3月のビットコインイベント

NEW! 3月8日 シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表
NEW! 3月12日 シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ
NEW! 3月22日 SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴
NEW! 3月22日 コインベース、SECから訴追予告受け取る
NEW! 3月27日 CFTC、Binanceを提訴

*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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3月の振り返り

3月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

金融危機でも上昇

 BTC(ビットコイン)は、2021年11月のテーパリング、すなわち金融緩和の見直し開始を機に下落トレンドに入ったが、昨年12月に昨年4回続いた75bpの異例の利上げ幅が50bpへ引き下げられると下げ止まった。

 今年2月にさらに25bpに引き下げられるとBTCは2万5,000ドルまで上昇した。しかし、2月の雇用統計やCPI(消費者物価指数)が軒並み強い内容だったことで3月FOMC(米連邦公開市場委員会)では再び利上げ幅を50bpに拡大するとの思惑がBTCの上値を抑え、2万3,000ドル近辺で3月を迎えた。

 年初から株価の不振にあえいでいた暗号資産業界にドル決済サービスを提供していたシルバーゲート銀行の持ち株会社が、事業の継続に疑義が生じた際に条件を明示するゴーイングコンサーンの精査のために決算発表を延期すると、同社株が急落、BTCは2万2,000ドル近辺に値を下げた。

 結局、現地時間の8日、同社はシルバーゲート銀行の清算を発表したが、続く9日にシリコンバレー銀行(SVB)で取り付け騒ぎが発生、翌10日に公的管理に入った。にわかに巻き起こった金融不安によるリスクオフで、BTCは一時2万ドルを割り込んだ。

 ステーブルコインUSDCの準備金の一部がSVBにあることで預金の行方が懸念されたが、同行の預金が全額保護されることとなり、バイデン大統領も銀行は安全だと明言したことでBTCは2万4,000ドル台まで急伸した。

 このとき、シルバーゲート銀行と並び暗号資産業界にドル決済サービスを提供していたシグニチャー銀行の閉鎖も発表された。暗号資産業界には大きな痛手となったが、無難な内容だったCPIを受け2万5,000ドルを上抜けると、年初来高値を更新し2万6,000ドル台を付けた。

 しかし、クレディ・スイス(CS)の株価が急落、信用不安が欧州に飛び火、また米国でもファーストリパブリック銀行(FRC)など銀行株の下落が続き、金融不安の余波が続いた。するとスイス中央銀行(SNB)が同行の資金繰りを支援、さらにUBSによる買収も決まり、またFRCにもJPモルガンなど大手11行が救済する方向となり、BTCは上伸。

 FOMCで予想通り25bp利上げとなったが、いわゆるドットチャートが前回と変わらず、あと1回の利上げしか見込んでいなかったことを好感、2万9,000ドルにあと100ドル足らずまで上昇した。

 CFTCが米国内にてBinanceを無登録で暗号資産デリバティブ営業をしたとして提訴するとBTCはいったん値を下げたが、CFTCのベーナム委員長がETH(イーサリアム)は商品だと上院公聴会で見解を示し、ステーキングは証券契約だとして米国内の交換所に圧力をかけるSECと異なる警告を示したこともありBTCは反発、一時2万9,000ドル台半ばまで値を上げた。

金融危機でも上昇した理由

 前回3月はアノマリー的に弱く「FOMCでの利上げ幅次第で、25bpなら横ばい、50bpなら下がりそうだが、下値のメドは2万1,000ドル台といったところ」と申し上げた。実際には利上げは25bpとなったが、2万ドルで下げ止まり、そこから大きく上昇した。

 何があったのか? それはもちろん、金融不安だが、基本的に金融不安による株安はBTCの売り材料となる。今回は米欧当局の素早い対応により、おおむね収束に向かっており、下がった分を取り戻すならわかるが、年初来高値を更新、3万ドルをうかがう勢いだ。なぜリスクオフによりBTCが売られてもおかしくない金融不安で買われたのか?

ドットチャートで2023年末FF予想(中間値)とFF金利との乖離(かいり)

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

利上げ停止観測

 理由は金融危機の影響でFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げをできなくなるとの見通しが強まったことだ。実際、FRBもドットチャートで2023年末の政策金利予想の中間値を据え置いており、あと1回の利上げしか想定していない。

 これは金融引き締めサイクルが5月で終了する可能性を示唆しており、2021年11月から続くBTCの下降トレンドが終焉(しゅうえん)を迎えた可能性を高める。これがBTC相場の下支えとなっていることは先月申し上げたが、それが確信に近づいた格好だ。

2023年末FF先物金利とBTC/USD

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

利下げ期待

 この件に関して、一つ注意すべきポイントは、市場はFRBの言うことを信じなくなっていることだ。FOMC後の記者会見でパウエル議長は年内利下げを想定していないと明言、BTCはいったん売られた。

