割安株優位な足元のマーケット環境

 足元のマーケットは、割安株が優位な状況です。一方、成長株は伸び悩んだり下落している銘柄が目立ちます。

 この背景には、米国の長期金利上昇があります。金利が上昇すると、成長株が将来得られる利益の価値が低下するため、高いPER(株価収益率)の投資魅力が低下すると考えられ、株価の押し下げ要因となります。

 一方の割安株は、もともと成長株が脚光を浴びていた時から割安に放置されていたものが多いのですが、成長株が買われにくい状況になってから、割安株への見直し買いが入るようになりました。

 また、東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場企業に対し、株価浮揚のための改善策の実行を要請していることへの期待感から、PBRが低い銘柄が買われる傾向にあります。

 それでも筆者は割安株よりも引き続き成長株に注目していきたいと思っています。無論、成長株が全く買われず、割安株が強い状況であれば割安株に投資しますが、長い目で見れば成長株の方が妙味があると感じます。

 それは、個人投資家が使うことのできる資金量と時間にはどうしても限りがあるためであり、そしてその限りある資源をできるだけ有効活用することが、大きな資産形成につながるからです。

割安株はテンバガーにはならない

 株式投資をある程度されている方であれば、「テンバガー」という言葉を聞いたことがあると思います。この「テンバガー」とは、株価が10倍以上に上昇した銘柄のことを言います。

 実際、2012年11月中旬からスタートしたアベノミクス相場にて、テンバガーを果たした銘柄は数百社に達しましたが、その大部分は成長株です。

 割安株も、2倍程度の上昇であれば十分射程範囲内ですが、10倍にまで上昇するものはなく、あったとしても割安株の状況から、業績が大きく伸びて成長株のような評価を得られた場合などに限られます。

 なぜそうなるのか、それは割安株がどのように評価されているかを考えれば分かります。

 これまでの経験則からみて、利益がほぼ横ばいで成長しない銘柄の適正PERは10倍程度と考えられます。

 足元で、利益がほぼ横ばいで、今後も利益が大きく増える見込みもなく、PERが5倍の銘柄があったとき、この銘柄の割安な状態が解消されるには、PERが10倍にまで上昇することが必要です。

 もともとPER5倍だった銘柄がPER10倍になるには、株価が2倍になることが必要となります。

 もしこの株の株価が10倍になったとしたら、現在5倍のPERが50倍となります。利益成長がない銘柄のPER50倍というのはさすがに買われすぎで、なかなか実際にはありません。

 つまり、割安株が割安な状態を解消するために要する株価上昇率は、2倍程度ならよくある話だが、5倍、10倍というのはまず考えられない、だから割安株が成長株に発展しない限りは株価が5倍、10倍になるのはかなりハードルが高いと言えるのです。

成長株の最大のリスクは?

 そのため、限られた資金、限られた時間の中で個人投資家がより高いパフォーマンスを上げようとするのであれば、株価が大きく上昇する可能性が高い銘柄へ投資する必要があるのです。

 そして割安株と成長株のどちらがより大きく上昇する可能性が高いかといえば、過去の経験則上、成長株です。

 ただし成長株は割安株と比べてリスクも高くなるので注意が必要です。成長株は割安株と比べると圧倒的にPERが高いですが、これは将来の利益成長の期待が高いことの表れです。

 したがって、成長性が鈍化したり、利益が減ったりした場合株価は大きく下落することになります。時には決算発表後、短期間に株価が50%以上値下がりしてしまうこともありますし、数年単位で見れば株価が10分の1、20分の1まで下がってしまうことも珍しくありません。

 ですから、あまり株式投資でリスクを負いたくないという方は、無理に成長株へ投資するのではなく、割安株への投資の方が無難かもしれません。

底打ち後の景気敏感株狙いも妙味あり

 成長株と同様、大きな株価上昇が期待できるのが景気敏感株と呼ばれるカテゴリーです。景気敏感株とは、国内外の景気の変動に業績が連動しやすい銘柄を言います。

例えば日本郵船(9101)商船三井(9104)川崎汽船(9107)の大手海運株は、コンテナ船運賃高騰という特需もあって、2020年から昨年にかけて大きく上昇しました。

 また、先日バフェット氏が買い増ししたことが明らかになった、伊藤忠商事(8001)丸紅(8002)三井物産(8031)住友商事(8053)三菱商事(8058)の大手商社株は、そろって上場来高値を更新しています。

 景気敏感株の特徴は、業績の浮き沈みが激しい分、いったん大底をつけると、そこから株価が3倍、5倍、時には10倍以上に値上がりすることが珍しくないことです。

 ただ、一般的に景気敏感株の買い時は、景気が悪化して業績が大きく落ち込んだ後の立ち上がりの局面と言われており、実際に業績が好調なときに買うと、程なく天井を迎えてしまう可能性もあるので注意が必要です。

 足元の大手商社株のように、株価が上昇してからさらに上がる可能性ももちろんありますが、景気悪化により株価が大きく下がった後に買った方が、より安く買えることになるので成功の可能性は高まります。

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