルバイト代などで、とにかく元手30万円を用意して投資を始めました。
トウシル:最初はどんな株を購入されたんですか?
仔馬の優待生活さん:当時は今ほどネット環境が充実していなかったですし、投資に関する書籍も少なく、株や投資に関する情報収集にかなり苦戦しました。ですから、「とりあえず有名企業を買えば問題ないだろう」と、ひとまず買ってみた、という手探りの投資デビューでしたね。
トウシル:デビュー戦はいかがでしたか?
仔馬の優待生活さん:それが…翌年に東日本大震災が起こり、大暴落を経験することになりました。株式市場は連続安値を更新し、経済が停滞状態になりました。当時の私のポートフォリオは、製造業を中心とした銘柄で構成されていたため、資産を大きく減らす結果となってしまったんです。
元手30万円が、20万円の損失で、結局10万円ほどに減ってしまいました…。
トウシル:学生で20万円のマイナスはつらいですね…。もう投資をやめようとは思わなかったんですか?
仔馬の優待生活さん:逆に、少しでも早く損失を取り戻したい気持ちが高まり、株価水準の低い*低位株を中心に、コツコツと投資をしていました。ただ、当時はしっかりした投資スタンスが固まっていなくて、正直ギャンブル的な投資だったと思います…。
*低位株:一般的には1単元(100株)の購入金額が10万円未満の株のこと
低位株の定義はさまざまありますが、株価500円未満のものを中心とした投資が主でした。
トウシル:そこから、現在数千万円の利益を上げる復活劇がスゴイです! 転機を聞かせてください。
仔馬の優待生活さん:苦い経験とその反省を生かして投資方針を大きく変え、当時はまだあまり注目されていなかった優待銘柄や高配当銘柄を中心としたポートフォリオに転換したことで、投資結果が少しずつ実るようになりました。投資スパンも短期トレードから中長期へ変更。ギャンブル投資をしていたころより、精神的にも資金的にも、安定した資産形成ができるようになりました。
トウシル:ただ、注目度が低いと、情報収集も難しかったのではないでしょうか。
仔馬の優待生活さん:そうですね。今ほどSNSでの発信や株式投資に関する書籍も少なかったので、知名度の低い銘柄も含め、試しに買ってみたらどうなるのか、試行錯誤を繰り返し、2、3年ぐらいは失敗から多くのことを学びながらも前向きに、地道にコツコツと利益を積み上げていった感じです。
トウシル:投資初心者の方は、まずは投資信託から入る方も多いのですが、仔馬の優待生活さんは、最初から個別株だったんですね。
仔馬の優待生活さん:はい。実は、銀行の営業マンに勧められて投資信託を購入したこともあったんですが、思ったほど成果が上がらず、ちょっと退屈で…。その点、個別株のほうが、経済イベントや社会情勢などで目に見えて株価が上下するので、やりがいがあり、資産も大きく増やせるのではと思いました。
購入判断の基準は「配当+株主優待の合計利回りが4%以上」かつ「有配銘柄」
トウシル:現在は安定して利益を増やしていらっしゃるようですね。
仔馬の優待生活さん:はい。現在は約1,460銘柄を保有しながら、着実に利益を積み上げています。そのうち優待銘柄は120銘柄となります。
トウシル:優待銘柄を買い始めたきっかけは何だったんですか?
仔馬の優待生活さん:優待銘柄への投資で有名な桐谷広人さんの書籍を読んだことがきっかけですね。中でも、優待銘柄のイオン(8267)が紹介されていて、「これはいいな。買ってみようかな」と思ったんです。
トウシル:イオンのどこに魅力を感じましたか?
仔馬の優待生活さん:なにより優待内容が魅力でした。100株以上保有していると、全国のイオングループ内での買い物が3%引きとなる優待カード(オーナーズカード)がもらえるという点です。さらに、保有株数が増えるにつれて、500株で4%、1,000株保有で5%、3,000株以上で7%と、保有株数に応じた割合にアップするんです。
私は映画をよく見るのですが、イオンシネマの映画鑑賞も常に1,000円で、ソフトドリンクかポップコーンの無料券も毎回もらえるんです。(2024年2月時点)
トウシル:近隣にイオンがある方にとってはうれしい優待ですね!