 しかし今年末のFF先物金利は一時4%を割り込みFRBの想定(5.1%)より1%以上低かった。すなわち、市場はこの金融危機によりFRBは利下げに踏み切らざるを得ないと見ているのだろう。

 なお、金融危機の影響とFRBが利下げに踏み切らざるを得なくなる可能性については別稿で詳しく解説するが、要は景気が悪くなることに加え、金融システムを守るために、FRBは近いうちに利下げすると予想して、BTCは買われている。

米当局の締め付け

 もう一つBTC相場を占う上でSECなど規制動向にも注意が必要だ。SECは無登録での証券販売でTRONの創始者ジャスティン・サン氏らを訴追、ステーキングを証券契約とみなしコインベースに訴追予告を出した。ステーブルコインBinance USDの発行を停止させたことも記憶に新しい。

 またNY州司法当局はセイシェルに本社を置くグローバルな交換所KuCoinを無登録での暗号資産販売で提訴、CFTCはグローバルな交換所最大手で本社の所在地を公表していないBinanceを無登録での暗号資産デリバティブ営業などで提訴している。

 FTXの破綻を受けて、暗号資産業界、特にカリブ海などに本社を置くことで各国の規制を受けないまま海外から暗号資産サービスを提供するいわゆるグローバルな交換所に対する締め付けが厳しくなっている。5月のG7(主要7カ国)サミットの首脳宣言にも暗号資産業界規制が盛り込まれる方向と報道された。

 Binanceによる米国内での無登録証券販売で損害を受けたとして10億ドルの集団訴訟も提起されている。規制の整備は機関投資家の参入を促すので長い目で見ればプラスと考えるが、足元では市場の混乱を招きかねない。

BTC・ETH・XRPの価格推移

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

ETHとXRP

 特にETHについては上海アップデートが4月13日ごろに予定されている。これは昨年9月のマージにより始まったステーキングでロックアップされたETHの引き出しが可能となるもので、売り圧力になるのではないかと懸念されている。

 またETHそのものが米国内で証券とみなされてしまい、全米の交換所での取り扱いが廃止された場合の影響も懸念される。そうなれば米国のETH保有者からBTCや法定通貨に換える動きが殺到しかねず、今後の行方が懸念される。

 一方でXRPは大きく上昇した。SECとの裁判が早晩結審するとの観測が浮上、XRPは証券に該当しないとの結果が出るとの期待感からじりじりと上昇している。

4月見通し

材料面から見た4月見通し

 ちなみに足元のFF金利先物の織り込みでは5月FOMCで利上げするか否かはほぼ五分五分だ。それは4月に入ってからの金融不安の行方や経済指標による部分が大きい。ところがFOMCの結果発表が5月4日(木・祝)と5月の雇用統計やCPIの前に発表される。

 すなわち、4月12日にCPIが発表されて以降、金融不安や景気動向を見ながら利上げの有無が議論される。この様に4月のBTC相場は変動要因が多い。

 ただし、SECがコインベースに訴追予告を出しても、CFTCがBinanceを提訴しても、BTCの下げは限定的だった。というかむしろ、そうした悪材料で売られたところには押し目買いが入るせいか、悪材料が出るたびに年初来高値を更新する展開が続いている。

 すなわち、米当局による暗号資産業界への締め付けと、金融政策の転換による上昇相場への転換との比較でいえば後者の影響の方が大きいといえそうで、押し目買い意欲から底堅く推移しそうだ。

テクニカル面から見た4月見通し

BTC/USD一目均衡表

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 テクニカル的にも4月のBTC相場は底堅そうだ。一目均衡表では3役好転の買いサインが出ており、小さな上昇フラッグを少し上に突き出た格好で、上昇トレンドの継続を示唆している。

BTC月別パフォーマンス

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 アノマリー的には、足元で3カ月連続で陽線が続いている。3カ月連続陽線が続いた過去11回のうち8回が4カ月目も陽線となっている。また1年で最もパフォーマンスが悪い3月の反動で4月のパフォーマンスは8勝4敗とまずまずだ。このまま4月も陽線引けとなる可能性が高そうだ。

4月見通し

 まとめると、4月のBTC相場は利上げ動向や規制動向など変動要因が多く難しいが、下がったところはサポートされ、4カ月連続で上昇となる可能性が高いと考える。

 2023年は年後半に利下げが意識され始めて400万円に到達する予想をしていたが、今回の金融危機でそれが前倒しになる可能性が出てきた。

 2019年のようなパターンで、マーケットはさらにオーバーシュートして、年後半に反落、結局400万円で落ち着くパターンになるかもしれない。

2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

2月25日 G20議長総括、暗号資産にFSB・IMFの報告書に期待
2月23日 ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性
2月13日 パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止
2月9日 クラーケン、ステーキング停止
1月19日 ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請
1月17日 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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