※この記事は2020年8月5日に掲載されたものです。

「コロナバブル」。近頃このような言葉を見るようになってきました。「陶酔の中で相場は天井を打つ」という格言がある通り、バブルは全員参加によって最後を迎えます。ただ、どこが天井かは、後になってみなければ誰にも分かりません。

 実際にバブルと呼ばれるような利益を出せるチャンスに遭遇すると、つい「ここから大きなひと山を当てられるのでは!?」と心が浮ついてしまうものです。もしかしたらバブルの入り口にいるとも思える今のような局面で、どのような投資行動や判断が「正解」になり得るのでしょうか?

 本稿では私が実際に担当させていただいた富裕層投資家の行動を検証した結果、大きく3つの鉄則が浮かび上がってきました。今回はこの3つの鉄則について、詳しく紹介していきたいと思います。

鉄則1:資産運用は点ではなく線で考える

 ここで言う「点」とは、現在であったり、ある投資判断をする瞬間であったり、資産運用中のある短い局面を意味しています。そして「線」とは、点という毎日が将来に向けて連続している時間軸のことです。つまり、資産運用はその時々の状況だけを見て判断するのではなく、過去から将来につながっていく時間の連続性の中で判断するべきなのです。過去を見て、今を見て、将来の先を考える、ということです。

 私の知る富裕層の投資家が、実際に何をしていたのかというと、今回のような違和感を覚えるような上昇局面では「山高ければ谷深し」という格言がありますが、そのミニバブルが弾けて市場が下落したときに取るべきアクションを考えていました。つまり、ミニバブル崩壊後の回復期に有望な投資先は何か、あらかじめ考えておくということです。

 例えば「世界経済のけん引役となるであろう米国株式を買い増ししよう」とか、外貨建て債券のうち、信用リスクが高まって価格が下落したら、「破綻リスクが小さいと考えられる良い会社の債券を購入しておこう」、などといった感じです。

 逆に、今のような上昇局面で保有資産の利益を確定させ、次の投資のための資金を準備しておくといったことも重要です。判断に迷う場合は、本格的な下落局面になった際に、保有資産の中で下落率が大きくなりそうな投資先をキャッシュポジションに戻しておく、といった考えも有効です。

 資産運用におけるベストなタイミングを常に見極めることは不可能です。富裕層の方々は、先を見据えて余裕を持ち、時に思い切った判断をされていました。

 例えば今後1年間くらいの主なイベントとそれに伴うリスクを大まかに整理してみると良いかもしれません。今でしたら、米中関係の政治リスク、秋の米大統領選、新型コロナウイルスの第2波の影響などが考えられます。想定外のリスクが顕在化した際の市場のショックは大きいですが、このようなイベントリスクが次のショックの引き金となり得ると考えられる場合は、今の投資内容を見直すタイミングかもしれません。

▼鉄則1に当てはまる富裕層例

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鉄則2:投資判断は数字を見て行う

 株価は刻々と変化しますが、今の水準が高いのか低いのかは後になってみなければ分かりません。それこそ1カ月後に振り返れば高かったとしても、半年後から見れば安かった、ということもあります。ですから、投資判断は、フィーリングや勘ではなく、過去と現在と将来の実態経済や企業業績の数字を見て行うことが大切です。

 短期的な投資であれば、勢いに乗る順張り投資も良いでしょう。ただ、腰を据えた資産運用を考える場合、割高と感じるが不思議と上昇が続き判断に困る、という状況もあります。そんな時は、実態経済や企業業績の数字の動きと、現在の株価水準を比較してみるべきです。

 例えばある富裕層の方は、このように考えておられました。

・6月現在、2月の急落前と比較して先進国主要株価指数はおおむね80~90%ほどの水準まで回復している。
・しかしIMF(国際通貨基金)などの報告書では今年の世界成長率の見通しを大幅に下方修正し、消費者や企業の景況感は悪化し続けている。業績の見通しを公表できない企業も多く、今後も下振れが避けられない状況だ。
・このような状況での株高は、資産価格が実態経済と比べて過大評価されている可能性がある。そもそもコロナ・ショック前と株価水準が同じなら、割高度は格段に増していることになる。
・一般的には株価は半年から1年先の状況を織り込むとされるが、実体経済や企業業績の回復に遅れが見えると期待先行の上昇がはげ落ちるリスクが高いのではないか。

 このように、株価の上昇に乗り遅れまいとする焦る感情や氾濫する楽観的な情報に振り回されず、過去から将来へつながる実態経済、企業業績、株価の動きを照らし合わせて投資判断を行うことが重要だと言えます。

▼鉄則2に当てはまる富裕層例

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鉄則3:資産運用においてブレないスタンスを持つ

 資産運用は長期的に見れば行き当たりばったりではなかなかうまくいかないものです。年間でどれくらいのリターンを目標とするのか、そのために許容できるリスクはどこまでか、目まぐるしく変化する投資環境に対応するために富裕層の方々は資産運用のスタンスを少なからず決めています。

 とはいえ、目標やリスクの許容度はお客様によって異なるため、資産運用のスタンスもまちまちです。ある富裕層の方は、世界のインフレ率を目安にコストなど加味して年率4%くらいを目標に置いていました。また、別の富裕層の方は、リスク性資産を中心に年率平均7%以上を狙いたいと決めていました。

 しかし大切なのは、目標を達成するために、この局面でどのような投資がどの程度必要なのかを一歩離れて考える、客観的な視野を持つことです。もしすでに含み益が出ている場合は、今後のリスクに備えて無理をしなくても良いかもしれませんし、今以上に収益性を高めたい場合は、有望な分野にタイミングを分けて投資を検討しても良いかもしれません。

 資産運用には良い時もあれば厳しい時もあります。富裕層が行っている資産運用のポイントは、目標に向けたスタンスから逸脱するような投資やリスクテイクはしないということです。株価が割高だなと感じる時は、割高に感じる数字の根拠に注目し、その状態がある程度解消される(株価が下落するか実体経済が回復する)まで慎重に判断を検討します。決してフルインベスト状態にはせず、常に資金的な投資余力を残しているのも共通する特徴の1つです。運用の資産規模の大きい方ほど運用スタンスは具体的でブレないと私は感じてきました。

▼鉄則3に当てはまる富裕層例

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予想外の事態で自滅しないためには、気持ちと資金の余裕が必要

 投資行動に唯一の「正解」はありませんが、私が見た実際の富裕層の方々は、判断基準を具体的に持ち、今後市場が上昇しても下落しても、ある程度対応できる気持ちと資金的な余裕を常に持っていました。

 今の相場がバブルと言えるかどうかは、後になってみなければ分かりません。バブル相場というものは、市場参加者の多くが「今はバブルではない」と思っていなければ出現しません。そして、「今はバブル状態ではないか?」と危惧する声が高いならば、逆にバブル崩壊というような形での大幅な株価下落も起こりにくいでしょう。

 すでに主張されたり予想されたりしているシナリオは現実化しにくいものであり、だからこそ、相場にはブラックスワン(マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象のこと)が現れるのです。まさに今のような状況下こそ、上で述べた「富裕層が守る3つの鉄則」が生かされる時だと私は考えています。