仔馬の優待生活さん:そうなんです。スーパーマーケットの統廃合が進む中、イオンは業績も好調で。私の家族も、イオンやイオン系列であるマックスバリュをよく利用していることもあって、オーナーズカードが欲しいと思ったんです。あとで、両親に頼まれて、両親の証券口座の開設もサポートして、今では両親もイオンを保有しています。
イオンの株は2010~2011年ごろに1株900円ぐらいで購入したのですが、現時点(取材時の2024年2月)では、3,500円前後にまで成長しています。コロナ禍で閉鎖されていたイオンラウンジ(イオンゴールドカードや株主カードを保有している人が使える会員制のラウンジ。無料のドリンクサービスなどがある)も再開する店舗が徐々に増えてきました。株主気分を満喫できるのはいいですね。
トウシル:その他、120銘柄ほど持っている優待銘柄は、どんな基準で購入を決めているんですか?
仔馬の優待生活さん:新しい銘柄を買うときにベースとしているのは、「配当利回り+株主優待(実質もらえる相当額)の総合利回りが4%以上」であること、かつ、「配当がある有配銘柄」であることを条件にチェックしています。
また、中長期投資を基本としているので、PBR(株価純資産倍率)が0.5〜1%、PER(株価収益率)が15倍以下と、比較的割安で買いやすい銘柄であることも条件の一つ。
さらに直近の単元株主数の増加率と株主優待引当金が経営上のリスクになっていないか、業績に対し配当性向が適正で無理のない分配であるか、そして総合的に株主還元に高い意識を持った企業であるかどうかを判断しています。
トウシル:優待品の内容は見ないのですか?
仔馬の優待生活さん:優待銘柄を買い始めたときは、QUOカードやカード会社のギフトカードなどがもらえる金券系優待、プレミアム優待俱楽部系(保有株数によってポイントがもらえ、相当する商品と交換できる共通の仕組み。
他銘柄との合算もできる)のものが多かったんですが、ここ数年は、こうした優待は廃止や内容変更をする銘柄が増えてきたため、今は、自社商品や自社サービスに関連した優待品を贈呈してくれる銘柄を選ぶことが多くなりました。
トウシル:単元未満株(1単元=100株よりも少ない1株単位で購入できる銘柄)にも多く投資されているんですよね? それはなぜですか?
仔馬の優待生活さん:ポイ活的な意味合いで、1株ずつたくさんの端株を保有しています。例えば、楽天証券の場合、楽天のハッピープログラムでは、配当金の受け取り口座を楽天銀行にしていれば、1株ごとにもれなく現金10円がもらえるんです。端株でも、配当がある銘柄をたくさん保有していればもらえる額も増えるので、これはお得感があります!
トウシル:ポイ活感覚ですね。配当月にはうれしい収入になりますね!
仔馬の優待生活さん:そうですね。決算が集中する3月だけで、このプログラムだけで1万円以上の現金が入ってくるので、これはうれしいです。ここで得た資金も、再投資に回しています。
トウシル:小さな利益もしっかり集める堅実な投資スタイルですね。ただ、保有銘柄が多いと管理も大変なのでは?
仔馬の優待生活さん:そこは確かに大変です(笑)。優待株の120銘柄は四半期ごとに、決算内容や単元株主数の増加傾向を加味して、継続して保有し続けるのか判断していますが、端株については中間決算・期末決算の年2回の簡単なチェックしかしていません。
業績は緩やかな伸びであっても、中長期的に事業の成長性が見込めるかどうかや、配当金が安定的に継続する見込みがあるかどうか、株主還元方針が明確に明示されているかなど、総合的に判断をしながら継続保有、もしくは買い増しをするかどうかを決めています。
ただ、1,400銘柄も保有していると、毎日のように、何らかの郵便物が企業から届くので、それを開封して読むだけでも大変です(笑)。週末にまとめて開封はしますが、配当金受領書などは裏紙をメモ用紙にしたりして有効活用しています。
トウシル:資産が数千万円規模ある人とは思えない堅実ぶりですね(笑)。後編では、仔馬の優待生活さんの「優待ライフ」について伺います!
>>「働き方も工夫して、人生そのものも分散投資!仔馬の優待生活さんインタビュー」後編へ続く!
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