1.米10年国債利回りはピークを打った?
米10年国債利回りは昨秋の4%超でピークを打った可能性がある
図表1は、Bloombergの米国債インデックスと米10年国債利回りの推移です。過去10年程度を振り返ると、米国債インデックスは2020年夏ごろまでは順調なパフォーマンス推移でしたが、その後、急速にパフォーマンスが悪化し、2022年秋にかけて大幅に下落しました(ピークからボトムまで約18%下落)。
パフォーマンスが悪化した原因は、金融緩和などの弊害で欧米諸国のインフレが大きく高進し、そのインフレを抑え込むために欧米の中央銀行が大幅な利上げに動いたためであることはご案内の通りです。しかし、そのインフレに関しては、エネルギーや中古車などの財のインフレを中心にピークアウト感が見られており、インフレ自体は峠を越えたように考えています。
そうした経済状況の変化を反映し、米国債利回りはピークアウトしているものと考えていますが、足元では、インフレのピークアウトに加えて、新たな材料が米国債利回りの低下圧力となってきたと考えています。
[図表1] 米国債インデックスと米10年国債利回りの推移
2.米利上げは最終局面へ
FOMCメンバーによる利上げ予想も最終局面へ
図表2は、米政策金利であるFFレート(中間値)とその予想(FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによる)、および、米2年、10年国債利回りの推移です。FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年3月から利上げを開始し、今年3月までの全FOMC(9回)で利上げを実行しており、累計の利上げ幅は4.75%となっています。
また、今年3月のFOMCで公表されたFOMCメンバーによる今後の利上げ見通しですが、図表2のように利上げはあと1回(0.25%)、そして、来年には利下げに転じる予想となっており、米利上げが最終局面を迎えていると見ています。
こうした状況を受けてか、米国債利回りは2年も10年も足元で高原状態となっており、これまでの上昇基調からは大きな変化が見られます。債券投資は利回りの上昇が止まればプラスのリターンが期待できることから、米国債利回りの上昇が止まった可能性がある現状は、投資魅力が高まっていると考えています。
[図表2] FFレート(中間値)、米2年、10年国債利回りの推移
3.米銀は貸出に消極的にならざるを得ない
米銀行は大きな含み損を抱えており、今後は貸出が保守的になることが想定される
図表3は、米主要銀行の資産内容等の推移で、集まった預金がどのように運用されているかを見ています。ご覧のように、コロナ禍に預金等がじわじわと増加する中、金利が極端に低かった2020~2021年に、「満期保有債券等」へ大幅にふり向けていた(総資産に対する比率が6%程度から16%程度へ急増)ことがわかります。
この状況を平たく解説すると、「コロナ禍のカネ余りや低金利で運用先に困った銀行が「低利回り債券を満期保有する」という戦略をとった」と考えられます。『満期保有債券』とは、満期償還まで保有する条件で簿価評価できる債券です。
2020~2021年に購入した債券はその後の金利上昇で含み損を抱えることになりますが、簿価評価できるため銀行財務に大きな影響は出ません。しかし、預金が流出し、これらを売却しなければならなくなると時価評価を迫られ、銀行財務に多大な悪影響をもたらします。3月に破綻した米地方銀行はこの悪影響にさらされて破綻しました。
大手銀行がこの状況であり、当社調査によれば米銀全体でも同様の傾向が見られるため、米銀全体でも大きな含み損を抱えていることが想定されます。その大きな含み損がある限り、今後の銀行経営は保守的にならざるを得ず、貸出抑制を通じて米景気を冷やす可能性はかなり高くなったと見ています。
米景気減速はインフレ抑制につながり、米利上げの抑制、あるいは、将来的な利下げ期待が持てます。米国債の投資魅力がますます高まりそうです。
[図表3] 米主要銀行の総預金、満期保有債券、総資産等の推移
<関連銘柄>
NEXT FUNDS ブルームバーグ米国国債(7-10年)インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信(証券コード:2647)
NEXT FUNDS ブルームバーグ米国国債(7-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信(証券コード:2648)
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